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防護服の母“戦闘モード”発熱外来での覚悟

2021年4月29日 22:50
防護服の母“戦闘モード”発熱外来での覚悟

新型コロナウイルスは、医療従事者の方々の生活も一変させました。感染リスクを背負いながら小学生の子どもを育てる看護師。この1年間、恐怖心とある覚悟を持って、現場に立ち続けていました


■防護服を着たら「戦闘モード」しかしある思いも…

鈴木さん「防護服を着たら自分はコロナと戦う。コロナに打ち勝つために戦闘モードでいきます」

看護師として最前線で働く鈴木由香利さん(37)は、感染者が急増する今、レッドゾーンで日々、感染が疑われる患者と向き合っています。

感染リスクと隣り合わせの発熱外来。覚悟を持って現場に立ち続けながら、ある思いが…。

鈴木さん「私が看護師だということで、子どもたちにはすごくかわいそうな思いをさせた」


■子どもと食卓に座らず「さみしい」

この1年、母親として下した“苦渋の決断”がありました。

4月25日(日)、小学生の2人の子どもと自宅で過ごす休日。しかし、家の中でマスクはつけたまま。食事の前には、必ず消毒。一家団らんの時、鈴木さんが子どもたちと食卓に座ることはありません。

鈴木さん「自分が子どもたちに感染させてしまうリスクが高いので」

患者から感染すれば子どもたちにうつすかもしれない。この1年、ほとんど一緒にご飯を食べていないといいます。

鈴木さん「最初の頃は『さみしい』とか『一緒に何で食べないの』とか質問が多かったですけど、今はコロナがうつったら危ないと理由がわかってくれたので。これが私の家の日常」

娘の咲百合ちゃん(7)は―「一緒に食べられないのがさみしい」


■もし自分が先立ってしまったら…家に帰れない「恐怖」

鈴木さん親子の日常を一変させた新型コロナウイルス。看護師12年目の鈴木さんは、埼玉県志木市の病院で、普段は一般外来の看護師として働いています。そして、この病院に1年前、新設されたのが発熱外来です。

これまで経験がなかった防護服やフェースシールドを身にまとい、対面で問診を行い、医師によるPCR検査のサポートなども行います。発熱外来に来る患者は今月に入り増加。陽性率もあがっています。

 鈴木さん「会食どういうところで?」
 陽性患者「バーベキュー場」

 鈴木さん「何人ぐらいで?」
 陽性患者「6人」

30代の男性は、この日のPCR検査で陽性が判明した1人。

 医師「バーベキューはどこで?」
 陽性患者「富士山」

 鈴木さん「車で移動してます?」
 陽性患者「車で移動してます」

 鈴木さん「1台で6人全員乗ってた?」
 陽性患者「はい」

感染リスクと隣り合わせの現場には、「怖さ」があると話します。

鈴木さん「今でも怖いですね。この1年たっても陽性者と接触するのは怖くて。前みたいに家に帰れないとかじゃないですけど」

恐怖のあまり「家に帰れない」。その出来事は去年4月、初めての陽性者の検査に立ち会った時でした。

鈴木さん「患者さんが目の前で青ざめていく。『大丈夫ですか』って離れなかったんですよ、自分が」

その日、子どもが待つ自宅へ帰る途中、ふと、よぎったのが…。

鈴木さん「車の中で自分もコロナに感染したかもと、何も考えられなかったです1時間。死ぬかもしれない。子どもたちを置いて、自分が先立ってしまうかもしれない恐怖」

自分が「子どもたちに感染させるかもしれない」。この日をきっかけに鈴木さんは、子どもたちと「なるべく接しない」ようにすることを決意しました。一緒に食事はせず寝室も別々です。


■「遊んでくれない」仕事に後ろめたさも

甘えることのできない子どもたちは。

咲百合ちゃん(7)「(Qお母さんは好き?)つまんない、だって一緒に遊んでくれないから」

健斗くん(8)「ほとんど遊んでくれてない」

家の中で、メールや手紙でやりとりすることも増やしました。看護師という仕事に後ろめたさを感じた時も。

鈴木さん「子どもたちなりに理解してくれる日が来るんじゃないか」


■子どもたちからの手紙“支え”に

そんな鈴木さんに去年の秋、忘れられない出来事が出勤前にありました。

健斗くんの手紙「びょういん、たいへんだけど、コロナにまけず、がんばってね」

咲百合ちゃんの手紙「ままがつかれているのをしってるよ。たくさんの人をすくってね。まま大すきだよ」

2人からもらった手紙が、“支え”になりました。お母さんが「大好き」という咲百合ちゃん。

咲百合ちゃん(7)「(Q将来の夢は?)お医者さん。人を助けるみたいなことをしたい」


■ついにワクチン接種、当たり前の生活はいつ…

23日、鈴木さんにとっては待ちに待った日がきました。医療従事者への先行接種が始まってから2か月。ようやくワクチンを受けることになったのです。しかし、接種を受けたからといって、感染リスクがゼロになることはありません。

鈴木さん「ワクチンを打ったからといって、生活は一切変わらない」

感染の恐怖と向き合い1年。収束のその日まで、今願うのは。

鈴木さん「当たり前の今まであった生活。みんなでお買い物行ったりとか、ご飯食べに行ったりとか、当たり前にできることを当たり前のようにしていきたい」

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