長万部町の水柱は「低温泉水」塩害に騒音で町は困惑 突然“温泉”が湧き出したら…
北海道長万部町の水柱が、“低温泉水”であることが明らかになりました。国内では、突如として温泉が噴き出たことにより、恩恵を受けた人もいる一方、迷惑をこうむっている人もいます。
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絶え間なく噴き出ては、地面に降り注ぐ水。北海道長万部町で水の噴出が始まって、2週間あまりがたちました。
謎に包まれていた水柱ですが、分析の結果、温度は21.5℃、ナトリウムやマンガンなどの温泉成分を含む“低温泉水”であることが明らかになりました。
突如湧いて出た“地下からの恵み”かと思いきや、町は――
北海道長万部町 木幡正志町長
「(ガスなどが混ざり)温泉水として使えない。観光目的にもっていくという考え方はありません。一番大切なのは、音を消そうと」
水が噴き出た当初から問題となっているのが、騒音です。どれほどの音なのか計測すると、78.6デシベルでした。車通りが多い幹線道路沿いと同じくらいという結果になりました。
町は対策として、水柱のまわりに高さ1.8mの防音シートを設置しましたが、目立った効果はなく、今後はシートの高さを15~20mに引き上げるなどの対策をするとしています。
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さらに温泉と分かった今、新たに問題となっているのが、温泉水に含まれるナトリウムなどの成分による塩害です。
住民
「ここら辺も草も生えるはずなんだけど、枯れてしまって」
事態が長期化した場合、鉄製の物がさびてしまう恐れもあり、住民は不安を抱いています。
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突如として温泉が噴き出たことにより事態が一変した場所は、他にもあります。
2011年、福島・いわき市の住宅街で、アパートの敷地から大量の温泉が溢(あふ)れ出ました。その量は、当時1日に約230トンでした。その量、当時1日に約230トン。
アパートを所有する我妻千恵さん(2011年)
「(建物の地盤が)陥没しているので、ちょっと穴を掘ってみたら、何か湧き出ている」
この現象は、東日本大震災のあとに始まったといいます。
それは、あれから11年たった今も──
アパートを所有する我妻千恵さん
「温泉の量は変わらないと思うんですけど、(以前と)同じくザーっと出てますね」
温泉の蒸気は床下から部屋に入り、冬場は激しい結露が発生。天井が腐敗するなどして抜け落ちてしまい、賃貸に出せない部屋もあるということです。
温泉はいつ止まるのか、専門家に聞きました。
産業技術総合研究所・地質調査総合センター 金子信行さん
「突然ぱっと止まるということは、あまりないかもしれない。徐々に止まっていく、(水が)少なくなっていく形だと思います」
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一方、自宅に湧き出た温泉に恩恵を感じている人もいます。
千葉・柏市に住む女性の自宅では、井戸に繋がっているという庭の蛇口をひねると、温水が出てきました。温度を計測すると37.9℃で、“温泉”と推定されるということです。
岡田みえ子さん
「いや~もう、初めは本当に驚きましたね。だって水のはずが、何でこんな熱いのが出るのって」
女性がこの場所に引っ越して来たのは10年前です。その前から井戸はありましたが、以前住んでいた人によると、お湯は出ていなかったといいます。
趣味はガーデニングということもあり、庭の草花にこの“温泉水”をあげていますが、目に見える害は出ていないといいます。体が冷えた時は、足湯などを楽しむこともあります。
“温泉”が出る理由は未だ不明ですが、「その恩恵を楽しんでいる」と話していました。