【特集】クマ被害相次ぐ⁉ 県の対応と私たちがすべきこと "気を付けて"ではなく「入るな!行くな!」
県内でクマの被害が相次ぎました。鹿角市十和田大湯の山林では行方がわからなくなった男性を捜索していた警察官2人がクマに襲われけがをし、三種町では田んぼで作業をしていた男性が被害に遭いました。
鹿角市の山林では行方不明だった男性の搬出は20日もできず、警察などは当面クマが捕獲用のおりに入るのを待つ方針です。
進藤拓実記者
「現場周辺は一体が入山禁止となっています。林道の入り口には警察車両も待機しています」
警察官2人が相次いでクマに襲われた鹿角市十和田大湯の山林では20日も警戒が続きました。
警察と消防によりますと現場近くでは15日にタケノコ採りで来た青森県の64歳の男性の行方が分からなくなっていました。警察などが捜索したものの見つりませんでしたが、18日の午前9時半ごろ、山に入った人から「男性が倒れている」と警察に通報がありました。
警察は18日正午ごろから消防など合わせて9人で山に入り、午後1時前には倒れていた男性のもとにたどり着いていました。
倒れていたのは行方不明だった男性とみられ、その場で死亡が確認されています。
9人で搬送を始めた直後に体長1メートルほどのクマ1頭がとびかかってきたということで、25歳の男性警察官が頭や顔、両肩をひっかかれるなどして大けがをしました。
また、45歳の男性警察官も両腕や胸などをひっかかれるなどしてけがをしています。
クマがまだ近くにいる可能性もあり、安全が確保できないなどとして警察などは現場に近づけていない状況で、まだ男性を搬送できていません。
警察や鹿角市は当面、現場近くに1つ設置したハチミツなどが入った捕獲用のおりにクマが入るのを待つ方針です。
鹿角市農地林務課 北方康博課長
「猟友会からは、なかなか広い地区でクマのおりの効果があるかどうかは不明だけれども、継続することで、やむを得ないでしょうというふうなそういうアドバイスです」
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警察官が相次いでクマに襲われたことを受け、県も対応を急ぎました。
18日夜に、緊急の対策会議が開かれ、佐竹知事や県警察本部の幹部が出席しました。
会議では、県警の荻原勲生活安全部長が当時の状況などを報告しました。襲われた2人のうち45歳の警察官はヘルメットやすね当てなどをつけていましたが、25歳の警察官は防具を装備していなかったということです。警察は、当初の目的は倒れている男性の捜索と搬送だったため、防具をつけていない警察官もいたと説明しています。
荻原勲生活安全部長
「昨年から尋常じゃない数の被害が出ておりまして、今回も現場がクマがいるような場所ということで、しっかりと体制をとって準備もしていくべきだったと反省しております。今回の件を重く受けて、今後は住民の安全に加え、自分たちの安全を考えて対策をとっていきたい」
県の担当者からは現場周辺にバリケードを設置して入山禁止にしたことや、捕獲用のおりを設置したことが報告されました。佐竹知事は県内だけでなく県外からも山菜採りに来る人がいるとして、近くの県と連携して注意喚起をしていく考えを示しました。
佐竹知事
「山形、宮城、岩手、青森に対しても、当然うちの方からも行く可能性あるし、あっちからも来るから、広域で注意喚起やるように、すぐ注意して隣県にお願いして」
県は、入山禁止の場所には、積極的に人を襲うなどの危険性の高いクマが生息している可能性があるとして、立ち入らないよう強く呼び掛けています。
県自然保護課 近藤麻実さん
「入山禁止になっているエリアには立ち入らない。というのは確実に言えることです。今回の事故現場は入山禁止になっていなかった場所ですけれども、入山禁止になりました。」
【気を付けていってね、ではなく「入るなと、行くなと」いうことです】
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ここからはクマの取材を続けている川口記者とお伝えします。鹿角市と小坂町は今回の被害を受けて入山禁止エリアを新たに設置したり範囲を広げたりしています。山菜採りが最盛期を迎えていますが、こうした対応の背景には何があるのでしょうか。
川口記者解説
今回の被害を聞いて、8年前、鹿角市十和田大湯の山林にタケノコ採りに入った男女4人が次々とクマに襲われ死亡したことを思い浮かべた方が多いと思います。
鹿角市はその時と同様に今回の現場を「危険度が高い」として当面『入山禁止』としました。
クマによる被害が発生した場合、県は現場を調べて、被害者への聞き取りを可能な限り行い、原因の特定や分析をしています。
その県の分析によりますと、ほとんどはクマと人が互いの存在に気付かずに遭遇する『鉢合わせ』ですが、まれに人に積極的に攻撃してくる危険なクマの存在も確認されています。
そのようなクマの行動としては
・収穫した山菜を奪う。
リュックサックなどの持ち物を奪う。
・鈴やラジオで音を鳴らしても近づいてくる。
執拗に後をつけてくる。
などがあります。
人に積極的に攻撃してくるクマが確認されている「仙北市玉川」と「鹿角市八幡平」のエリア。
2016年に次々と人がクマに襲われた「鹿角市十和田高原」の3か所は毎年入山禁止にされています。
今回の現場でも、警察官2人が倒れていた男性に近づいた際に、クマに襲われた状況などから、
通常とは異なる対応が必要だと判断され「入山禁止」の措置が取られました。
◆◆②今後の注意点◆◆
❶まずは「入山禁止」の場所には決して立ち入らないでください
➋単独行動は避けてできるだけ複数人で行動してください、
そして危険なクマがいる場合は周囲への情報共有が重要です。
➌持ち物が奪われたりクマに後をつけられたりしたなど、積極的に人に攻撃してくるクマと遭遇した場合、すぐに警察や市町村に連絡するよう県は呼びかけています。
一方で、これとは別に今年も人の生活圏でのクマの被害が起きています。
18日夕方、三種町森岳の田んぼで、近くに住む61歳の男性が体長約1メートルのクマ1頭に右足をかまれけがをしました。
男性は田んぼに水を張る作業をしていたところ、近くにクマの足跡を見つけ、たどっていたところ林から出てきたクマに襲われたということです。現場は三種町地域福祉センターから北に300メートルほどにある田んぼで、近くには医療機関や住宅などもあります。
また秋田市新屋寿町では14日夜、雄物川沿いにある「雄物川水辺の広場」で体長1メートルほどのクマ1頭が目撃され、16日に捕獲用のおりが設置されました。そこから北に3キロほどの秋田市新屋町字砂奴寄では16日午前、複数の養蜂箱が壊されているのが見つかっています。箱の爪痕などからクマによる被害とみられ午後に近くの林の中に捕獲用のおりが設置されました。
17日の午前8時半過ぎ、猟友会のメンバーが林の中に設置したおりに体長70センチほどのクマ1頭が入っているのを確認したということです。
ただ、秋田市は14日夜に目撃されたクマかどうかはわからないとして、引き続き注意するよう呼び掛けています。
クマが目撃された現場近くの住宅街では、去年10月、相次いで4人がクマに襲われけがをしています。
秋田市はおりの設置と水辺の広場への通路の通行止めは当面継続することにしています。
クマの脅威は山の中だけにとどまらず、今年も私たちの日常生活に影響を及ぼす異常事態となっています。今年は本来なら冬眠しているはずのかなり早い段階から集落周辺でクマが目撃されています。
川口記者
早い時期の目撃には、少なからず去年の大量出没の余波が影響しているものと考えられます。
目撃されたり捕獲されたりしたクマの大きさは1メートル未満が多いのが特徴です。日常的に人里に近いエリアで活動しているものとみられます。
人口減少や耕作放棄地の増加などにより人の活動が減少するにつれてクマの分布が拡大し、人の生活圏と重なりあいクマが集落や市街地まで侵入しやすい状況が生まれています。
人の生活圏での被害を減らすために、県は
①木の刈りはらいなどで見通しの良い環境をつくり、クマが集落に近寄りづらくする。
②ゴミは放置せずに農地は電気柵で囲うなど、人里のものを食べさせないといった対策をとるよう呼びかけています。
クマは捕獲に国から補助金が出る指定管理鳥獣に追加されましたが、県はさらに市街地での猟銃の使用を認めるよう国に働きかけています。
こうした行政の対策の一方で、自分自身を守るために県民一人ひとりがこれまでの認識を改め、クマを正しく知ることも必要です。ますは・クマを寄せ付けない・クマに出合わないための行動を。
ABS news every.5月20日放送