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歌舞伎町夜回り人 “路上に立つ女性”救う

2021年8月7日 7:00
歌舞伎町夜回り人 “路上に立つ女性”救う

感染拡大が止まらない東京。歓楽街の新宿・歌舞伎町の様相も変わりました。キャバクラや風俗店が休業する一方、少し離れた路上に立って売春をする女性が増えています。3年前から歌舞伎町を夜回りするNPO法人「レスキュー・ハブ」の坂本新さんに、実態を聞きました。


■歌舞伎町夜回りという独自スタイルで、マスクや消毒液を配るだけ

8月はじめ、東京オリンピック開催中の歌舞伎町。緊急事態宣言下ということもあり、夜8時を過ぎると、「不夜城」のネオンがコロナ前と比べると減っているものの、人の流れは絶え間なく続いています。

メインストリートから少し離れた歌舞伎町2丁目あたりの薄暗いエリアに、所在なさげに立つ若い女性たちの姿が目に付きます。

「ね、元気?マスク足りてる?消毒液をあげようか」と、女性たちに次々と声をかける男性がいます。NPO法人『レスキュー・ハブ』代表の坂本新さん(49)。女性たちにマスクや消毒液を手渡し、少し雑談のあと、手を上げて「じゃ、またね」と、その場を離れます。

マスクや消毒液を入れる透明袋には「お話を聞かせてください」とのメッセージ・カードがつけられています。

たくさんのマスクを詰め込んだカバンを肩にさげながら歩く坂本さんは、「突然、知らないおっさんから声をかけられたら、彼女たちは当然警戒心を抱く。そこで、コロナに必要なマスクや消毒液など配布物を用意し、その裏に相談カード貼付。何かあったときに連絡してくれれば全力で守ると伝えている」と説明してくれました。


■路上での“直引き売春”が増えるワケ

坂本さんは、コロナ以降も、週1回のペースで、2~3時間をかけて歌舞伎町を夜回りします。特に気にかけているのは、いわゆる「直引き売春」として、どの店舗にも属さずにひとりで道端に立ち、男性から声がかかるのを待つ女性たちです。

「コロナ禍で、違法ではない性風俗、例えばデリバリーヘルスでも客足が遠のき、食べていけないので歌舞伎町に流れて“直引き”する子が増えている」と、街の変化を語り始めた坂本さん。「店に在籍して働くと、お金のかなりの部分は店に取られるので、コロナの渦中、『路上の直交渉がいい』と判断する子が多くなったように感じる」といいます。

客とホテルに入っても、暴力を受けたうえに金も支払われないケース。性病をうつされても健康保険証がなく、通院を迷うケース。望まない妊娠をしてしまったケースもあるといいます。

コロナ禍での現場の被害実態の把握と見守りに特化して歌舞伎町を夜回りする坂本さんは、悪化する現状を憂いています。


■たどり着いた救援方法「話を聞き、ベストな方法を一緒に考える」

坂本さんは、NPO法人の代表といっても、昼間は別の会社に勤め、サラリーマンとしての収入を確保。この救援活動はまったくの手弁当で行っています。

大学卒業後、大手警備会社に就職し、ホンジュラス、ロシア、中国の日本大使館のセキュリティー要員として20年近く勤務。帰国後、国際NGO、国内NGOで数年働いたあと、去年NPO法人「レスキュー・ハブ」を立ち上げました。

様々な方法を模索したあと、坂本さんがたどり着いたのは、現場を歩くことで被害者たちと信頼関係を築き、助けを求める電話やLINEが来たら、24時間いつでも駆けつけるというスタイル。困りごとに耳を傾け、解決策となる情報を提供し、本人の了承が得られれば、警察や役所、病院などしかるべき窓口につなげる。まさに「救援(レスキュー)のつなぎ役(ハブ)」という団体名の通りです。

現在、抱えている相談は四十数件。コロナで増える路上に立つ“ワケあり女性”に寄り添いながら、被害や孤立を防ぐための選択肢を提供することに奔走しています。

配るカードの最後にはこう書かれています。

《お話をうかがい、ベストな方法を一緒に考えます。相談料は無料です。警察や役所、弁護士事務所、病院等々、必要な場所へ同行します》