【解説】「サル痘」WHOが緊急事態を宣言 国内でも感染者初確認 「手足口病」も流行の兆し…新型コロナ同様に発熱も
欧米などで感染が拡大しているサル痘について、WHO(=世界保健機関)が緊急事態を宣言、日本でも国内初の感染が確認されました。新型コロナウイルスとともにこの夏、注意したい感染症についてお伝えします。
・世界で急拡大…死者も
・治療薬どうなる?
・「手足口病」でも“警報”
以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。
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■世界で「サル痘」の感染が急拡大 日本では…
23日、WHO(=世界保健機関)のテドロス事務局長は、「サル痘の感染が世界で急拡大していることから、『公衆衛生上の緊急事態』にあたると判断した」と述べました。
WHOによると、今年1月から今月21日までで、感染が確認された国と地域を公表しました。中でも、ヨーロッパではスペインが最も多く3125人、アメリカでも2102人、感染が確認されています。日本ではこれまで確認されていませんが(その後、都内在住30代男性のサル痘感染を国内初確認)、日本に近いところですと韓国、中国でも確認されています。すべて合わせると、23日時点で75の国と地域、1万6000人以上が感染して、5人が亡くなっています。
サル痘は、もともとは中央・西アフリカの熱帯雨林で散発的にみられる感染症です。感染すると発熱、頭痛、でこぼこした発疹、リンパ節の腫れなどがみられます。致死率は1%~10%程度とされています。そしてWHOによると、22日時点で感染者の98.8%が男性ということがわかっています。
感染の経路は感染者の体液、発疹に触れること、飛まつを長時間にわたって受け続けるといったこととされていますが、WHOのテドロス事務局長は、「感染経路の解明は『不十分』だ」として、さらに科学的な研究が必要との認識を示しています。
サル痘に詳しい、岡山理科大学獣医学部微生物学の森川教授に話を聞いたところ、「ワクチンもなかった新型コロナとは違う。サル痘はワクチンも治療薬も、世界には承認されたものがある」と述べました。
サル痘は、1976年に接種が廃止された「天然痘」のワクチンが有効だとされています。そのため、いま日本の厚生労働省は、ワクチン接種の準備を急いでいるほか、国内では未承認、承認されていない治療薬をすでに確保しているということです。
この治療薬というのは、アメリカの製薬会社が開発した「テコビリマット」という、天然痘を治療するための飲み薬です。厚労省は今後、国内で感染者が出た場合には、この薬を「特定臨床研究の枠組みで投与できる」という仕組みをつくりました。有効性や安全性を調べるという名目のもと、例外的に薬を使えるようにしたということです。
一方で、国内ではこの夏、新型コロナと同時に注意が必要な感染症があります。それは「手足口病」で、手足、口の中に発疹があらわれて、夏に流行することが多い感染症です。特に「子どもを中心に発症する」といわれていますが、大人にも感染する可能性があります。
国立感染症研究所が発表した速報値のデータによると、全国ではいま、手足口病の患者の数が9週間連続で増えています。特に報告が多い県が新潟と千葉です。1つの医療機関で1週間あたりの患者報告数が、「5」を超えるかどうかが警報基準とされていますが、新潟は「8.64」、千葉は「6.88」と、いずれも「5」を超えているということで、警報発令中となっています。
実際に警報が出ている千葉県で、小児専門のクリニック「ユーカリが丘アレルギーこどもクリニック」の松山院長に話を聞くと、「手足口病は発熱するケースもあるので、この夏、コロナと重なったことで、発熱外来をいま受診できない患者もいる。小児科の現場はとにかく圧迫されていて、現場は悲鳴をあげている」ということでした。
また、手足口病の患者が増えたのか聞くと、「過去2年間は手足口病などの、新型コロナ以外の感染症というものは、全国的にみても流行が抑えられていた。そのため、子どもたちが抵抗力を持ち合わせていないことも今回の流行の要因なのでは」と話していました。
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医療現場のいまの負担を考えても、さまざまな予防策が大事です。普段から手洗いを心がけること、他の人と同じタオルを使わないことも手足口病の予防には有効です。
(2022年7月25日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)