伊藤詩織さん、二審も勝訴――高裁「合意なき性的暴行」を認定 著書の1文“名誉毀損”で支払い命令も 元TBS記者は上告へ
元TBS記者の男性から性的暴行を受けたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが損害賠償を求めていた裁判の控訴審で、東京高裁は25日、一審と同様、合意のない性行為を認定しました。一方、伊藤さんの公表文が名誉毀損に当たるとして支払いも命じました。
■「勝訴」の紙…一審と同じマフラーで
25日、東京高裁前。ジャーナリストの伊藤詩織さん(33)が「長い裁判の高裁が一区切りになりました。ありがとうございました」と挨拶をしました。
一審の時と同じ色のマフラーで「勝訴」の紙を手にした伊藤さん。元TBS記者の山口敬之さん(55)から性的暴行を受けたとして、損害賠償を求めた裁判の控訴審の判決が下されました。
2017年、伊藤さんは「レイプがどれだけ恐ろしく、その後の人生に大きな影響を与えるか」と訴えていました。一方の山口さんは2019年「私は、法に触れる行為を一切していない」と強調していました。
■高裁も「合意のない性行為」を認定
訴状などによると、伊藤さんは就職の相談で食事をした後、酒に酔って意識を失い、ホテルで山口さんから「合意なし」に性行為をされたと主張しました。それに対し山口さんは、「合意のもとだった」として反訴していました。
真っ向から食い違う主張に、一審の東京地裁は、「合意のない性行為」を認定。山口さんに330万円の支払いを命じていました。
25日の控訴審の判決で、東京高裁も「合意のない性行為」を認定し、賠償額を約332万円に増額。その一方で、事件後に伊藤さんが公表した内容が、山口さんへの名誉毀損などにあたるとして、伊藤さんに対しても55万円の支払いを命じました。
■「名誉毀損」…伊藤さんの1文は
名誉毀損などにあたるとされたのは、事件後に伊藤さんが著書『Black Box』で書いた一文でした。
「インターネットでアメリカのサイトを検索してみると、デートレイプドラッグを入れられた場合に起きる記憶障害や吐き気の症状は自分の身に起きたことと、驚くほど一致していた」
東京高裁は、この記述から山口さんから薬を服用させられたと読み取れるものの、それは真実であるとは認められないとして、名誉毀損などにあたると判断しました。
25日夜、会見で伊藤さんは「デートレイプドラッグについて、個人的な感覚で意見を述べたことはそれまでですが、そういった被害が実際にあるということを広く知らしめられたことについては、自分の中では大きな一歩だったと感じています」と話しました。
同じく控訴審判決後に会見した山口さんは、名誉毀損などの判断は評価しつつも、合意のない性行為を認定されたことは納得できないとして、上告する準備に入っているといいます。
■声を上げ5年…伊藤さんの願い
声を上げ始めてから経った、5年間。判決後の会見で、伊藤さんはこう語りました。
「私のひとつの体験を…この数年間、語らせて頂きました。願っているのは、伊藤詩織ではなく、これが自分の近い人に起きたらどういったことになるだろうと少しでも想像していただきたいということでした」
「私の身に起こったことがきちんと法律の中で裁かれる、そういった世の中がやってくると信じています」
(1月25日『news zero』より)