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127gで全国民分?次世代型ワクチンとは

2021年9月21日 22:39
127gで全国民分?次世代型ワクチンとは

開発が急がれる新型コロナウイルスの国産ワクチン。第一三共や塩野義製薬などの製薬会社が開発に挑む中、ある創薬ベンチャー企業が来月、臨床試験を開始する。「mRNAワクチンの進化版ととらえていただいて構わないです」開発者がそう自信を見せる「次世代型のワクチン」とは?

■mRNAワクチンの次世代型…レプリコンワクチンとは?

新型コロナワクチンを開発するのは、日本の創薬ベンチャー企業「VLPセラピューティクス・ジャパン」。代表を務める赤畑渉氏は、かつてアメリカの国立衛生研究所(NIH)のワクチン研究センターに勤務し、アルファウイルスワクチン開発でNIH最高賞ディレクターアワードを受賞した経験もある新進気鋭の研究者だ。

開発中のワクチンは「レプリコンワクチン」といわれるもの。自己増殖RNA(レプリコン)を使った新しいタイプのワクチンだ。

赤畑代表「ファイザーなどのmRNAワクチンの進化版ととらえていただいて構わないです。mRNAワクチンは、RNAを脂質に包んでデリバリーし(体内に入れ)ますが、我々のレプリコンワクチンも、RNAを脂質に包んでデリバリーするところまでは同じです。ただ、一度RNAが細胞に取り込まれると、まず最初にRNAを増やすための酵素が増えて、その酵素がさらにRNAを増やし、COVIDの抗原が増えるというメカニズムです」

ファイザーなどのmRNAワクチンは、ウイルスのうち細胞にくっつくスパイクと呼ばれる部分の遺伝子(設計図)を注射し、体内でスパイクを作り出すことでウイルスが入ってきたと身体に錯覚させ、ウイルスと闘う抗体をあらかじめ作るが、レプリコンワクチンでは、酵素が増えることで体内でRNAが増えるのが特徴だ。結果としてより多くの抗体が作られる仕組みになっている。

■127gで日本人1億2000万人分をカバー

レプリコンワクチンの最大のメリットは、少量で効果が期待できることだ。自己増殖するため、1回の投与量をかなり抑えることを可能にすると言う。

赤畑代表「非常に少量でも、mRNAワクチンと同じくらいの効果が出るようなものを目指しています。例えば、1回の接種で打つ量は、ファイザーさんは30マイクログラム、モデルナさんは100マイクログラムですが、レプリコンワクチンは、できればその10分の1から100分の1くらいに量を抑えればと思っています。今後、臨床試験で必要な量を見ていこうと思います」

レプリコンワクチンに必要と考えられる接種量は、1マイクログラムから10マイクログラム程度。日本の全人口約1億2000万人に投与するのに必要な量は、コップ1杯程度の127グラムということになる。少量ですむため短期間で大量生産できるメリットがある。

■少量投与で、副反応もない?

体内に投与する量が少ないメリットは他にもある。副反応を抑えられることが期待できるというのだ。

赤畑代表「かなりの量のものを打つと、免疫が反応します。やはり閾値を超えちゃうと熱が出たりということが起こりますので。閾値を超えないけどもちゃんと抗体を出す量にセットできればと思っています。やはり副反応の問題は大切で、お年寄りの方が1日か2日、長い方で1週間くらい(副反応に)苦しむ方というような負担を、できるだけ少なくしたようなものになればと開発しています」

■デルタ株や新たな変異株への対応

気になるのは、デルタ株などの変異株への効果や、今後新たな変異株が出てきた場合に対応できるかだ。

赤畑代表「変異株にも対応できるワクチンになっていると思います。mRNAワクチンはスパイクタンパク全体をターゲットにして作られていますが、レプリコンワクチンの場合は、(スパイクタンパクの中の)レセプターバインディングドメイン(RBD)だけを使う。変異株に対して有効に対応できる形でワクチンをデザインしています」

新型コロナウイルスのスパイクタンパク全体を作る従来のmRNAワクチンと異なり、スパイクのうちヒトの細胞に最初にくっつくRBDと呼ばれる部分のみを作ることで、より変異株への効果が弱まる現象が起こりにくワクチンになっているということだ。

赤畑代表「スピーディーに作れるので、今後も変異株が出てきた場合や新しい株が出てきた場合に、日本の1億2000万人分くらいは素早く作れるような体制を、いま厚労省と話し合って、やっていこうと思っています」

■10月にも臨床試験開始

これまで、厚生労働省と日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて、開発が進められてきたレプリコンワクチン。10月から、初期の臨床試験が始まる予定で、2022年中の実用化を目指している。

赤畑代表「国産ワクチンが必要というのは多くの理由があって、国防上、日本を守る上で国産ワクチンが必要だということもありますし、今後、国内で新たな変異株が出てきた場合に、それに対応できるのは国産メーカーしかいないと思っています。さらに、新たな感染症が出てきた場合にも、また海外メーカーを輸入するだけでいいのかというディスカッションも必ずある。少しでも、このテクノロジーで安全で効果のあるものが日本国内だけではなく、ぜひ世界へより平等な形でワクチンを届けるようにしていきたいと思っています」