コロナの疑問に答える!ワクチンと心筋炎
新型コロナの疑問に答えたい!「ワクチンと若者の心筋炎との関係は?」をテーマに、河野ワクチン接種担当大臣に「こびナビ」副代表として科学的アドバイスもする、木下喬弘医師に聞きました。
米国CDC(疾病対策センター)は6月、ファイザー社、モデルナ社の新型コロナワクチンの接種が「心筋炎」や「心膜炎」といった病気を引き起こしている可能性があるが、依然としてワクチンを接種するメリットがリスクを上回ると発表しました。
――「心筋炎」「心膜炎」はどんな病気ですか?
心臓の筋肉や心臓を包んでいる膜に炎症が起きる病気です。ウイルスが感染したり、過剰な免疫が筋肉や膜に障害を起こしたりすることで発症します。過去には天然痘のワクチンでも起きたことがある副反応で、ワクチンの接種が原因で起こっても不思議ではありません。
――どんな症状がいつ出るのでしょう?
症状としては胸の痛みが中心で、まれに息苦しさを感じる人もいるようです。接種から5日以内に起こることが多く、1回目の接種より2回目の接種の後で起きることが多いです。
――ワクチンと症状の因果関係は?
まだ確実なことはわかっていません。しかし、若者に限定すると、ワクチンを接種していない場合に自然に発生するよりも多いことがわかってきていて、ワクチンが原因で起きている可能性が指摘されています。
――症状の経過は?
ほとんどの人は後遺症もなく退院できていることがわかっています。CDCによると、6月11日時点で、29歳以下で心筋炎を発症した323人のうち、309人が入院。このうち295人がすでに退院しています。少なくとも218人は症状が回復したということです。9人は入院中で、うち2人がICUに。5人は経過の報告がありませんでした。短期的な経過は良いことがわかっていますが、長期的な経過はこれから確認していく必要があります。
――米国でワクチン接種後に「心筋炎」が報告された頻度は?
頻度としては5万~10万回接種に1回程度で非常にまれです。特に若い男性に報告されています。
※米国では、心筋炎は1226例報告され、報告の頻度は、39歳以下で100万回接種あたり約12.6人に。女性より男性が多く、1回目よりも2回目の接種の後に確認されることが多いと報告されています。
――米国CDCがワクチン接種の利益が上回ると判断した理由は?
実は新型コロナに感染しても心筋炎や全身の炎症を来すことがあるのです。21歳以下で新型コロナに感染した人のうち100万人あたり315人がMIS-Cと呼ばれる多臓器の強い炎症を引き起こす疾患になったことが報告されています。なかには足を切断する治療が必要だったり、亡くなったお子さんもいます。
また、新型コロナに感染した米国のアスリート1597人のうち37人(2.3%)に心臓MRIでの異常が確認されています。
そして、報告されているワクチン接種後の心筋炎や心膜炎の症状よりも感染で起きる方が圧倒的に重症です。
心筋炎以外にも、感染するとにおいや味がわからなくなるという後遺症が長く続く方もおられます。
こうしたことから、米国CDCや米国小児学会などの各学会は、現時点ではワクチンの利益がリスクを上回ると判断したのです。
※厚生労働省は、6月13日までにファイザー社製ワクチンを接種した人で「心膜炎」「心筋炎」を発症したのは12人と明らかに。厚労省の審議会では「ワクチン接種のメリットの方が圧倒的に大きいとの見解が示された」として接種を引き続き推奨している。
――近況もお聞かせください。河野大臣の科学的アドバイザー「こびナビ」の副代表をされていらっしゃいますが、大臣とはどんな会話を?
先日、ワクチンの科学的な情報をお伝えするため、内閣府で河野大臣にお話をさせていただきました。最新の論文の知見やSNSを中心に、話題になっている誤情報について、1時間ほどお話をしたところ、すごく興味を持って聞いていただきました。この「心筋炎」についても情報提供させていただきました。
木下喬弘医師:大阪大学医学部・ハーバード公衆衛生大学院卒。「こびナビ」の副代表、河野ワクチン担当相への助言も行う。