崩壊寸前の路線バス 「2024年問題」で運転手不足に拍車 今後“大量退職”予想も…「このままではヤバい」【#みんなのギモン】
今、運転手不足により、各地の路線バスが危機にひんしているといいます。危機的状況が有事ではないのに発生しているというのがポイントです。次のポイントを中心に詳しく解説します。
●3万6000人が不足…なぜ増えない?
●「このままではヤバい」訴えたバス会社
地方だけでなく東京郊外でもバスの運転手不足が深刻な事態となっています。
ある平日の夕方、川崎市の向ヶ丘遊園駅前のバス乗り場に行くと、帰宅時間帯で20人以上の長い行列ができていました。電光掲示板には「乗務員不足のため一部路線を臨時ダイヤで運行しております」との表示がありました。
小田急バスのこの路線は、運転手不足のため先月26日から一部のバスを運休しました。この時間帯は本来、だいたい10分間隔でバスが出発することになっているのですが、1本間引かれたためにこの時は24分間、バスが来なかったのです。
この路線はなんとか人員確保のめどが立ち、12日から通常ダイヤに戻ることになりました。ただ、運転手不足でバスの便が減る事態が各地で起きています。
先月、日本バス協会はバス運転者数の今後の推移を公表しました。2017年には13万人以上いたバスの運転手は年々減少し、2030年には9万3000人にまで減る見込みです。そして、路線の維持に必要とされる運転手の人数は今も12万人ほどとされますが、既に不足が出ています。
この問題に拍車をかけているのが、いわゆる「2024年問題」です。2024年からは時間外労働の上限規制や休憩時間の改正が行われるため、運転手の働く時間が今よりも短くなります。
つまり、来年からは路線を維持するためには、運転手の数が今よりさらに必要になるのです。こうしたことから、2030年には3万6000人の運転手が足りなくなるとの試算となっています。
運転手不足の背景には、他の要因もあります。
国土交通省によると、昨年度のバスの運転手の平均年齢は53.4歳だといい、今後、大量に退職者が出ると予測されています。
実際、運転手不足のために全路線廃止を決めたバス事業者も出てきています。大阪・富田林市に本社を構える「金剛バス」は、12月20日をもって15路線すべてを廃止することを決めました。
金剛バス利用者
「困りますよ~! 学校に行ってる子も(多い)。なんとかしてもらわな困りますわ」
先週に行われた協議会で、今後は富田林市など4つの市町村が事業主となるコミュニティーバス方式にする方針が固まったということです。ただ、利用者にとってこれまで通りの便利さが維持できるかは、心配な状況だといいます。
また、自治体も財政が火の車というところが多いです。コミュニティーバス方式にも懸念が残るわけです。
バスの運転手については、待遇面でも課題があります。
国交省のデータでは、バスの運転手の年間所得額は平均399万円となっており、全産業平均の497万円に比べても約2割も低いです。とはいえ、バス会社が待遇を上げようと努力しても、経営自体が厳しいです。2021年度にはバス会社の94%が赤字経営に陥っているといいます。
こういったこともあり、2021年度までの12年間に全国で1万5000キロ以上の路線が廃止されています。
赤字で待遇も上げられず運転手も不足するとなると、路線を廃止せざるを得ない負のスパイラルに陥ります。
神奈川県を中心に運行する京浜急行バスが今年の夏、運転手を募集するためのポスターを掲示しました。「人財不足で、このままではヤバいです」と“どストレート”に訴えています。
この会社でも運転手は足りないといい、逗子駅行きなどの路線の一部運休が続いているといいます。
人事の担当者である京浜急行バス・人事労務課の玉井純課長補佐は「乗務員の数がギリギリであることは間違いなく、来年度以降、最大で数十名の運転手が足りません」と話しています。
そのため、このポスターを使ってキャンペーンをしたところ、これまで参加者がゼロの日もあった会社説明会に、10人近くが来るようになったといいます。
どれだけ路線バスが地域に欠かせないのか、京浜急行バスの新人運転手、藤沼天太さん(22)に同行させてもらいました。
藤沼さんは小さいころから乗り物が好きで、“人の役に立ちたい”と2020年4月に入社し、今年8月から指導者とともに乗務しています。
京浜急行バス 藤沼天太さん(22)
「責任感はすごく感じます。高齢者の方はちょっと転んだだけでも結構大きなけがになったりするので、緊張してハンドルを握るんですけど、乗せたお客様が目的地で降りて『ありがとうございました』って言ってくれるのをきくと頑張ろうって思える」
藤沼さんは“自分たちがやりがいをアピールすれば、運転手は増えるかもしれない”と話していました。
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自由に気軽に移動できるということは、生活の質そのものにも直結します。“人々の足”となる公共交通機関が崩壊することのないように、新しい技術も含めてあらゆる手を打つ必要があります。
(2023年10月9日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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