「弟に真の自由を…」 57年前の事件“やり直し裁判”初公判 袴田さんの姉が無罪主張
57年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑判決を受けた袴田巌さんの再審(=やり直し裁判)が始まりました。27日の初公判で袴田さん側は、改めて無罪を主張しました。
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事件から57年、無実を訴え続ける袴田巌さん(87)を支えてきた、姉のひで子さん(90)。27日朝、自宅前で取材に応じました。
袴田巌さんの姉・ひで子さん(90)
「やっと始まる。57年たたかって、やっと再審開始になりまして。巌は無実だから、無罪ということを望んでおります」
27日、死刑判決を受けた袴田さんが無罪であるかを争う再審の初公判が行われました。袴田さんは長年収容されていた影響で十分に会話ができないことから出廷の免除が認められ、ひで子さんが補佐人として出席。袴田さんの無実を訴えました。
袴田巌さんの姉・ひで子さん(90)
「弟の代わりに無実を主張します。弟に真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます」
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事件が起きたのは1966年6月。静岡県の旧清水市でみそ製造会社の専務宅が全焼。焼け跡から刃物で惨殺された一家4人の遺体が見つかりました。
逮捕されたのは、会社の住み込み従業員で元プロボクサーの袴田巌さん、当時30歳。袴田さんが裁判で一貫して無実を主張する中、事件から1年2か月後に会社のみそタンクの中から犯行時の着衣とされる“5点の衣類”が見つかりました。この5点の衣類が決め手となり、1980年に袴田さんの死刑が確定したのです。
大きな動きがあったのは2014年。静岡地裁が裁判のやり直しを決定しました。
5点の衣類について、血痕の色やDNA型の鑑定結果などから袴田さんのものではないとして、捜査機関による“ねつ造”の疑いがあるとまで言及したのです。
2014年、袴田さんは逮捕から48年ぶりに釈放されました。このとき78歳になっていました。
弁護団は、5点の衣類にはもともと多くの疑問点があったといいます。
弁護団 小川秀世弁護士
「使っているみその醸造タンクから(5点の衣類が)出てきた。犯人が隠すようなところではない。袴田さんが持っていた衣類に類似して、袴田さんのものであるかのような工作もされた。右肩の傷とか」
弁護団が着目したのが、5点の衣類の色です。1年以上みそに漬かったものの、証拠写真の衣類には血痕の赤みが鮮明に残っていたのです。みそ漬け実験などを繰り返し、長期間みそに漬かると血痕は黒く変わるはずだと主張。2014年の再審を認める決定につながったのです。
しかし、検察が決定に不服を申し立てたことで審理はさらに長期化。2018年、東京高裁は一転、再審を認めず、判断は最高裁へ持ち越されました。
しかし、最高裁は審理に不十分な点があるとして東京高裁に差し戻しました。そして、今年3月、東京高裁は検察の抗告を棄却。今回は検察が特別抗告をせず、裁判のやり直し(=再審)が決まったのです。
袴田巌さんの姉・ひで子さん(90)(今年3月)
「(巌さんにむかって)今ね、ニュースが入ってね、検察が特別抗告を断念したって。完全に無罪、完全に勝った。よかったね、あんた。あんたの言う通りになった、もう安心だよ」
そして迎えた再審の初公判。検察側は冒頭陳述で袴田さんの有罪を求める立証を行いました。