三重・志摩で激減…「伊勢エビ」に何が? 水揚げ量が突如“100倍”の場所も
“日本有数の伊勢エビの産地”三重の志摩で異変が起きています。水揚げ量が激減し、価格が上昇しています。一方、突然、伊勢エビが100倍近くとれるようになった場所もでているそうです。一体、何が起きているのでしょうか。
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三重県志摩市の和具漁港が朝焼けに染まるころ、漁船から水揚げされたのは、今が旬の高級食材「伊勢エビ」です。年末年始に向け需要が高まる時期ですが、年々、水揚げ量が減少しているというのです。
――今日、とれてますか?
志摩市の漁師
「いやー少ない」
――今日のとれ高どうですか?
志摩市の漁師
「全然だめ。もう5~6年前から前兆が」
ここ10年、志摩市で伊勢エビが最もとれていたのは、2015年の約130トンでした。去年は約71トンで、ほぼ半減しました。水揚げ量が減ることで、影響を受けるのが価格です。
伊勢エビのお造りなどを提供する料理旅館「活鮮旅館 志摩半島」の太田剛代表は「やっぱり仕入れ値段の高騰で、利益はその分、減ってますから」と話します。仕入価格が去年と比べ、約3割高くなっているといいます。昔から販売価格を3500円ほどにしていたため、今はほとんど利益がない状況だということです。
――伊勢エビないと困りますか?
活鮮旅館・志摩半島 太田剛代表
「あー! 絶対ないといけません!」
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なぜ、伊勢エビの水揚げ量が減っているのでしょうか。40年以上、伊勢エビをとってきた漁師は――
和具海老網同盟会・小川吉高会長
「瀬に生えてた海藻がなくなり始めてから、漁獲が減ったような気がするけどね」
原因の1つとして考えられているのが「磯焼け」です。伊勢エビの研究を行う三重大学・松田浩一教授によると、通常、志摩市周辺の海底には、伊勢エビが小さいころに隠れ家として不可欠な海藻が生い茂っているといいます。しかし、海水温が上がって海藻が枯れたことで、“天敵に見つかり、食べられてしまう”というのです。
和具海老網同盟会 小川吉高会長
「生まれたエビがここへ帰って来られる状況じゃないのが、原因じゃないかと思っとるんやけど」
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志摩市で伊勢エビがとれづらくなっている中、3年前から急に伊勢エビがとれるようになったのが福島県いわき市です。福島県水産海洋研究センターによると、2022年9月末までの水揚げ量は5585キロで、5年前の2017年の59キロと比べると、100倍に迫ります。
そこで、いわき市の上野台豊商店では、新名物にしようと商品開発しました。
上野台豊商店 上野台優社長
「伊勢エビを使った『ぜいたくセット』。ピザとパスタソースと、グリルになりますね」
その名も、究極の「磐城イセエビ」セット(4500円)です。「伊勢」の地名の前に「磐城」がついています。
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なぜ急にいわき市で、伊勢エビがとれるようになったのでしょうか。伊勢エビは温かい水温を好み、福島県水産資源研究所によると、生息地の北の限界は「茨城あたり」だったといいます。
しかし、“温暖化の影響などで水温が上昇し、北上してきたのでは”ということです。ただ、海水温の上昇は東北などでとれるサンマやサケなどの減少につながるため、注視が必要だとしています。