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熱海市土石流…第1波「ちょっとした土砂」

2021年7月6日 3:38

静岡県熱海市で発生した大規模な土石流は、発生から60時間以上が経過しました。これまでに4人が死亡、64人の方の安否が確認できていません。

    ◇◇◇

5日、発生から60時間以上たち、生死を分けるタイムリミットとされる「72時間」が迫る中、これまでに、鈴木チヨセさん82歳ら4人が亡くなり、いまだ64人の安否が分かっていません。

3日午前10時半ごろ、土石流は街を襲いました。

現場近くの住民
「ものすごい音がしたんですよ。バババドカーンっていう様なね。泥の壁、泥の壁が迫ってくるっていう感じ」

現場近くの住民
「つぶれる前に、その裏から土砂が来たのよ。それを見たもんで逃げた。恐ろしくてすごかったよ。やばい!って思った。ほんだら、ドーン!だもん」

土石流が押し寄せる瞬間に建物の3階にいたという消防団員の男性が、zeroの取材に応じました。

建物に閉じ込められた消防団員の男性(30代)
「(Qまずどういった異変に気づいた?)最初は音がして、変だなと思って外を見たら、土砂が崩れていたような感じ。ちょっとした土砂だったんで」

第1波は“ちょっとした土砂崩れ”だったといいますが、わずか数分後に来たという第2波で、男性は、妻と1歳の息子の3人で自宅に閉じ込められました。

建物に閉じ込められた消防団員の男性(30代)
「山の方を窓を開けて見ていたので、あ、来たぞって感じで。音がゴーってすごい音がしてたので、家族で窓から一番遠いところに逃げて。気づいたら、もう周りの木造の家は何もなかった。家族を励まさなきゃなっていうのと同時に半分、『このまま流されちゃうのかな。流されたらもうおわりだな』って、ずっと耐えてた」

男性と同じ消防団員のメンバーである松本さんは、その、およそ200m下流の自宅で土石流を目の当たりにし、九死に一生を得たといいます。

消防団員・松本早人さん(46)
「今回、土砂崩れがあったのは、自分の家の2メートル前まで削られてっちゃった。近所の人たちに、ひたすら大声で、逃げろ、逃げろって言うしかなかった」

目の前で流された家にいた知り合いの家族は─。

消防団員・松本早人さん(46)
「お母さんとお子さんは、無事だったんですけど。おばあちゃんもいたみたいだったけど。(自分が)そのおばあちゃんとすごい仲良かったけど。おばあちゃんはもう、見る影もないまま」

    ◇◇◇

大規模な土石流に被災する前は、住宅が点在する場所でしたが、広い範囲で家屋がのみ込まれました。発生場所とみられる山肌はえぐられ、人々の日常は一変しました。

行方不明者の捜索は懸命に行われています。

「開放したら呼びかけて!」

「海上保安庁です。誰かいますか!」

「ガラス…下がちょっと怖いですね」

救助活動も懸命に行われています。

「ゆっくりね、ゆっくり」

隊員が、女の赤ちゃんを抱きかかえて救出。そしてまもなく─。

「ベルトかリュックを持っておいて!」
「大丈夫、大丈夫。お母さん来るよ」

母親も無事救出されました。

熱海市によりますと、これまでに26人を救出したということです。

    ◇◇◇

小川けい子さんは、夫の徹さん(71)の行方が分かっていません。

夫が行方不明の小川けい子さん(70)
「前の日に出かけていて知らなくて、翌日のニュースで(知った)。その時、電話しても全然出ないから、それですぐ帰ってきたんですけど」

そう話す小川さんが見せてくれたのは、徹さんとのLINE。「3と9でサンキュー」との3日午前11時6分に送られてきたスタンプを最後に、連絡が途絶えました。

「これが最後なの。今までこんなのなかったのにと思ってね。ねえ、本当に会いたいですよね。見つかるまではね、見つかるのが今の願いですね」

田中公一さんは、妻の路子さんが巻き込まれ、連絡がつかないといいます。

路子さんは、巻き込まれた直後には娘にメッセージを送り、息子からの2回目の電話にも応答したといいます。

妻が行方不明の田中公一さん(71)
「(妻は)息子と(家が)つぶされる前に、携帯で話して『外の異変に気がついたから、とりあえず1回切るよ』と、その間にやられたみたい。今度は娘にLINEで『挟まれたから早く助けてくれ』って」
「やっぱり寝られないね。いやあ、あの辺に生きているんじゃねえかなとか。つぶされている場所が、もうちょっとこっちなのかなとか、そんなこと考えてると、とても寝られなかった」

    ◇◇◇

土石流は、突如、街を襲いました。

被災した住民
「家もあとにするしかなかったし、自分の命が先だから逃げるしかなくて、家族で一斉に玄関に出て逃げた」
「初めて手が震えて、逃げる時もすごい必死だったので」

幸い家族全員避難し、ケガもありませんでしたが、夜も寝付けない日々が続いているといいます。

土石流が迫る様子は、1.7キロ離れた逢初橋付近でも撮影されていました。

動画を撮影した、高橋さんは─。

逢初橋の様子を撮影した高橋さん(44)
「あっという間の出来事でした。家を解体する時のバキバキという音と一緒に、ゴーッという洪水の音・悲鳴・叫び声、それが混ざった様な音。30分前には普通に生活してたのが『え、何これ』って、(橋の)向こう側に家があったので、土砂の反対側に帰れなくなっちゃったって感じですね」

その、橋の向こうの景色には、車体の半分ほどが土砂に埋もれてしまった大型バスがありました。すぐ近くに住む男性は、その時の様子を目撃していました。

バスが埋まる様子を目撃
「1回目に(土砂が)来た時、バスが通れなかったんですが、あそこで待機してたんですよ。そのうちに第2波がきまして」
「(Qバスに人は乗ってた?)人は乗ってませんでした」
「(Q運転手だけ?)運転手は真ん中のガラスを割って、そこから逃げてきた」

現場では、泥に阻まれながら、土砂に巻き込まれた人がいないか、捜索する様子も見られました。

5日、zeroが、その場所にいくと、レッカー車によってバスの撤去作業が行われていました。バスを撤去したあとも、懸命な捜索活動が続いていました。

    ◇◇◇

発生から3日目、これまでに家屋など130棟の倒壊が報告されていて、568人がホテルなどに避難しています。市では、住民基本台帳をもとに安否確認を行っていますが、64人の安否が分かっていません。

7月5日放送『news zero』より。