感染速く死亡率も…国内変異株拡大の可能性
新型コロナウイルスの感染拡大にともない首都圏に出されている緊急事態宣言について、3日、菅総理が2週間程度の延長の方針を示しました。その背景と、感染スピードが速く死亡率が高い可能性が指摘される変異ウイルスの広がりについて詳しく解説します。
■病床依然ひっ迫「絶対リバウンドさせない」宣言延長へ
4日、東京では新たに279人の感染が確認されました。重症者は51人です。1週間前と比べると、両方とも数字は減ってきています。しかし、油断はできません。3日夕方、菅総理が、現在、首都圏に出されている緊急事態宣言について「2週間程度の延長が必要」と表明。5日の諮問委員会で専門家の意見を聞いた上で、正式に決定します。
今、出されている緊急事態宣言は、小池知事らの要請を受けた後に発出されたことで、「政府の対応は後手後手だ」と批判を受けました。この二の舞いにならないよう、知事らが延長を政府に要請する前に、方針だけでも表明したということのようです。
しかし、この対応には自民党内からも「小池知事に先を越されて後手後手だと言われたくないのが見透かされている」などと疑問の声が上がっています。
また、延長幅を2週間程度とした菅総理の説明に対し、与野党からは「根拠もなく2週間延長と言われても、納得できない」などと説明を求める声が上がりました。菅総理は延長の理由として、病床がひっ迫していることと新規陽性者数が下がりきっていないことを挙げていました。
宣言解除の目安の1つは『ステージ3(感染者の急増)』になることですが、2日時点の指標をみてみると、まず、最も深刻な警戒レベルである『ステージ4(爆発的な感染拡大)』相当は、もうありません。
直近1週間の人口10万人あたりの新規陽性者数をみると、『ステージ3』の15人を下回ってはいますが、東京が13人、千葉が14人と、ギリギリの数字です。
全体の病床使用率は1都3県全てで『ステージ3』。特に千葉の病床使用率が緊急事態宣言延長の判断の決め手となったようで、病床全体では、小数点以下を四捨五入すれば50%と、ほぼ『ステージ4』の最も深刻な警戒レベルとなっています。
つまり、首都圏の今の状況はステージ3にはなっているものの、「絶対にリバウンドさせないため」に延長の判断をしたということなのです。
■国内で「変異ウイルス」拡大の可能性
期限を延長すること自体については専門家も賛成していますが、解除の目安については異議も出ています。3日、日本医師会の中川俊男会長は、「『ステージ2』レベルまで抑え込まなくてはならない」「徹底的に感染者を抑え込んだ上で解除しなければ、4月以降に『第4波』を招く恐れがある」と指摘しています。
また厚生労働省の専門家の会議では、「緊急事態宣言下でも『変異ウイルス』感染者の増加傾向がみられ、今後、『変異ウイルス』への対策が必要」としています。さらに今後、今、国内で主流になっているウイルスに置き換わって、変異ウイルスが拡大する可能性を指摘しました。会議で示された国立感染症研究所のデータによると、先月25日までに国内で変異ウイルスへの感染が確認されたのは145例。このうちの93%は『渡航歴なし』でした。
また、変異ウイルスは、いわゆるイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型があるが、一番多かったのはイギリス型で、報告された変異ウイルス全体の96%にのぼります。
感染者を年齢別で見てみると次の通りです。
10歳未満・・21%
10代・・・・6%
20代・・・・11%
30代・・・・19%
40代・・・・17%
『10歳未満』が一番多くなるなど、若い世代に感染者が多い傾向がみられます。国立感染症研究所の脇田隆字所長によると、「従来のウイルスに比べて子供や若い人の感染が多いように見えるが、まだ感染した人が少ないので、今はそのような性質にあると断定できない」ということで、今後も分析が必要だとしました。
■変異ウイルス欧州で急拡大 感染した仏の若者…半数超が変異株
この変異ウイルスは、ヨーロッパを中心に急速に拡がっています。世界の1日あたりの感染者数は、外出規制やワクチンなどの影響で1月中旬以降は減少傾向にありましたが、それが先週、7週間ぶりに増加に転じました。その大きな理由として挙げられているのが、「変異ウイルスの拡大」です。例えば、フランスでは全国平均で新規感染者のうち、49.3%が変異ウイルスとなっています。
■感染速く死亡率高い可能性 変異ウイルスの特徴
なぜ、変異ウイルスがこれほど恐れられているのでしょうか。まず、イギリス型の変異ウイルスは、従来のウイルスよりも最大『70%感染が広がりやすく、感染拡大のスピードが速い。さらに、死亡率も3~4割高い可能性があるといいます。
もう一つ注目すべきは、子供への感染率です。フランスでは感染者のうち、変異ウイルスが占める割合が、0~9歳で57.3%、10~19歳で52.7%と、子供や若者の感染者のうち半数以上が、変異ウイルスによるものとなっています。従来のウイルスと違って子供にも感染しやすいとなると、学校での対策などにも大きく影響してきます。
ただ、このイギリス型の変異ウイルスについてワクチンが効かないという報告はないので、ワクチンの普及以上のスピードで変異ウイルスが拡大しないよう、しっかり抑え込む必要があります。
緊急事態宣言の延長について菅総理は5日、正式に発表する予定です。何を判断基準に、どういう理由で決めたのか、科学的なデータと根拠をしっかり示して、みんなが納得できる説明をしてほしいと思います。
(2021年3月4日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)