×

【解説】業界反発…「休業要請」対象は?

2021年4月22日 20:37
【解説】業界反発…「休業要請」対象は?

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は23日に東京、京都、大阪、兵庫に緊急事態宣言の発出を正式に決定する方針です。これに伴う「休業要請」をめぐり、対象となる業種や期間について国や自治体の間で調整が続いています。

■東京・大阪など4都府県に“宣言”発出決定へ
 
政府は23日に、4月25日から5月11日の期間で、東京、京都、大阪、兵庫に対して緊急事態宣言の発出を正式に決定する方針です。焦点となっているのは「休業要請」の対象です。

■「休業要請」対象は?
 
休業を要請する対象については、対象を『幅広く』したい自治体と『絞り込み』たい政府との間で、調整が続いてます。

 
東京都の場合は、ゴールデンウイークを見据えて、カラオケ店などの遊興施設、生活必需品を除く大型商業施設などへの休業要請を検討。

大阪府は、大型商業施設や百貨店、遊興施設、映画館、テーマパークに対して休業要請をしたいとしています。飲食店については、『休業』か『休業と時短との組み合わせ』か、『酒の提供をやめて時短』か、3つの案で検討。プロ野球などのスポーツイベントは、原則として『中止・延期』すべきといった考えを示しています。

政府は、これまで慎重な姿勢を崩さなかった『百貨店やテーマパーク』などについても、休業要請の対象とする方向で調整しています。
また、酒類またはカラオケ設備を提供する飲食店に対して、休業要請を行う方向で最終調整しています。

そして、商業施設など多数の人が利用する施設では、床面積が1000平方メートルをこえる施設についても休業を要請し、イベントについては、原則として無観客での開催を求める方向です。

■業界団体は反発
 
しかし、名前があがった業界団体からの反発は強くなっています。日本百貨店協会は、政府と大阪府、東京都に対し、宣言が出されても休業要請をしないよう要望書を提出しました。高いレベルの感染対策を行っていて、店内での感染拡大はしていないことなどを理由としてあげています。政府は、こうした反発や経済への影響も考慮し、休業要請を土日だけに絞る案なども検討しているということです。

さらに、映画業界では、映画監督や配給会社などで組織する団体が、政府に対し適切な支援を求める要望書を提出しました。規模の小さいミニシアターは、シネコンのように館内で軽食や飲み物の販売をしていないため、飲食店としての協力金ももらえていない状態が続いていて、今後さらに休業要請が出されると、経営に死活的な影響が出ると訴えています。

■休業か時短か…政府内でも意見分かれる
 
宣言の中身を決めるうえで、ほかにも難しい問題があります。飲食店に対して、休業要請まで踏み込むのか、時短要請にとどめるのかという問題です。政府内でも意見が分かれているとみられていますが、ただ、自治体からの要望がばらばらでも、政府は一律の対応にしたい考えです。

政府は、酒類またはカラオケ設備を提供する飲食店に対して、休業要請を行う方向で最終調整しています。

そして、商業施設など多数の人が利用する施設では、床面積が1000平方メートルをこえる施設についても休業を要請し、イベントについては、原則として無観客での開催を求める方向です。

また、現時点で首都圏で要請しているのは東京都だけであることから、テーマパークに休業要請が出された場合、東京都の施設は休園となりますが、隣の千葉県では営業しているということになりかねず、線引きの難しさがあります。

■休業要請の効果は…政府に提出された試算
 
では、緊急事態宣言によって出される可能性のある「休業要請」が実際にどれほどの効果があるのか、東京財団政策研究所の千葉安佐子さんが政府に提出したシミュレーションをもとに見ていきます。

前提条件は、(1)変異ウイルスが従来の1.7倍の感染力で拡大していて、(2)ワクチン接種が今より数倍早いペースで進んでおり、(3)働いている人のおよそ2割が在宅勤務をしていると仮定した場合の大阪のケースです。

まず、一日の感染者数1500人を起点に推計すると、今と同じ午後8時までの時短要請で、人の流れが50%ほど減った場合、感染者数は2000人台でほぼ横ばいという推計で、感染の抑制にはならないという結果になりました。

次に、飲食店などに休業要請を出すなどして人の流れが90%ほど減ったと仮定して推計した場合、新規感染者は1か月で1000人を下回り、2か月で150人程度にまで減らすことができるとしました。ただ、休業要請を1か月ほどで解除すると、あっという間に再拡大してしまうとの試算もあります。

     ◇

休業要請は痛みを伴いますし、コストもかかるので、長ければ長いほどいいというものではありませんが、こうしたデータも参考にしながら、適切なバランスを見極めていく必要がありそうです。

大切なことは、その対策によって実際にどのような効果が見込めるのか、その根拠をしっかりと示した上で、どうなれば解除するのかという明確な出口戦略も合わせて示すことだと思います。

宣言の効果が出るかどうかは、多くの人が納得できる分かりやすいメッセージを発信できるかどうかにかかっていると言えそうです。

(2021年4月22日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)
※22日20時半時点の情報を一部加筆しています。