空から見た震災被災地 町の復興は… 岩手
東日本大震災からまもなく10年。町はどのように復興しているのでしょうか。空から見た被災地のいまをテレビ岩手が取材しました。
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――国の復興創生期間は今年度で終了します。県内の施設や住宅など、ハード面の整備も完了しているところがほとんどです。東日本大震災から10年。県内の被災地のいまの姿を空から見ていきます。
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■陸前高田市
・陸前高田市役所
まもなく工事が終わろうという陸前高田市役所の新庁舎。震災の津波で、かつての中心部にあった庁舎は全壊。被災直後は高台にある給食センターで、その後は仮設の庁舎で、長く復興業務にあたってきました。
前の庁舎を失ってから10年。高田小学校の跡地に、ようやく新しい本庁舎が出来上がります。
・高田松原
「奇跡の一本松」を残して流失した高田松原の松を再生させようという活動が、4年前から続けられています。
しかし、去年いっぱいで合計4万本の松の植樹が終わる予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で植樹祭が中止となり、まだ植樹は終わっていません。今年には植樹を再開し、50年後には立派な松になるということです。
松の木の横に広がる砂浜は今年の夏に、震災後初めて海水浴場として再開するそうです。
・旧陸前高田市立気仙中学校
旧陸前高田市立気仙中学校。海までの距離はおよそ400メートル。校舎のすぐ横を流れるのは気仙川です。
10年前の津波で3階建ての校舎は全壊しましたが、当時、卒業式の練習をしていた生徒は全員高台に避難し助かりました。
震災遺構として保存するための工事がまもなく終わり、この春に内部が一般公開される予定です。
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陸前高田は10年前の津波で、市役所も、学校も、病院も、そして家もたくさん流されて、県内では最も多くの犠牲者を出しました。
がれきだらけだった当時と比べると、街の中心部は本当に目覚ましく変わりました。しかしながら、まだ空き地も目立ちます。
高田松原運動公園や、今年できた市民会館などと合わせて、この地にどれだけ人を呼び込めるかが、将来の復興のカギを握っています。
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■釜石市
・釜石鵜住居復興スタジアム
釜石鵜住居復興スタジアムは去年6月、イギリスの人気ラグビー専門誌の中で「世界最高のラグビースタジアムトップ20」に選ばれました。いまも芝が美しく整えられています。
年間の維持費用は4000万円。おととしのワールドカップで中止となったナミビア・カナダ戦も新型コロナの影響で去年、中止となりました。
市の財政を圧迫しないように、そして、長く市民に愛されるように、どう利活用していくかが課題です。
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■大槌町
・赤浜地区
釜石市の遊覧船「はまゆり」が建物の上に乗りあげていた民宿が、赤浜地区にありました。当初は町が条例を制定して、建物を震災遺構として保存する計画でした。
遊覧船の復元や建物の保存にかかる費用は4億円以上。寄付金は必要額に遠く及ばず、建物の取り壊しが決まり、解体工事がまもなく終わろうとしています。
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大槌町は、旧役場庁舎など、被災当時の姿を残す建物が次々と姿を消しました。地元住民の意向も反映しての措置ですが、今後、被災の記憶をどうやって伝えていくのでしょうか。
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■山田町
・三陸鉄道 岩手船越駅付近
津波で多くの区間が寸断された三陸鉄道は、南北リアス線とJR山田線の沿岸の路線がつながって「三陸鉄道リアス線」として、おととし3月に開通しました。
しかし、わずか7か月後の10月、台風19号による土砂災害で再び、この岩手船越駅周辺も大きな被害を受け、区間運休。
去年3月に「再復活」を果たしたものの、今度は新型コロナによる観光客の大幅な減少などで、今年度は開業以来、最大の赤字が見込まれています。
・オランダ島
江戸時代、オランダの船が漂着したことから名づけられたオランダ島。震災で海水浴場が被災しましたが、去年、10年ぶりに再開しました。
島の周辺の海水は美しいエメラルド。町の貴重なレジャースポットです。これから再び、山田の夏を賑わせてほしいと思います。
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■宮古市
・浄土ヶ浜
浄土ヶ浜周辺の海を巡る浄土ヶ浜遊覧船は、震災の津波を生き抜いた遊覧船でした。しかし、赤字運航などが原因で今年1月、58年の運航の歴史に幕を下ろしました。
一方、宮古市は新たな遊覧船を建造して、来年5月から民間に運航させる方針を示していますが、船を使った観光で、これまでにはない宮古市の魅力をどうやって示せるかが問われそうです。
・新田老駅
三陸鉄道の駅の中で最も新しい駅、新田老駅。去年、開業しました。
・三陸沿岸道路
三陸沿岸道路。まだ工事中の区間は残るは4区間、およそ37キロ分が今年中に完成する予定です。完成すれば、青森県八戸市から宮城県仙台市までの359キロが、一本の道路でつながることになります。
・宮古盛岡横断道
そして、宮古市と盛岡市を結ぶ宮古盛岡横断道路も、総延長66キロの区間が今月中に完成します。完成すれば、宮古市から矢巾町の岩手医科大学付属病院までの所要時間は、これまでより30分短縮すると試算されています。
迅速な医療の提供、そして内陸部と被災地の間の円滑な物流が期待されています。