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柔軟性と想像力で多様な性「じぶんごと」に

2021年5月28日 19:11
柔軟性と想像力で多様な性「じぶんごと」に

多様な性のあり方を認めあう価値観が社会に広がりつつあるが、LGBTQについてしっかり理解できているか、改めて問われたらどうだろう。性的マイノリティーに関する正しい知識と同時に、「柔軟性」と「想像力」をもつことが大切だという。

■血液型がAB型の人と、同じくらいの割合

L、G、B、T、Q。ついひとまとめにして語られがちだが、それぞれどんな存在なのか、どのように違うのか、今一度考えてみたい。

定義をみると、「L」レズビアンは女性が好きな女性、「G」ゲイは男性が好きな男性、「B」バイセクシャルは男性女性の両方を好きになる人、「T」トランスジェンダーは生まれた時に割り当てられた性別と異なる性別で生きる人となる。そして「Q」にはふたつの意味が。ひとつはクエスチョニング、自分の性のあり方について決めていない人であり、もうひとつがクィア、普通とされる性のあり方以外の多様な生き方を広く総称する言葉だ。

LGBTまでは知っていたがQがわからなかった人や、自分が正しく理解できているか、疑問をもっていた人も多いのではないだろうか。

電通ダイバーシティ・ラボの調査(2018年)によると、日本でLGBTQに該当すると回答した人は8.9%。これは、血液型がAB型の人の割合9~10%とあまり変わらない数値だという。カミングアウトできているかどうかという問題はあるが、少なくともLGBTQを自認する人が、相当数存在することがわかる。

 
■「トランスジェンダー」と「シスジェンダー」 

LGBTQの中の「T」トランスジェンダーについても、その中にも様々な人たちがいるという。広告代理店に勤め、在職中にトランスジェンダーであることをカミングアウトし女性として生活する岡部鈴さんはこう語る。

 

「トランスジェンダーという切り口と、LGBの切り口は若干違うんです。トランスジェンダーで男性として生きている方、女性として生きている方、どちらもいます。ですが、必ずしも女性として生きているからといって、男性がパートナーになるとは限りません。同じようにトランスジェンダーのレズビアンの方もいれば、トランスジェンダーのゲイの方もいます」

トランスジェンダーに対して、自らがありたい性別と生まれたときの体の性別が一致している人を、「シスジェンダー」と呼ぶ。

また昨今は、子どもの名前を、将来男女どちらになってもかまわないものにする親もいるというが、トランスジェンダーの場合は、それがありがたいとのこと。

「トランスジェンダーにとっては、男女どちらでも使える名前はすごく便利ですね。改名する必要がないので。たとえば私の友達に優(まさる)さんという人がいるのですが、男から女になっても、優(ゆう)と読めば漢字は変わらないんです。それはありがたかったな、と彼女は言っていました」(岡部さん)

 
■いろんな性のあり方がある、という前提に立つ

自らの性のあり方がどうであっても、そして恋する人の性別がどうであっても、恋愛の話題は、みんなで盛り上がるための“鉄板ネタ”だと思う人も多いだろう。しかし、ここに“落とし穴”があるという。ゲイであることを公表し、ライターとしてLGBTQについて発信しつづけている松岡宗嗣さんは、こう指摘する。

 

「恋愛の話は、みんなが楽しめそうな会話の代表格です。でも、これもある種の決めつけ、人は恋愛をするという偏見が入っていて。すべての人が恋愛的な感情を持っていたり、性的な感情を誰かに抱いたりするわけではないんです。いろいろ言葉もありますが、たとえば恋愛的な感情を他者に抱かない人を『アロマンティック』、性的な感情を他者に抱かない人を『アセクシャル』と呼んでいます」

このほかにも、さまざまな性のあり方があるとのこと。ただ、その呼び方、名前を覚えることより大切なことがあると、松岡さんは力説する。

「もちろん言葉を覚えるのも大事なのですが、それよりも、いろんな性のあり方の人がいるという前提に立つこと。まずはそこからスタートしないといけないかな、と思います」

目指すべきは、柔軟に性のあり方を捉えること。自分自身も、もしかしたらある日性的指向が変わるかもしれない。そこまで想像できてこそ、相手への理解も深まるのかもしれない。

「シスジェンダーのヘテロセクシャル(異性愛者)で、男性として生まれ女性が好きですという人が、『今のところヘテロセクシャルかな』と言っていて。その人は今後どう変わるかわからないことを、ニュアンスとしてもっているのが、すごくいいなと思いました。また、お子さんを出産した方が、その子の性別を聞かれたとき『今のところ女の子かな』と答えていたんです。将来自分の子が、どんな性のあり方を選ぶかわからないと思っているのが伝わってきて、素敵でしたね。LGBTQは(自分とは)別ものだという認識ではなく、性のあり方はそれぞれで、自分もどうなるかわからないという認識に立てると、じぶんごと化するのだと感じました」(松岡さん)
  
 
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この記事は、2021年1月31日に配信された「Update the world #1 LGBTQ~『彼氏/彼女、いるの?』をアップデート~」をもとに制作しました。

■「Update the world」とは
日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。