生徒35人に密着 異色映画「14歳の栞」
実在する中学生35人の日常に密着した、異色のドキュメンタリー映画「14歳の栞」。ありのままの14歳にレンズを向け、主人公もドラマチックな展開もありませんが、話題を呼んでいます。鑑賞者には、あるプリントの手渡しも。制作者の思いに迫りました。
■これまでにない「手法」話題に
「気をつけ、礼」
ジャージー姿の中学生が一斉に立ち上がり、あいさつをするシーン。どこにでもある教室の光景です。
公開中の映画「14歳の栞」は、実在する中学校の2年6組、3学期を舞台に、生徒の学校生活や日常に密着したドキュメンタリーです。初めは1館のみの上映でしたが、全国36都市に拡大するなど、話題となっています。
その理由は、これまでにない手法で描かれていること。ポスターには、「35人、全員密着」とあります。映画の中で、生徒たちの何気ない言葉が飛び交います。
「いけないことも知ってるので。もう大人だと思う」
「裏切り」「裏切ってない」
「バレンタイン渡したもんね?」「あれは友チョコだよ」
生徒35人全員を1人ずつ実名で取り上げ、性格や友達との関係性、将来の夢や恋模様など、ありのままの14歳を映し出しています。そこには劇的に活躍する主人公もいなければ、ドラマチックな展開もありません。
■制作者「どんな人にも物語が」
河出奈都美アナウンサー
「落合さんはご覧になっていかがでしたか?」
落合陽一(筑波大学准教授/メディアアーティスト・「news zero」パートナー)
「映像制作者に(とって)は、どうやって撮ったのか分からない映像が、すごくたくさんありました。つまり、あまりに子どもの表情が自然で、あまりに(自然に)日常が切り取れているというのは、すごいことです。この映画(から)は、『日常は十分エキサイティングで、しっかり注視して信頼関係を構築すれば、創作を超える映像をつくれる』、ということを感じました」
なぜこのような作品をつくったのか、制作者に聞きました。
企画・プロデュースの栗林和明さん(33)
「誰もが当時、『話したことがない人』っていたな、と。あの時、そういう子たちって何を考えていたんだろう。どんな人にも物語があって、その上で今自分がいるんだというところを、感覚として味わってもらいたいなと(思いました)」
■実名だからこその「呼びかけ」
この作品は、鑑賞した人にある呼びかけをしています。映画館で手渡される、「14歳の栞便り」というプリント。そこには「この映画に登場する生徒たちは、これからもそれぞれの人生を歩んでいきます。SNS等を通じての、誹謗中傷を発言することはご遠慮ください」といった“お願い”が書かれています。
1人1人フォーカスされた生徒たちは、全員実名であり、今も生活を続けていることから、上映後も個人を守る配慮をしていました。
監督の竹林亮さん(36)
「この言葉が入っているおかげで、緊張感みたいなものが生まれているのかなと。自分の顔も名前も出さずに、自分の日記に書いているようなことを相手にぶつけられるようになった時代で、どんなに自分とは関係がない人であれ、その人はずっとこの先、生きているんだよ、というのを分かってもらいたいなっていうのはありましたね」
(4月20日『news zero』より)