あきらめまーや 不屈のネイリスト
私は、あきらめない。歩くことも、ネイルの仕事も、結婚も―。
「死にたいって思ってたのは最初の時期だけで、生きてたらなんとかなるし、私、不思議と10年後には必ず元に戻ってるって思ってるから」
ネイリストの中野由佳さん。
由佳さん「憎らしい握力のなさが…」
手足は、自由が利きません。
5年前、2台の車の衝突事故に巻き込まれ、頸髄(けいずい)を損傷しました。
看護師さん「『あなたはもう歩けません』『手も足も動きません』を聞いた途端“私はこんなになってしまって全く動けなくなったのに、事故した人たちはみんな元気なの”どう思います?って泣き出して」
由佳さん「なんで神様は、私を生かしたのかなって思って…」
25歳でネイルの世界に入った由佳さん。コンテストでは全国で10位に輝くほどのネイリストでした。あの日、一瞬の事故で、生きがいを奪われました。
でも、歩くこととネイリストとしての復帰は、決してあきらめません。わずかに動くようになった手と腕。病室で入院仲間にネイルができるくらいになりました。1年以上にわたる入院生活を経て、18年ぶりに実家に戻った由佳さん。
退院後もひたすらリハビリに励む毎日。「歩けるようになる」と信じて、来る日も、来る日も…。
由佳さん「立てた!おじいちゃん!立って歩いてるんよ」
おじいちゃん「歩きよるんじゃないか」
由佳さん「歩いとるじゃんか!」
歩行器や足につける装具があれば立つことができるように…。実家の敷地にある小屋では、改装工事が始まっていました。ここでネイルサロンを開くことにしたのです。
由佳さん「3月16日は私が事故に遭った日なので、その日にオープンしてなるべく嫌な思い出は、いい思い出に変えたいんです」
由佳さん「いらっしゃーい!」
最初のお客さん。ネイルの予約を入れていましたが、事故でかないませんでした。
お客さん「すごいっていう言葉よりも言葉にならん」
由佳さん「ありがとうございました!お待たせしました。こんな時間かかっちゃったよ」
悲しい日を、“上書き更新”しました。
由佳さん「ケガしてよかったとは言えないけど、でも、私の人生よかったって思えるきょうになりました」
“歩く夢”も着実に近づいています。大阪にある、脊髄を損傷した人専門のジムに広島から通い始めました。事故から5年たった3月。由佳さんは大切な人と誓いをたてました。
『この人と一緒に歩く』
由佳さん「まさかね障害がある車いすの人と一緒に暮らそうと思う人がいるとか考えてなかったから」
大介さん「俺のこと?」
由佳さんのネイルサロンは笑顔がうまれる場所になりました。そして、いつか自分の足で歩く。
ディレクター「(入院中)10年したら元に戻ってる気がするっておっしゃってたの覚えてますか?」
由佳さん「覚えてます。5年経ったのであと5年。いまは努力の積み重ねですね」
2021年9月26日放送 NNNドキュメント’21『あきらめまーや!~不屈のネイリスト…必ず歩く~』(広島テレビ制作)を再編集しました