自宅療養者の注意点は?家族ができることは
増加する新型コロナウイルスの自宅療養者。悪化させないために気をつけることは? 家族が悪化に気づけるサインはあるのか? 都内で、コロナ患者のオンライン診療と往診を続ける「ロコクリニック中目黒」の瀬田宏哉医師に話を聞いた。
■「オンライン診療」で自宅療養者を支える地域の医師たち
「ロコクリニック中目黒」では、来院して陽性となった患者、保健所からフォローの依頼があった患者などについて、電話を含むオンライン診療で健康観察や緊急の往診を続けている。
瀬田医師「1日の件数は15~20件です。8月に入り患者が一気に増えましたが、20代がダントツで多いです。ただ、30代、40代、またはお子さんも以前に比べて増えています。いまの自分の症状が重症化しているサインなのか? 入院できるのか? 何か治療法はあるのか? そういった不安もあります。冷静に話を聞いて、アドバイスや考えられることを伝え、翌日以降もフォローすることで、患者の安心につながると思います」
脱水の症状があり、点滴が必要な場合や酸素投与の必要がある場合などに緊急往診をするケースもあるが、往診する医師の数には限りがある上、感染リスクもある。往診に至らないですむ患者については、地域の医師たちが積極的にオンラインや電話での診療を活用し、患者の状態を確認。解熱剤などの必要な薬の聞き取りも行っている。
■「入院すべき」・・見極めのポイント(1)酸素飽和度と呼吸の仕方
対面で触診などできないオンライン診療だが、悪化の兆候を察知し「入院すべき」と見極めるポイントは、1つは、やはりパルスオキシメーターによる酸素飽和度の変化だ。
瀬田医師「いま、入院できるかどうかの境目で非常に大きなポイントになるのは、パルスオキシメーターによる酸素飽和度の低下。90%台前半が1つの指標で、93%未満になってくると入院適用に近いイメージになります。これは連日チェックしていただきたいです。1つは、動いていない座っている状態や、安静にしばらくした状態で測る。もう1つは、トイレなどで少し動いた後も測っていただく。動いて体が酸素を必要とする時に、酸素飽和度が低下していないか見て頂きたい。ただ安静にしている時にすごく低い数値が出れば、それはかなり悪い状態になります」
さらに、呼吸が浅くなっていたり早くなっていないか、荒くなり体全体で呼吸をしていないか。呼吸の仕方に変化がないかも大事な指標になるという。
療養中にエアコンを長くつけると、室内の湿度が下がり部屋が乾燥するため、呼吸状態には非常によくないため、注意が必要だという。
■入院の見極めポイント(2)食事と水分は取れているか?
さらに、重要なポイントは「食事ができているか、水分が取れているか」
瀬田医師「水分・食事が取れているかは大事なポイントとして確認します。点滴が必要かどうかの境目にもなります。口から食事や水分をちゃんと取れなくなると、状態の改善が難しくなるので重要なポイントです。おしっこがちゃんと出ない、色が濃くなる、汗が出にくくなる、唇がすごく乾燥する、なども脱水を評価する指標になります」
瀬田医師によると、療養中に「最低限は取った方がいいもの」は、「水分・塩分・糖分」の3つの要素。よく療養者が飲むというスポーツ飲料だけでは、水分と糖分は取れても塩分が足りないため、その場合はスープや塩飴を組み合わせて食べるとよいという。また、「経口補水液」は、3つの要素がバランスよく取れるのでよいという。
■入院の見極めポイント(3)注意すべき高熱のパターンは
高熱が何日も続くと、不安に感じる人も多い。瀬田医師によると、高熱が続く場合には「注意すべきパターン」があると言う。
瀬田医師「熱が長く続いている場合には、2つのパターンがあります。1つは、ウイルス性の感染症で、純粋に熱が長く続いている場合。この場合は、(解熱剤など)対症療法で熱が下がるまで待つしかない。一方で、肺炎を起こして合併症を起こしている場合。熱プラス息苦しさや酸素飽和度の低下がある方は、注意が必要です」
■悪化の兆候・・家族が気づけることは?
直接、顔をみて家族が看病することが難しい新型コロナの自宅療養。接触を控えながら、感染した家族の悪化の兆候に気づくには?
瀬田医師「部屋に電話するとかメッセージを送って状態をこまめに確認してあげる。あるいは、(iPhoneの機能である)フェイスタイムやLINE電話などで、顔が見える状態で会話する家族もいます。そのときに、明らかに顔色が悪い、唇が紫だという場合には、酸素飽和度や血圧が下がっている場合が考えられます。また本人の自覚症状として息苦しさがないか。状態が悪いようでしたら救急車を呼んであげるのも手かもしれません」
さらに、食事を取れているか、水分を取れているか、トイレに行けているかをチェックし、脱水症状になっていないかを確認し、水分が取れていないようなら、解熱鎮痛剤などをうまく使って、水分補給できるタイミングを促すのもよいといいます。
■家族みんな「陽性」・・複数人で療養する場合には?
デルタ株では家庭内感染の割合も増加。家族みんなで自宅療養となるケースも多い。その場合は「隔離」は必要ないのか?
瀬田医師「極論、全員が陽性で感染者だとはっきりしている場合には、隔離する必要はないので、むしろ家庭内でみんなで力を合わせて治る方向に協力して、症状がより悪い方はとにかく休んで、症状の軽い方が、家事だったりを分散してやることが重要です。もちろん、休むということが治療には非常に重要です。解熱鎮痛剤を飲みながら一生懸命に家事などで動くのはよくないですが、現実的に家庭内のことをしなくてはならない場合には、解熱鎮痛剤などが効果を発揮すると思います。また、家庭内感染の場合には、「ウイルスを家庭外に出さない」ということも非常に重要です」