宣言の効果…求められる“強いメッセージ”
政府は、30日午後5時15分ごろ、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪に緊急事態宣言を発出することを決定しました。東京の感染者は、3日連続で3000人を超え、入院患者の増加に直面している病院では医師が危機感を訴えています。
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30日、午後5時すぎ─。
菅首相
「感染力の強いデルタ株(インド型)への置き換わりが急速に進んでおり、このまま感染者数の増加が止まらなければ、重症者数もさらに増加し、病床のひっ迫が進む可能性があります」
感染の急拡大を受け政府は新たに来月2日から埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪に緊急事態宣言を発出することを決定しました。すでに宣言が出ている東京と沖縄も、期限を延長し来月31日までとなります。
東京は、「経験したことのない爆発的感染に向かっている」と指摘されています。30日、新たに感染が確認されたのは3300人で、3日連続で3000人を上回りました。
緊急事態宣言などについて専門家らに諮問する会議では─。
田村厚労相
「今までとはまた違った、新たな大変恐ろしい局面に入ってきている」
専門家からは、国民に危機感が伝わっていないとの指摘が相次ぎました。
政府分科会委員 東邦大学微生物・感染症学講座 舘田一博教授
「ここで今頑張らないと1週間後2週間後にさらに増加ということになってしまうと、それこそ大変な状況になってしまう」
今回、政府が示した対策で、新たなものは「外出する場合にも極力家族や普段行動を共にしている仲間と少人数で行動する」など具体性に乏しいのが現状です。
一部の専門家からは、感染拡大に歯止めがかからなければ、ロックダウンのような、より強い対策をとるための法改正を検討すべきという意見も出ました。
30日午後3時半、菅総理らと会談した政府分科会の尾身会長─。
政府分科会・尾身茂会長
「(これまでで)もっとも難しい危機的な状況だ、ということを申し上げました。この危機を乗り越えるためには、今までやられた取り組みで、不十分なところがあったということを直視すべきだと思う。不十分なものを十分にするために、徹底的に今までの対策を強化して、実効をあげることが重要だと思います」
東京・沖縄に加え、埼玉・千葉・神奈川と大阪が、緊急事態宣言となりました。また、感染拡大の傾向がみられる北海道、石川、京都兵庫、福岡については、まん延防止等重点措置が適用されます。
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30日、新たに882人の感染が確認された大阪では─。
「正直言ってまたかという感じ」
「緊急事態宣言出しても、内容が一緒だったら意味がないのかなと思う」
沖縄では、30日、過去2番目となる382人の感染が確認されました。
沖縄県民
「緊急事態宣言が出ていても増えていく形になっているので、別の方法を検討するべきだと思う」
また、神奈川では1418人、千葉では753人、茨城で222人といずれも過去最多の感染者が確認されています。埼玉も感染者が増加していて、30日は853人の感染者が確認されました。
埼玉県民
「(緊急事態宣言は)仕方ないのはわかるんですけど、生活がまた窮屈になってしまうのかなと」
県内にある焼き肉店からは─。
くに家フーズ・国本賢日代表取締役
「ここのエリアは、お酒が飲めなくなるというのは、初めて迎えるんですよ。だからどうしていいのか」
この焼き肉店は、都と県の境にある八潮市にあります。現在は“まん延防止”が適用されていますが、県が定める感染予防対策の認定を受けているため、この店では午後7時までは、お酒の提供ができていました。しかし、来月2日からの宣言により、お酒が提供できなくなる可能性もあります。
くに家フーズ・国本賢日代表取締役
「焼き肉にビールやお酒が飲めないというのは、(客が)来なくなるのかなというのも感じています。落胆は大きいです」
休業はせず、要請に従って、営業を続けていくということです。
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感染拡大とともに懸念されるのが、医療現場のひっ迫です。
東京・杉並区の病院では、廊下に響く子供の泣き声が聞こえていました。ベビーベッドには、コロナに感染した0歳の赤ちゃんが、横たわっていました。
看護師
「症状はせきが時折」
この病院は、杉並区で唯一、コロナに感染した子供の入院を受け入れていて、小児病棟には、0歳から8歳の子供5人が入院しているということです。
河北総合病院・杉村洋一院長
「家庭内感染ですね。恐らく変異株の影響だと思うんですけど、最近は子供の感染も出てきていますね」
デルタ株(インド型)を中心とする変異株により、若い世代に広がる感染。医療体制は─。
河北総合病院・杉村洋一院長
「43床のベッドがあるんですけど、けさの段階で40人の患者さんが、入院しています。7月からはほぼベッドが満床の状況なので、明らかに状況が悪くなっている」
43床あるベッドは、ほぼ満床状態です。そのため、親子で感染した場合は、同じ部屋で入院してもらうなどして、病床を確保していました。
変異株が猛威を振るっています。杉並区によりますと、今月に入ってからは、全員が変異株への感染で、その中でもデルタ株(インド型)が3割を占めているということです。
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緊急事態宣言は、「コロナ疲れ」や「宣言慣れ」で効果が限定的とも指摘されます。今一度、徹底した感染対策と強いメッセージが求められています。
7月30日午後5時55分ごろ放送。