笑顔のヒーロー コロナ禍に挑む大道芸人
コロナ禍で、エンターテインメントは必要か?仕事はほぼゼロ…それでもご当地ヒーローは立ちあがりました。
子ども「悪いやつやっつけろ!」
富山県にある、イベント会社。大道芸で全国を駆け回り、子どもたちに笑顔を届けてきました。しかし、新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされています。社長の田辺桂也さん。そして、入社9年目の雫さん。
雫さん「私からパフォーマンス奪われたら、自分って何もできない人なんだなってのをすごい痛感しちゃって」
物産展の販売員をしながら、持続化給付金でしのぐ日々。自分たちができること、それは“ご当地ヒーロー”を作ること。“きときと戦士キットムーン”。
“きときと”は富山弁で「元気」。我慢を強いられている子どもたちに「ヒーローが必要!」そう考えたのです。
田辺さん「子どもが笑うってのは本当にね、心豊かになりますよ」
今でも心に深く残っているのは、東日本大震災の被災地で行ったショーのこと。
田辺さん「メチャクチャ盛り上がりましたよね。芯から楽しんでいるっていう感じ。あの時はエンターテインメントの求めがありました。コロナの場合は、それをこう抑制せざるを得ない」
きっとまた、笑顔にできるはず、社員にハッパをかけました。
田辺さん「『キットムーンどこでも行ってこい!』『会社、大丈夫か?』って実は思ったんだけど」
動き出した、きときと戦士キットムーン。演じる雫さんは太極拳にダンスと、猛特訓を続けます。
雫さん「戦隊モノってレッドが男性で、女性はピンクかイエローで端っこに立っているから、女性がレッドでセンターにいてもいいんじゃないかと思いました」
さらに、ショーの途中であえて仮面を外そう!子どもたちと一緒に笑顔で敵を倒すというアイデア。
雫さん「笑顔はいいですよ、笑顔は」
アイデアはあるけど、お金はありません。
YouTube動画「2021年、いよいよ~こちら!クラウドファンディングが始まりました」
総額200万円ほどと見込んだプロジェクト。2か月の期限をもうけ、100万円の寄付金を募ることに。地元の人たちも、力を貸してくれました。「お金はいいから」と、キットムーンの衣装づくりを引き受けてくれました。
プロのミュージシャンや富山出身のミュージカル女優も格安でテーマソング作りに力を貸してくれました。
そして、クラウドファンディングの期限があと1日に迫った日。
雫さん「クラウドファンディング、100万円、達成しました。コメントがまたすごいうれしくて。なんか、やっていいプロジェクトなんだなって確信が持てた」
寄付されたのは137万111円。
田辺さん「エンターテインメントは、やっぱり必要だったんだなって。僕らも今感じてるし、やって良かったと」
その晩、富山の夜空には、大きなフルムーンが。ついにキットムーンは子どもたちのもとへ。
キットムーン「きときと笑顔光線!富山~だいすき~」
田辺さん「いやホント久しぶり。なんかねぇやっぱりいいっすね」
雫さん「笑ったらこんなに楽しいんだよ。笑顔の素晴らしさを伝えていきたいです」
*2021年9月12日放送NNNドキュメント’21『笑顔のヒーロー ~コロナ禍に挑む大道芸人たち~』(北日本放送制作)を再編集しました。