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軽症者向けコロナ治療薬“生薬”に期待も…

2021年7月20日 19:54
軽症者向けコロナ治療薬“生薬”に期待も…

19日、国内で初めての軽症者向けの新型コロナウイルス治療薬が承認されました。どのようなもので、どんな期待がされているのか解説します。

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■東京感染者30日連続前週上回る…拡大止まらず

東京では19日、新たに727人の新型コロナウイルス感染が確認されました。30日連続で前週を上回り感染の急拡大に歯止めがかからない状態です。デルタ株の市中感染の広がりと急速な置き換わりも進んでいます。

また、全国では19日、新たに2329人の感染が確認されました。月曜日で2000人超えるのは5月24日以来およそ2か月ぶりです。ワクチン効果もあってか、重症者は減ってきていますが、感染者の増加に遅れて重症者も増えてくることもあります。

現段階では、感染者数が増えて重症者が減っているということなので、軽症、中等症がほとんどだということです。この軽症から中等症に向けた新型コロナウイルスの治療薬が19日、国内で承認されました。

■国内初“軽症者向け”治療薬「抗体カクテル療法」

国内初の軽症者向けの新型コロナウイルス治療薬は中外製薬の「抗体カクテル療法」です。

19日、田村厚労相は「現在の状況は重症者の方々が以前と比べると(新規)感染者に対して比率が低い。そういう意味では、治療法という意味では1つ大きな前進となってきている」と話しました。

今回承認された軽症者向け「抗体カクテル療法」とは、2種類の薬を同時に点滴で投与するものです。海外での臨床試験で入院、または死亡のリスクをおよそ7割低下させる結果が得られたということです。アメリカのトランプ前大統領が使ったことで知られていました。

投与の対象は、基礎疾患があることや、65歳以上など重症化リスクの高い軽症者や中等症の中でも症状の軽い人。さらに、家で飲んだりできるわけではなく、入院して点滴してもらわないといけないので使える人は限られます。

■開発進む“軽症者向け”治療薬 ほかには?

これまでも治療薬がありましたが、重症者向けでした。国内でいま新型コロナウイルスの治療薬として使用されている薬は、「デキサメタゾン(重症)」「レムデシビル(中等症~重症)」「バリシチニブ(中等症~重症)」の3種類ありますが、いずれも、主に入院している重症患者向けの治療薬で軽症者向けの治療薬はありませんでした。だからこそ、開発が待ち望まれていました。

これとは別に国内ではほかにも軽症者向けの治療薬が開発されていて、厚労省が費用を支援し後押ししています。その中で、軽症者向けは現在2つあります。

1つはグラクソ・スミスクラインの「ソトロビマブ」。こちらは軽症から中等症患者向けの点滴で補助金はおよそ2億5800万円。もう1つは中外製薬の「AT-527」、軽症から中等症患者向けの抗ウイルス薬で飲み薬です。国からの補助金はおよそ4億5800万円にのぼります。

軽症者向けの治療薬というのは、自宅や宿泊施設で療養中に悪化することを防ぐことができますし、無症状の人にも使えることで感染拡大を防げます。

■新たな治療薬候補は“生薬エキス”

そんな中、今月、国内で新たな治療薬候補として、珍しい治験も始まりました。治験を行っているのは北里大学の東洋医学総合研究所です。漢方外来もあるこちらで、東洋医学でのコロナ治療薬の開発に取り組んでいます。

それが「EFE」という生薬エキスを使った治療薬候補です。じつは風邪の初期症状で飲まれる葛根湯に使われる生薬の1つから作られたものです。

開発に携わった担当者の北里大学東洋医学総合研究所・日向須美子部長補佐は「(漢方薬は)初期の段階で飲むことで早く治す。重くしないという使い方がメインなので基本的にそれと同じ。(体内でウイルスが)まだあまり爆発的に増えていない状況で使ってやることで、次々と周りの細胞に感染していくのを防ぐ」と話します。

漢方薬と同じように感染初期で、まだウイルスが少ないときにコロナ治療薬を使い、重症化を防ぎ、早く治すことを目指しています。

■「漢方薬」には注意点も

この話を聞くとコロナに効くと葛根湯を買い占める人とか出てきそうですが、それは危険で絶対にしてはいけないことです。葛根湯に使われている生薬には、高齢者や体の弱い人に副作用を起こす可能性のある成分もあるため、注意が必要です。開発中のコロナ治療薬候補はそうした成分を取り除き、高齢者などでも使いやすいようにされています。すでに販売されている葛根湯とは別物なので、誤解してはいけません。自分の判断で新型コロナの治療に服用することはやめた方がいいと専門家も話しています。

■軽症者向けの治療薬…どうやって治験?

ただ、軽症者向けの治療薬の開発は本当に大変なことだそうです。というのも、基本は自宅療養なので入院などをしてもらっての通常の治験ができないからです。

なので、北里大では遠隔で治験を行うために、着るタイプの機械も使っています。着るタイプの機械で心拍数など体調管理をし医師のオンライン診察などで治験データを収集するようです。

今年春に夫婦でコロナに感染し、軽症で入院した経験がある人に話を聞いてみると、妻は入院時、鼻水や咳が出て咳止め薬などを処方されて症状は治まりましたが、夫は退院した10日後に息苦しくなったそうで「コロナの治療薬はなく症状が出ないか不安が残る」といっていました。

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軽症者向けの治療薬ができれば、大きな一歩となります。ただ、今回承認された「抗体カクテル療法」は、重症化の可能性がある軽症者向けで、全ての軽症者が使えるわけではありません。また、生薬はあくまで治験が始まった段階です。まだまだこの先はどうなるか見通せないことも押さえておきたいです。今後が待たれます。

(2021年7月20日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)