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【解説】警察トップも大号令 「トクリュウ」を壊滅せよ!

2023年11月16日 22:45
【解説】警察トップも大号令 「トクリュウ」を壊滅せよ!

「ルフィ」からの指示で実行役が強盗に入り、高齢女性が死亡したとされる東京・狛江市の事件。背後にはSNSなどでつながる犯罪グループ「トクリュウ」の存在があった。警察庁長官が取り締まりに大号令をかける「トクリュウ」捜査の最前線を解説する。〈社会部 警察庁担当・高柳遼太郎〉

■日本を震かんさせた「ルフィ」グループ

ことし1月、東京・狛江市の一軒家に強盗が入り、暴行を受けた90歳の女性が死亡した。日本を震かんさせたこの強盗事件では、指示役「ルフィ」らがフィリピンから指示を出したとされ、SNSで募集された実行役が強盗に入っていたとみられている。彼らのようなグループによる凶悪事件が近年相次いでいる。

■「ルフィ」グループなどを「トクリュウ」と名付ける

強盗・侵入盗などの事件のうち、SNSで募集した実行役に犯行を指示するというものは、警察庁のまとめによるとおととし9月から先月までに22都道府県で72件にのぼり、171人を検挙したということだ。

「ルフィ」グループだけでなく、自分たちでグループ名を名乗らず、匿名性の高いSNSなどで指示役が実行役を集めるため指示役が誰か特定しづらかったり、実行役などのメンバーを入れ替え「捨て駒」として切り捨てるなど流動性が高かったりする犯罪グループを、警察庁はことし7月、あらたに「匿名・流動型犯罪グループ」、略して「トクリュウ」と名付け、徹底的な取り締まりに乗り出した。

■警察トップが「縦割り排した戦略的取り締まり」指示

ことし7月の全国の警察本部長を集めた会議で、警察庁の露木康浩長官はこう発言した。「SNSで実行犯を募集する手口は、特殊詐欺のみならず強盗や窃盗にまで拡大しています」「今後は部門の縦割りを排した態勢を構築し、匿名・流動型犯罪グループを部門共通のターゲットとして、戦略的な取り締まりを進めることが必要です」これはどういうことだろうか?

■捜査部門の縦割りを排除

捜査においての部門の縦割りというのを具体的に説明する。いままでは、発生した特殊詐欺事件や強盗事件の捜査は刑事部門が担当し、不良少年の捜査や、「トクリュウ」が犯罪で得た資金を使って運営する風俗店、賭博店の捜査は生安部門が、というように捜査部門がわかれていた。そこで、部門を超えて連携して行っていくことで、「トクリュウ」のメンバーとなり得る人物を把握し、全容をつかもうとしている。

■県警同士の縦割りを排除

また、そもそも各都道府県の警察は、都道府県知事が所管するそれぞれ独立した捜査機関だ。「トクリュウ」が受け子や出し子を集めて行う特殊詐欺など、事件の捜査は「発生地主義」を原則としてきた。たとえば九州で起きた特殊詐欺の受け子が東京にいた場合、九州の県警の捜査員が上京し、長時間かけて被疑者の捜査、検挙を行っていくのが通常だ。捜査関係者は「いままでは地元の警察官は当直勤務があれば地元に帰ったりしていて、正直非効率なところがあった」と話している。

今回、警察庁は全国の警察に特殊詐欺の嘱託捜査を行うチームの編成を指示した。つまり他県警からの依頼を受けて捜査を行う部隊だ。なかでも受け子や出し子などが多く集まる傾向にある東京や大阪など大都市圏の警察には、警視庁に200人、埼玉県警、千葉県警に70人、神奈川県警に60人、愛知県警に25人、大阪府警に40人、福岡県警に25人という大きな規模のチームを作るよう要請している。

これらの専属チームは来年4月に発足し、受け子などが管轄地にいるとわかった場合、捜査を行い、いざ検挙となった時に発生地の警察の捜査員が出張してくるというような形で、より効率的な捜査を実現する狙いがあり、捜査関係者も期待を寄せる。

■ネット上の実行役募集を排除へ

実行役を生まないための対策も打ち出している。警察庁はSNSなどでのパトロールを強化した。ことし9月、警察庁が委託し、ネット上の違法・有害情報の通報を受け付けている窓口の「インターネット・ホットラインセンター」で取り扱う情報の範囲に、いわゆる「闇バイト」などに関する犯罪実行者募集情報を追加。

つまり「闇バイト」などの表現と「受け子」などの表現があった場合、そうした表現の通報を受け付けてサイト管理者に削除を要請していくのだ。さらに、こちらも警察庁からの委託を受けネット上をパトロールするサイバーパトロールセンターが、AIによる犯罪実行者募集情報の検索を開始した。捜査関係者によると、こうした対策によって、すでに多くの投稿に対して削除依頼ができているという。

■「トクリュウ」に関する匿名通報を募集

また先月からは、匿名で事件に関する情報を通報してもらい、容疑者の検挙などにつながった場合に情報料を支払う匿名通報事業の対象も拡大。「トクリュウ」を対象に追加し、犯罪組織の壊滅につながった場合、最大100万円の情報料が支払われることに決まった。

実行役の中には指示役に個人情報を握られ、「家族がどうなってもいいのか」などと脅されている場合も多い。捜査関係者は「グループを抜けたくても抜け出せなくなっているメンバーなどから組織幹部のコアな情報などを通報してもらい、検挙につなげたい」と話す。

このように警察庁はさまざまな形で「トクリュウ」壊滅に向け取り組んでいる。