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コロナ“第6波”対策骨格 4つのポイント

2021年10月15日 19:40
コロナ“第6波”対策骨格 4つのポイント

多くの専門家が避けては通れないと指摘している第6波に備えて、岸田総理大臣は15日、新たな対策強化の骨格を示しました。いわゆる“幽霊病床”の解消などを目指すとしていますが、実効性が課題となっています。

■新型コロナウイルス対策の骨格…4つのポイント

最新の感染状況です。14日は全国で新たに618人の感染者が確認されました。第5波のピークは、8月20日の2万5866人だったので、この2か月ほどでかなり減りました。

現在は感染状況がやや落ち着いていますが、感染の再拡大が懸念される冬に向けて、どう備えるのか。15日、政府は今後の新型コロナウイルス対策について新たな骨格を示し、具体化を急ぐよう関係閣僚に指示しました。

岸田総理大臣「この夏のピーク時に学び、今後感染力が2倍になった場合にも対応可能な対策を策定いたしました。最悪の事態を想定した危機管理を行い、対策に万全を期してまいります」

15日示されたコロナ対策の骨格の中で、4つのポイントをみていきます。

1.「幽霊病床」の解消
2.国の権限を発動
3.人材派遣計画
4.自宅、宿泊療養者への対応

想定として、この夏に流行したデルタ株のさらに2倍の感染力の変異ウイルスが流行した場合、ワクチン接種が進んでいることも踏まえると、入院患者を受け入れる病床の数はこれまでの1.2倍必要になるとしています。これを確保するため、対策を打ち出しました。

まずは、「幽霊病床」の解消です。第5波では、一部の病院で「すぐに受け入れ可能」と申告していながら、実際は使われていない、いわゆる「幽霊病床」があるという実態が明らかになり、問題となりました。

医療機関は、コロナ患者をすぐに受け入れ可能な病床を確保していると申告すると、国から補助金がもらえます。ただ、実際には受け入れていないのに補助金を受け取っているとなると、不適切です。

第5波の時の東京の病床使用率は、およそ7割の状態が続いていました。今後、幽霊病床の実態を把握して、感染が拡大した時には、申告したコロナ病床の少なくとも8割の使用率を求めるとしています。

次に、国の権限発動です。これまで公的病院では、コロナ患者の受け入れが十分ではないとの指摘もありました。こうした事態を解消するため、国や都道府県知事に与えられている権限を最大限に活用し、法律に基づいてこれらの病院に対して、コロナ専用病床を作るよう「要求」や「要請」を出すとしています。

さらに、医療人材の確保も課題です。これまでの感染拡大時には、病床はあるのに、医師や看護師が足りなくて患者を受け入れられないということが問題になりました。今後は、いざという時にこういう事態に陥らないために、事前に人材確保・配置調整を進めておく必要があります。

具体的には、感染が拡大した時、コロナ患者を専用に受け入れる病院をあらかじめ決めておき、他の公的病院などから医師や看護師をそれぞれ何名派遣するといった計画をあらかじめ決めておくように都道府県に求めます。

しかし、公的病院側との調整はこれからということで、強権を発動するにしても、どこまで実現できるのかが課題です。

4つ目は、自宅、宿泊療養者への対応です。第5波では、自宅療養中に容体が急変して亡くなる方もいました。

これまでは、保健所が陽性者の健康観察などを担当してきましたが、今後は、診断した医師やかかりつけ医などの地域の医療機関にも、この役割を担ってもらい、すべての陽性者に対して陽性が判明した日か、翌日に連絡を取り、健康観察や診療を行うことを目指すとしています。


■ITを活用し医療体制の見える化へ

こうした対策を円滑に進めるために、政府は、ITを活用して、医療体制の稼働状況を見える化するとしています。

具体的には、地域の診療所などで行うオンライン診療や往診など、自宅療養者への診療実績を公表し、見える化します。

そして、コロナ病床がどれくらい確保されていて、どれくらい使われているのか、医療機関ごとに公表して見える化するということです。実際には、これまでも幽霊病床などがあることは、国も自治体も把握していながら、なかなか対策が取られてこなかったわけですが、感染が落ち着いている今のうちに、こうした体制を整えておくことが大切です。

さらに、15日示された骨格では、例えば、感染力がデルタ株の3倍となるなど、さらなる感染拡大が生じた場合には、法改正も視野に「強い行動制限を機動的に国民に求める」とともに、「国の責任において一般医療の制限の下、緊急的な病床等を確保するための具体的措置を講じる」としています。


■医療体制の強化対策について現場の考えは?

こうした具体的な対策が出てきていますが、実際に現場としてはどのように考えているのでしょうか。

感染症学が専門の松本哲哉先生は、「対応できる人材の確保・育成を重点的にやらないと解決しない」としています。

また、「公的病院のコロナ専用病床についても、人材などの体制が整わないと難しい。コロナ対応の研修を行うトレーニングセンターを作るなど、育成も重要」だと話していました。

次なる第6波に備え、これまでの教訓を踏まえた新たなコロナ対策を打ち出したわけですが、実際にどこまで現場を動かして実効性のあるものにできるのかは未知数です。

理想を掲げたものの、絵に描いた餅に終わらせないよう、現場の声と実態を踏まえた丁寧な調整が求められます。

(2021年10月15日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)