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LGBTQどう支援?“アライ”の心構え

2021年5月31日 13:14
LGBTQどう支援?“アライ”の心構え

多様な性のあり方を認めあう価値観が社会に広がりつつある中で、当事者を積極的に支援する「アライ」に求められる心構えとは。社会から偏見をなくすため、「みんな何かのマイノリティー」という前提で、認識をアップデートしていくことが大切だ。

■「アライ」の語源は、「同盟、支援」

偏見と闘いながら生きるLGBTQ当事者にとって、その存在を積極的に認め、支援してくれる人がいるのは、心強いことだ。このLGBTQ支援者のことを「アライ」と呼ぶ。同盟や支援を意味する「ally」「アライアンス」から取られた言葉だという。

ただ、LGBTQ当事者から見ると、誰がアライなのか、わかりづらい面もあるという。自らもゲイであることを公表し、ライターとしてLGBTQについての発信をつづける松岡宗嗣さんは、こう話す。

「当事者からすると、どこにアライの人がいるか、見えないんです。誰がLGBTQのことをいいと思ってくれているか、わからないからこそ、何かシグナルを発してほしくて。ひとつは、自分について話すとき、なるべく性別に中立的な言葉に変えてみるのもいいと思いますね。あとは、普段の会話の中でLGBTQに関することをポジティブに話すだけでも、あの人だったら言ってもいいのかなと思えます」

クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんは、自らがアライとして何ができるか、考えつづけているそうだ。

「会社をやっているので、いろいろなシミュレーションをしています。もし社内のメンバーから、そういう相談をされたときに、誰がLGBTQかは言わずに社内研修をしたり、LGBTQにやさしい制度を作ったりできたらと考えているんです。一対一のコミュニケーションで伝える以外にも、仕事で使うツールの名前欄にレインボーフラッグをつけるなどして、自分がアライであることを表明することもできますね」(辻さん)


■「アウティング」(暴露)してしまうことのおそろしさ

自らがアライである場合、つい周囲の人たちも同じであるかのように感じてしまい、周りの人と「誰かがLGBTQ当事者であること」について話したくなってしまうかもしれない。しかし、LGBTQであるかどうかは、とてもデリケートな情報であり、その扱いには細心の注意をはらう必要がある。

「第三者に勝手に暴露してしまうことを『アウティング』といって、これはすごく危険だと思います。もちろん本人の同意があったり、私の場合のようにゲイであることをフルオープンにしている場合は、誰かに伝えるのは問題ないですが。勝手に暴露してはいけないというのは、すごく大事なポイントだと思います。重要なのは本人に確認をするということです」(松岡さん)

たとえよかれと思ってだとしても、LGBTQ当事者に断りなくその情報を漏らすのは、決してやってはいけないこと。アウティングが起きると、思わぬ影響が出ることもあるそうだ。

「職場の中に一人でも『えっ!』という反応してくる人がいたら、その瞬間に働きづらくなってしまうんですね。明日からどう接するべきかわからないし、場合によってはひどいことを言われるかもしれない。最悪の場合、人事情報として扱われてしまい、良く思わない人がいたら、もしかしたらクビになってしまうかも、という不安も生まれます」(松岡さん)


■考え方をアップデートすることで、寛容になれる

ではLGBTQの支援者として、当事者とコミュニケーションをとる際は、何に気をつければいいのだろうか。アライであるがゆえに、相手を不快にさせない言葉を探して悩んでしまいそうだ。

「まったく相手を傷つけないことなど、ないのだと思います。会話の中で、間違って相手にとって嫌なことを聞いてしまうかもしれませんが、それを嫌だと言える関係性が素敵だと思います」(松岡さん)

あくまで大切なのは、ひとり対ひとりの人間として、心から信頼できる関係性を築けているかどうか。そして、そもそもLGBTQだけが特別な存在ではないのだ、という意見も。広告代理店に勤め、在職中にトランスジェンダーであることをカミングアウトした岡部鈴さんは言う。

「私が今の生活をするようになって、つくづく感じるのは、みんな何かのマイノリティーなのかな、ということ。たまたま切り口がLGBTQというセクシャリティーの問題だったから、今は自分がマイノリティーに見えます。けれど、たとえば血液型や障がいの問題など、みんなどこかの切り口で切ったら、マイノリティーかもしれない。もっといえば、違っているから当たり前なんだという心構えを持っていれば、違う人だから敬遠しようという考えも、払拭できると思うんです」(岡部さん)

すべての人がマイノリティー。その前提に立てば、もちろん自分だって当てはまる。思い込みや偏見を取り払い、認識を“アップデート”していけば、LGBTQに限らず、目の前の存在を、当たり前のものとして受け入れることができるのかもしれない。

「アップデートという言葉は、元々パソコン用語だと思っていますが、たとえば20数年前のパソコンのUSBに、当時はなかった現在の規格のマウスを付けたら、“不明なデバイス”になるはずなんです。でも今のパソコンだったら、当然マウスだと認識する。これとすごく似ていて、人間は人それぞれだと、考え方をアップデートしていくと、それを異質なものと捉えなくなります。人に対して、さらに優しく寛容になるためにも、常にアップデートしていくことが、大切なのだと思っています」(岡部さん)


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この記事は、2021年1月31日に配信された「Update the world #1 LGBTQ~『彼氏/彼女、いるの?』をアップデート~」をもとに制作しました。

■「Update the world」とは

日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。