新たな変異「ミュー株」 ワクチンの効果は
学校では新学期が始まりましたが、感染力の強い新型コロナウイルスのデルタ株の影響で、今子供たちへの感染拡大が懸念されています。そのような中、日本に入国した人から、新たな変異株への感染が確認されました。どのようなものなのか、詳しく解説します。
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■新たな変異「ミュー株」とは…「免疫逃避」の可能性
新型コロナウイルスの感染状況ですが、1日は、全国で2万30人の新たな感染者が確認されました。先月20日の過去最多2万5868人からは、徐々に減少傾向の兆しが見えています。ただ、専門家は、重症者は過去最多が続いていて「災害レベル」の状況という認識が必要と、危機感を示しています。
感染拡大に警戒が続く中、日本で新たな変異株の感染者が見つかっていたことが分かりました。厚生労働省によると、これまでに成田と羽田の空港検疫で感染が確認された2人から、新たな変異株「ミュー株」が検出されたということです。
この2人は6月にアラブ首長国連邦から入国した40代女性と、7月にイギリスから入国した50代女性で、ともに無症状でした。ミュー株の感染者が日本で確認されたのは初めてです。なぜミュー株が注目されているのでしょうか。
ミュー株とは、今年1月に南米のコロンビアで初めて確認された変異株で、先月30日にWHO(=世界保健機関)が「注目すべき変異株(VOI)」に分類したばかりです。
WHOは現在、特に警戒すべき変異株について、以下の2つのカテゴリーに分類しています。
1.「懸念される変異株(VOC)」
・アルファ株
・ベータ株
・ガンマ株
・デルタ株 など
デルタ株は今、日本で猛威を振るっています。これらの変異株は「感染力が強い」、「ワクチン効果を低減させる」などの特徴を持つとされています。
2.「注目すべき変異株(VOI)」
・イータ株
・イオタ株
・カッパ株
・ラムダ株
・ミュー株 など
こちらは、感染力やワクチン効果に何らかの影響がある可能性が指摘されています。今回、厚労省が過去の検査結果を改めて確認したところ、空港での2人の感染が見つかったということです。ただし、国内での感染者はまだ確認されていません。
ミュー株にはどのような特徴があるのでしょうか。一番気になるのは、「免疫逃避」の可能性が指摘されている点、つまり、ワクチンの効果が弱まる可能性があることです。
ただ、これについてWHOはさらなる研究が必要だとしていて、感染力や致死率が従来株と比べてどの程度高まるのかも含めて、現時点では、はっきりしたことはまだ分かっていないです。
ミュー株はこれまでに39の国で4500例ほどが確認されていますが、世界全体の感染者では0.1%にとどまっています。
■10代以下の感染者急増のなか新学期…「ハイブリッド授業」
そして、9月に入ったことで新たな懸念も出ています。
国立感染症研究所・脇田隆字所長
「10代以下の感染が、よりしやすくなっている状況があります。ただ、多くの10代以下のお子さんたちの感染は、家庭内が多い。一方で学校が再開すると、学校での感染リスクが出てくる」
東京でも第5波の感染者の増加にともない、都内の10代以下の感染者数も急増しました。1日までの1週間をみても、7月下旬の2倍以上になっています。専門家は、学校の状況に合わせて必要な対策をしっかりやってほしいとしています。
一つの例として、分散登校する対面の授業とオンラインの授業を両方用いる「ハイブリッド授業」を提案しています。どういうものでしょうか。
岐阜市の小学校では、今週夏休みが明け、ハイブリッド授業を始めました。教室にいる児童は半分だけで、もう半分の児童はオンラインで授業を受けています。教室内の密を避けようという取り組みです。東京では世田谷区でも、こうした取り組み始みが始まったということです
■子供の自宅療養…気をつける点は?
実際に感染した子供を自宅で療養させるとき、どういう点に気をつけるべきか、感染症に詳しい沖縄県立中部病院の高山義浩医師に聞きました。
まずは「子供が療養する部屋を決める」ということです。そして、できるだけ「その部屋から出ない」ようにすることが、一番の感染対策とのことです。
とはいえ、部屋から出ないのは難しいです。部屋を出ざるをえない場合は、次のことが大切です。
・アルコールで手指を消毒
・できるだけマスクを着用させる
・部屋の外ではあちこち触らせない
可能なら本人が通った後の場所は、部屋全体の空気が入れ替わるぐらい徹底的に換気を行うことも大切です。
そして、食事はできるだけひとりで食べさせてほしいということです。ただ小さい子だと親の介助が必要なので、窓を開けて換気しながら、親が不織布などのサージカルマスクを着用するということです。
そして洗濯ですが、タオルやシーツ、衣類はビニール袋に入れて、3日間経過するまで子供の部屋に置いておくということです。これでウイルスの活性は失われて、通常通り洗濯すれば感染性は失われるので、それ以上の消毒はいらないということです。
実際に5歳の子供が感染した40代の親に話を聞きますと、何よりも一番大変だったのは、トイレや洗面所などの水回りを共用している場合、ドアノブや便器などを子供が使用した後、毎回消毒しなければならないことだったということです。子供から親が感染したら、誰が子供の世話をするのかと、常にストレスにさらされていたといいます。
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子供に関しては、高山医師も「子供だけが我慢してもこの感染は終わらない。とにかく大人たちが、不要不急の外出をしないなど、気をつける必要がある」と言っています。まずは大人が子供のお手本となる行動を示すことが大切です。
(2021年9月2日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)