3・11大震災シリーズ 悔い~震災12年 あなたを想うとき③~
福島県・大熊町。津波に飲まれ、行方不明の幼い娘を捜し続ける男性がいます。避難先から6時間以上をかけ、故郷で捜索する日々。しかし、娘との思い出が残る自宅や捜索場所は、除染で出た汚染土壌を保管するエリアに指定された。それでも…。そして、愛する娘は父のもとへ――
津波に飲まれた娘…。2016年、この卒業式にいるはずでした。
「木村 汐凪(ゆうな)」
木村紀夫さん
「はい」
校長
「卒業証書、木村汐凪」
娘の笑顔をもっと、もっと、見たかった。
木村紀夫さん(57)。父と妻、そして、二女の汐凪ちゃん(当時7)の3人を、震災で失いました。
木村紀夫さん
「津波がきたらどうしようかという話を、子どもらに教えられてなくてやっぱりそれは、今一番こういうことになって後悔している部分で」
津波に飲まれた娘を、立ち入りが制限された故郷、福島県大熊町で、捜し続けていました。
妻・深雪さん(当時37)は沖合で、父・王太朗さん(当時77)は家の近くの田んぼで、亡くなっているのが見つかりました。しかし、汐凪ちゃんだけは見つかっていません。
時間を見つけては避難先から車で6時間以上かけ娘を捜す日々――。
木村紀夫さん
「汐凪を見つけたいということももちろんあるし、それと同時に、あそこで捜すこと自体が、汐凪とのつながりだと思っているので」
避難先の長野県で、生き残った長女・舞雪(まゆ)さんと、2人の食事。
木村紀夫さん
「できはいかがですか?」
舞雪さん
「うん」
末っ子で、家族みんなから愛されていた汐凪ちゃん。
震災から5年9か月。木村さんに、一報が入りました。『子供用のマフラーが見つかった』と。
木村紀夫さん
「娘に『こういうマフラー見覚えあるか』って聞いたら、『おそろで持っていた』って。じゃあ『もしかしたら、汐凪の骨かな』って」
泥を払うと、こぼれ落ちた小さな骨。汐凪ちゃんの首の骨でした。
木村紀夫さん
「『申し訳ない』っていう思いがね…。本当に見殺しにしちゃったようなものなので…」
いつも2人、仲良しだった姉妹。
2021年、舞雪さんは二十歳になりました。
あの日、離ればなれになった妻と重なります。
木村さんの自宅や捜索場所は、除染で出た汚染土壌を30年保管するエリアに指定されました。
復興のために不可欠な施設。わかっていても、娘とのつながりがあるこの土地は手放せない。
木村紀夫さん
「自分の中で、息苦しさみたいなのがあるんですよね。しんどいんですよ」
具志堅隆松さん
「自分の親や子どもを捜したいというのは、人間にとってごく普通のことです。遠慮を感じる必要は全くないと思います」
約40年、沖縄で戦没者の遺骨を捜し続ける具志堅隆松さん。その言葉が背中を押しました。
2022年1月2日、福島県大熊町。
具志堅さんも、沖縄から参加し約3年ぶりの捜索。
捜索開始から20分…。
木村紀夫さん
「今、お父さんが掘り出すからな」
具志堅隆松さん
「大たい骨だ。見つかった。よかった! 汐凪ちゃん帰れるよ」
当時、町で唯一の行方不明者だった汐凪ちゃん。
おかえり。
木村紀夫さん
「奇跡ですよ」
愛する娘を初めて自分の手で掘り出しました。
“悔い”は消えない。
だから、あなたを想い続ける…。
2023年3月5日放送 NNNドキュメント’23『3・11大震災シリーズ(102) 悔い~震災12年 あなたを想うとき~』をダイジェスト版にしました。
「木村 汐凪(ゆうな)」
木村紀夫さん
「はい」
校長
「卒業証書、木村汐凪」
娘の笑顔をもっと、もっと、見たかった。
木村紀夫さん(57)。父と妻、そして、二女の汐凪ちゃん(当時7)の3人を、震災で失いました。
木村紀夫さん
「津波がきたらどうしようかという話を、子どもらに教えられてなくてやっぱりそれは、今一番こういうことになって後悔している部分で」
津波に飲まれた娘を、立ち入りが制限された故郷、福島県大熊町で、捜し続けていました。
妻・深雪さん(当時37)は沖合で、父・王太朗さん(当時77)は家の近くの田んぼで、亡くなっているのが見つかりました。しかし、汐凪ちゃんだけは見つかっていません。
時間を見つけては避難先から車で6時間以上かけ娘を捜す日々――。
木村紀夫さん
「汐凪を見つけたいということももちろんあるし、それと同時に、あそこで捜すこと自体が、汐凪とのつながりだと思っているので」
避難先の長野県で、生き残った長女・舞雪(まゆ)さんと、2人の食事。
木村紀夫さん
「できはいかがですか?」
舞雪さん
「うん」
末っ子で、家族みんなから愛されていた汐凪ちゃん。
震災から5年9か月。木村さんに、一報が入りました。『子供用のマフラーが見つかった』と。
木村紀夫さん
「娘に『こういうマフラー見覚えあるか』って聞いたら、『おそろで持っていた』って。じゃあ『もしかしたら、汐凪の骨かな』って」
泥を払うと、こぼれ落ちた小さな骨。汐凪ちゃんの首の骨でした。
木村紀夫さん
「『申し訳ない』っていう思いがね…。本当に見殺しにしちゃったようなものなので…」
いつも2人、仲良しだった姉妹。
2021年、舞雪さんは二十歳になりました。
あの日、離ればなれになった妻と重なります。
木村さんの自宅や捜索場所は、除染で出た汚染土壌を30年保管するエリアに指定されました。
復興のために不可欠な施設。わかっていても、娘とのつながりがあるこの土地は手放せない。
木村紀夫さん
「自分の中で、息苦しさみたいなのがあるんですよね。しんどいんですよ」
具志堅隆松さん
「自分の親や子どもを捜したいというのは、人間にとってごく普通のことです。遠慮を感じる必要は全くないと思います」
約40年、沖縄で戦没者の遺骨を捜し続ける具志堅隆松さん。その言葉が背中を押しました。
2022年1月2日、福島県大熊町。
具志堅さんも、沖縄から参加し約3年ぶりの捜索。
捜索開始から20分…。
木村紀夫さん
「今、お父さんが掘り出すからな」
具志堅隆松さん
「大たい骨だ。見つかった。よかった! 汐凪ちゃん帰れるよ」
当時、町で唯一の行方不明者だった汐凪ちゃん。
おかえり。
木村紀夫さん
「奇跡ですよ」
愛する娘を初めて自分の手で掘り出しました。
“悔い”は消えない。
だから、あなたを想い続ける…。
2023年3月5日放送 NNNドキュメント’23『3・11大震災シリーズ(102) 悔い~震災12年 あなたを想うとき~』をダイジェスト版にしました。