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なぜ再び…特殊な選挙警護 その難しさを専門家が解説【バンキシャ!】

2023年4月17日 10:24
なぜ再び…特殊な選挙警護 その難しさを専門家が解説【バンキシャ!】

またしても選挙応援中の警備の隙を突かれました。爆発物は岸田総理の足元に投げ込まれ、近くで爆発するという深刻な事態に。事件は未然に防げなかったのか。安倍元総理の選挙応援で警備を担当した経験がある関根篤志さんに伺います。(真相報道バンキシャ!)

      ◇

──まず、要人警護の経験者として、今回の現場の映像をどのようにご覧になりましたか。

関根さん
「今回、気になったのは場所。屋外といえども屋根のある場所ということで、照度が非常に低い。非常に暗い状況で、不審者の発見には非常に困難な環境だと思いました」

──屋根が無いような明るい場所のほうが警備上はいい?

関根さん
「その方が不審者の早期発見につとめられる」

──まわりの建物の状況などはどうですか?

関根さん
「現場にあったプレハブ、事務所でしょうか、これが障害になっているので、警護しづらいのかなと」

──先ほど新たに分かったのですが、漁協の関係者らによると、もともとは広い駐車場で演説を行う予定だったのが、雨のため、場所が変更になったということでした。さまざまな事情があったとは思いますが、警備という視点からみるといかがでしょうか。

関根さん
「当日の会場変更はまずあり得ない。前日、あるいは2日前に変更の打診があれば、再度、現場の確認、警護計画の見直しをするのが原則」

──逮捕された木村容疑者については、これまでに思想的な背景や動機を示すものは見つかっていないということです。事前になにかを察知して、このような事件を防ぐという観点からは、可能性はあったのでしょうか。

関根さん
「警察サイドとしては、非常に難しいところではあります。警備対象者として、事件を起こす可能性がある人物は当然にマークしている。しかし、今回のようなノーマークな個人が突然事件を起こすとなると、警察としては、事前に把握するのは、ほぼ不可能に近いと思います」

      ◇

岸田総理の足元に爆発物が投げ込まれた瞬間、現場はどのような状況だったのか。改めて整理します。演説を聞きに集まった聴衆はおよそ200人。周りはコーンとバーで囲まれていて、最前列から岸田総理が立つ予定だった演説台まではおよそ5メートル。木村容疑者の位置は、岸田総理の演説台からおよそ10メートル離れた聴衆の中で、そこから爆発物を投げたとみられています。

──この位置関係については、どのようにご覧になりますか。

関根さん
「映像等から状況を確認するかぎりでは、聴衆と総理の距離が近すぎると感じています。私の経験上、最低でも10メートル以上は確保したい」

──ただ、選挙演説ということもあり、なるべく聴衆との距離を縮めたいという要望もあるかと思いますが。

関根さん
「選挙警護というのは特に特殊で、得票数に如実に影響する可能性があるので、総理サイドも、聴衆サイドも、なるべく近い距離で、たとえば握手したり、ハイタッチをしたり、コミュニケーションをとりたいというのが希望。主催者側もそれが票の上積みにつながると考えている中で、警察サイドとしては、総理に何かあったら大変ですので、そういった事態を起こさないために、落としどころを見つけるのに現場は苦労しているというのが実情」

──関根さんは、7年前に安倍元総理が現職の総理だった時に、福島での応援演説の際に警備責任者を務められています。その時もやはり“距離”をめぐるジレンマはあったのでしょうか。

関根さん
「ありましたね。やはり警察側としては、なるべく総理と聴衆との距離を広げて、なおかつ、現場の警護員を大勢動員して、事案の発生を抑止したい。しかし、やはり主催者側の意図をくみながら…となると、そのあたりの調整が警察に委ねられる」

──今回、岸田総理が漁港で演説することは、前日に自民党のホームページで知らされていました。警護の面から“事前告知”についてはどうお考えですか。

関根さん
「今回は和歌山の選挙区での演説ということで、自民党のホームページ全体で広報する必要はなかったのではないか。安倍元総理の事件もあったが、こうした情報を利用してなんらかの事案を発生させようとする人間が出てくる時代になった中で、なるべく必要な人数だけを集める方法に切り替える必要があるのでは」

──今回、入場制限はなく手荷物検査も行われていなかったそうですが、今後、そういったこと必要になってくるのでしょうか。

関根さん
「これだけ、安倍元総理と現職の総理ということで、短期間のうちに事件が続いている以上、所持品検査の徹底等を厳格化していく必要があると考えています」

安倍元総理の事件後、再発防止策の1つとして、要人警護の基本事項を定めた「警護要則」を刷新。▼要人警護の人員増加や、▼警護計画を警察庁が事前審査することなどが新たに定められました。

──まずは「要人警護の人員増加」について。現場の警護経験者としてはどのように感じられますか?

関根さん
「安倍元総理の事件があったあと、確かにSPの配置においては増員されていると思います。ただ、実際のところ、各道府県警察というのは、どうしても人数が警視庁などに比べると少ないですし、警護専門でやっている警察官のかたが非常に少ない。こうした中で各県警、どれくらい人員を増やせたかというと、本部の要人警護担当部署のわずかな人数を増やすくらいしかできていないというふうにみています」

──実際には警護専門でない人も動員されなければならない?

関根さん
「今回のような総理警護の場合は、警備専門の警察官以外にも、地域課・交通課・生活安全課・刑事課などの応援をもらいながらやらないと、実質的に人数が足りないというのが実情です」

──「警護計画を、警察庁が事前審査」という点についてはいかがでしょうか。

関根さん
「事前に審査というのは、もともと行われてはいました。ただ、今回、警察庁の文書として、通達として明確化した」

──実効性という観点からはどうでしょうか?

関根さん
「たとえば、選挙警護では、前日や2日前に突然『総理が入ります』という連絡が来るケースがよくある。こうした場合に警察庁が事前に、各都道府県警と一緒に現場の確認を行うというのは不可能というのが実情です」

──さらに実効性のある改革、刷新が求められる可能性もあるということですね。

関根さん
「その通りです」

(4月16日放送より)

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