「サイが来ない」 動物園にもコロナの影響
子どもたちの“学びの場”ともなる動物園で、人気の動物が不在となっています。背景にあるのは、新型コロナウイルスの長期化です。動物園で何が起きているのでしょうか。
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休園が続く東京・上野動物園。その近くには、パンダのぬいぐるみを大事そうに抱えた小さな子どもがいました。その、上野動物園は25日、インターネットで「シャンシャン」の最新の映像を公開しました。
新型コロナウイルスの影響で、今は直接会いに行くことが難しい動物たち。依頼が増えているというのが――
ティジョップズー・赤羽智子園長代理
「うちの動物園では“移動動物園”をやっています」
動物が出張してくれる“移動型の動物園”です。ウサギや小さなヒヨコなどの動物だけではなく、トカゲなど「は虫類」も。直接動物にふれることで“命の温かさ”を感じることができます。
ティジョップズー・赤羽園長代理
「小さい動物の鼓動だったり、同じ“生きているんだよ”ということを感じていただけたらなと思います」
2メートルごとにシールを貼るなど“密対策”を実施。遠足が中止になった小学校などからの依頼が増えているということです。
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埼玉県にある動物園でも、感染対策の制限をもうけながら、動物と触れ合う機会を大事にしているといいます。しかし、今、新型コロナで“ある”影響が…。いるはずのサイがどこにも見当たりません。
東武動物公園・下康浩飼育課長
「台湾からサイを入れることになっていたんですけど、(予定が)延びている」
今年4月、繁殖のため、5歳のメスのサイを受け入れるはずが、渡航制限などで延期に。来月上旬に受け入れることが決まりましたが、台湾で感染が急拡大しているため、直前までサイが来るかわからない状況だといいます。さらに、こんな懸念も…。
東武動物公園・下飼育課長
「ある程度若い6歳から8歳で、一度出産を経験しておかないと、そのあとの繁殖の率が非常に低下してしまうと」
延期が長引いた場合、繁殖ができなくなるおそれもあるというのです。
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“動物園なのに動物が来ない”状況は、山口県にある動物園でも。悩むポーズで一躍人気ものに。当時、国内最高齢だったマレーグマの「ツヨシ」。去年、その命を全うしました。園は事前にマレーグマ受け入れのための調整を進めていましたが、新型コロナの影響で協議がストップしているというのです。
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緊急事態宣言下の、兵庫県神戸市にある動物園。先月、繁殖に乗り出したのが――
レッドリストの絶滅危惧II種に指定されているハシビロコウです。展示エリアには、雨を降らせる設備を導入するなど、生息地であるアフリカの湿地を再現しているといいます。入場者数が8割減少する中、あえて世界に数例しかない園内繁殖に乗り出したワケは。
神戸どうぶつ王国・佐藤哲也園長
「動物園は野生への扉であって、特に子どもたちが自然環境であったり、野生動物であったり、そういうことを学ぶための第一歩であると考えているので」
子どもたちの“学びの場”であり続けることが、動物園の使命と考えたのです。動物園を守り続ける人たちの思いは――
神戸どうぶつ王国・佐藤園長
「(動物園は)無駄なものではないと思っています。本物に勝るものはないので、もちろん感染状況を見ながら、ぜひ本物に会いに来ていただければと思っています」