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2021年5月28日 16:42

オンラインサロンで不採用人材も関係人口に

オンラインサロンで不採用人材も関係人口に
(c)NNN

外部のプロフェッショナル人材を積極的に受け入れる長野県塩尻市。仕事起点だけでなく、外部人材と継続的な関係を築くためのオンラインサロンを始めた。定期的なコミュニケーションを取る中で、地域の課題を解決する新たなプロジェクトも生まれているという。

■自治体が運営するオンラインサロン

地域の課題を解決するため、外部のプロフェッショナル人材を活用する地方自治体が増えている。最大3年間地域協力活動に従事する「地域おこし協力隊」や、複業人材を非常勤職員として受け入れる取り組みも生まれている。

長野県塩尻市でも外部人材を積極的に受け入れてきたが、2020年には新しい取り組みとして、地域に興味のある人と継続的な関係を保つためのオンラインサロン「塩尻CxOLab」をスタート。塩尻に興味がある人のほか、塩尻に関わる外部プロフェッショナル人材が集まっている。

参加者は何を求めているのか。オンラインサロン運営メンバーで、自身も複業で塩尻市に関わる濱本隆太さんは「挑戦の場を求めている人が多いのではないか」と話す。

「漠然と何かに挑戦したいと思っている人にとって、地域は良いフィールドになると思います。また、一緒に何かをやりたいと思える仲間が集まっていることもポイントです」

サロン1期には27人が参加。月2回のオンラインイベントや、週1回のライブ配信を行いながら関係性を深めた。移動に制限があるコロナ禍でも、オンラインで気軽に参加できる。地域企業と共同したプロジェクトも生まれた。

その一つが、塩尻ワインを盛り上げていくグループ。特産品である塩尻ワインのファンや販路を広げることを目的として、地元のワイナリーや観光スポットを巡る旅や、イベントの企画・運営を行う。

このプロジェクトを立ち上げた、サロンメンバーの中村千鶴さんは、塩尻出身で現在は東京で暮らしている。大手メーカーに勤めながら、以前より地元に関わりたいと考えていた。

2019年10月の台風19号で長野県が浸水した時にボランティアを申し込むも、定員オーバーで参加できなかった。それでも何かできないかと思い、塩尻市役所の山田崇さんにSNSでダイレクトメールを送ったところ、塩尻CxOLabを紹介されたという。

サロンでコミュニケーションをする中で、ワイン好きメンバーが集まり、プロジェクトにつながった。

■不採用人材と接点を持ち続ける

オンラインサロンの特徴は、具体的な仕事の募集がない時から、地域外の人と接点を持てることだ。サロンを担当する山田さんは「地域おこし協力隊を募集したときのミスマッチが、サロンのアイデアにつながった」と話す。

「2018年に地域おこし協力隊を募集したとき、1人の枠に、9人の応募があり、8人が不採用になりました。しかし、不採用になった8人が採用基準に満たしていなかったわけではありません。枠がひとつしかなかっただけです。そこで、採用を担当した職員が、不採用になった1人と連絡を取り、塩尻市で何をしたいか聞き、コミュニケーションを続けました。その結果、1年後に『地域中小企業の採用・経営革新』の人材募集があり、その人のやりたいことを実現するような募集だったので、地域おこし協力隊として採用することになりました」

2020年度、塩尻市ではいくつかの複業の募集に対して、200人ほどの応募があったという。しかし、実際に採用できたのは10人程度。興味を持ってくれた残りの190人との関係を持ち続けるための受け皿が、オンラインサロンである。

長期的な関わりをつくることは、山田さんが以前より課題に感じていたことでもある。

「塩尻市では、2016年から『MICHIKARA 地方創生協働リーダーシッププログラム』という、地域課題の解決と企業の人材育成を組み合わせた取り組みを行っています。1か月間、企業の人と地域の人が一緒に地域課題を特定して、その解決策を提案するというものです。熱量の高いコミュニティが生まれ、成果も出ていたのですが、1か月の期間が終わると、その後関わり続ける場を提供できていませんでした。また、企業にとっては人材育成プログラムなので、毎年違う人材が参加することになります。接点を持った個人と、長期的に関わり続ける場が必要と考えていました」

オンラインサロンの取り組みも、外部人材からの提案だったという、2020年1月、塩尻市ではプロフェッショナル人材を3か月間、複業・リモートで「特任CxO」として2名採用。そのうち1人から「山田さんの知り合いや、塩尻市のファンを可視化しましょう」という提案があり、山田さんの課題感とも結びつき実施に至った。

■地域課題の顕在化や地域人材育成につながる外との出会い

塩尻市では、2021年4月から3年間、10のプロジェクトを重点的に行う予定だ。プロフェッショナル人材の受け入れや、オンラインサロンによる長期的な関係づくりは、「地域ブランド・プロモーション」「地域課題を自ら解決できる『人』と『場』の基盤づくり」のプロジェクトに含まれるが、これらは他の8つのプロジェクトを包括した役割があるという。

「これからの地域づくりでは、外部のプロフェッショナル人材と一緒に共創することが重要です。外部の人が入ることで、課題の発見につながったり、課題解決のアイデアが共創されたりします。そういった人が、将来的には地域の担い手として移住や定住につながると考えています。ただ、外部の人に課題解決を任せっきりするわけではありません。外部の人が関わることで、地域の困りごとが顕在化されたり、地域人材の育成につながることが、最も大切です」

2021年、塩尻市では「関係人口創出コーディネーター」というポジションを作り、地域の人から課題を発掘したり、塩尻に興味がある人の話を聞き、地域の中と外をより積極的につないでいこうとしている。接点を持った人と、長期的な関係を築くことがこれからの課題だ。

「市が関わる複業の募集も増えていて、塩尻市に興味を持っていただいた方との接点は増えています。また、私が個人的にお世話になっている外部の人もたくさんいます。接点を持った人を、個人的な関係で終わらせず、塩尻市の継続的な関係人口にしていきたいです。この数年間で、外の関係人口だった人が地域の担い手になる事例は増えているので、こういった取り組みが将来の移住定住にもつながると考えています」

※写真は塩尻市にあるぶどう畑


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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。