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薬剤師がデリバリー?接種加速化へ試行錯誤

2021年6月2日 20:35
薬剤師がデリバリー?接種加速化へ試行錯誤

新型コロナウイルスのワクチン接種の加速化が求められる中、各自治体が工夫して接種を進めています。その具体的な事例を詳しく紹介します。

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国内のワクチン接種回数の日ごとの推移を見ると、5月に入って接種数が増え、今月1日には全国でわかっているだけでも52万7659回の接種が行われました。

1日時点で接種した人の割合は、医療従事者が1回目約96.9%、2回目約65.4%。65歳以上は1回目約15.4%、2回目約1.3%と徐々に増えてきています。

都道府県ごとで1回目の接種をした65歳以上の割合は、和歌山が29%を超えて一番高い接種率となり、3割近い人が1回目を終えています。他にも鳥取、高知、山口、佐賀で25%を超えています。

東京は17.50%ですが、都内でも各自治体が工夫して接種の加速化に取り組んでいます。

■接種加速化へ <ケース1>薬剤師がワクチンデリバリー!?

薬剤師らの協力で接種のスピードアップをはかる“豊島方式”と呼ばれるものです。

東京・豊島区の保健所から区内の薬局にワクチンが配布され、その後、薬剤師らが近くの医療機関に届ける仕組みです。薬剤師がワクチンを配送することで時間を大幅に短縮できます。

豊島区では“かかりつけ医”による個別接種を全体の7割行うことを目標にしています。ただ、接種できる医療機関は約200もあり、直接配送すると時間も手間もかかります。そのため、まず区内41の薬局に配送し、そこから5か所程度ずつ医療機関に配ってもらえば配送時間が短縮できるというわけです。

薬局と医療機関は近くにあることも多く、普段から付き合いがあるので連携しやすいというメリットもあります。

こうした動きで65歳以上の接種率は約3割と、全国平均の倍ほどになっています。

高齢者の接種が想定より早く進んでいるため、64歳以下の接種券の配送が1か月以上前倒しされ、今月14日から順次発送されます。

■接種加速化へ <ケース2>“かかりつけ医”ならぬ“かけつけ医”

東京・調布市では接種の方法を工夫しています。

国が示す一般的な集団接種会場のイメージは、受付、予診、接種と接種を受ける人が動く流れになりますが、“調布モデル”は会場内を医師が移動して接種する方法です。

接種を受ける人は各ブースで医師の巡回を待ち、ブースの中で予診、接種、経過観察も行います。腕を出すこともあり、プライバシー保護のためパネルで仕切っていますが、経過観察のときは顔色が見えるようにパネルが開くようになっています。

接種を受ける人は1か所に座っていれば医師が回ってきてくれるため、歩くのがつらい人なども助かりそうです。

調布市によりますと、この方式で1時間に48人の接種ができているといい、総理官邸のホームページでも、高齢者が会場を移動する方式に比べ2倍以上も効率化したとして“いい事例”として紹介されています。

■接種加速化へ <ケース3>“プロ”が秒単位でムダ削減

地元企業が自治体の集団接種にノウハウを提供している事例もあります。

トヨタ自動車は愛知・豊田市の集団接種会場の運営に「トヨタ生産方式」と呼ばれる車づくりのノウハウを提供して支援しています。

会場設営にあたりトヨタ自動車は、接種にきた人が受け付けをしてから接種を終えて会場を出るまでにかかる動作と、それにかかる時間を秒単位で分析。

例えば、上着を脱ぐ(=30秒)、腕まくり(=10秒)で、1人あたりの接種ペースは「40秒」という計算になります。これを会場のレイアウト設計に落とし込んでいくということです。

車づくりとワクチン接種は違いますが、“ネジを拾うのに何秒”など徹底した効率化で知られるプロだからこその知見と言えます。

トヨタ自動車の担当者は「待っている時間はムダになると同時に、感染リスクにもなる。安全・安心に接種してもらえるよう今後も日々改善していきたい」と話しています。

一方、豊田市の担当者は「ありがたい。地元企業だけでなく、医師会、自治体が得意分野を持ち寄って一体となって接種を進めたい」としています。

ただ、現場の声を聞くと、予定していた通りには進まないこともあるようで、豊田市は予診に時間がかかると思っていたら受付での書類と本人確認に思いのほか時間がかかり、窓口担当者の増員やパソコンの増設を行うそうです。

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取材を進めると、試行錯誤しながら運営にあたっている現場の皆さんの苦労が伝わってきます。私たち一人一人も、それを理解して接種に向かう必要がありそうです。


(2021年6月2日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)