戦争犯罪の疑い、プーチン大統領の“逮捕なし” 「困難だ」…モンゴルが義務を無視したワケ 専門家「ICCの権威に疑問符」
戦争犯罪の疑いでICC(国際刑事裁判所)から逮捕状が出ている、ロシアのプーチン大統領。3日までICC加盟国のモンゴルを公式訪問しましたが、逮捕しなかったことが問題視されています。モンゴルの事情や裏にあった両国の動き、ICCの課題を考えます。
「『プーチン大統領が逮捕されない』。今、報道などで問題視されています」
「プーチン大統領は3日までモンゴルを公式訪問していました。本来なら逮捕される立場ですが、モンゴルのフレルスフ大統領と笑顔で握手を交わし、女の子から花束を受け取るなど、歓迎ムードでした。逮捕されないまま帰国しました」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「プーチン大統領には去年3月、124か国・地域が加盟するICC(国際刑事裁判所)から戦争犯罪の疑いで逮捕状が出ていて、加盟国であるモンゴルには、本来であれば逮捕する義務がありました。ただ今回、モンゴルが無視した形になりました」
小栗委員長
「モンゴルはロシアと中国に挟まれていて、ロシアにとっては最近重要なパートナーとしている中国への経由地になっています。モンゴルもエネルギーをロシアに頼っていて、石油では約9割を依存しているなど、重要なパートナーです」
「それだけに、モンゴルは『申し訳ないが、我々の手は縛られているようなもので逮捕は困難だ』と述べていると、アメリカメディアは伝えています」
藤井キャスター
「つまり、プーチン大統領は事前にモンゴル側と話をつけていたということなんですね」
小栗委員長
「そうです。ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は『訪問前に両者の間では、逮捕しないという確約があった』としています」
「さらに『今回逮捕なしにモンゴルを訪問できたことは、プーチン大統領にとっては国内向けに存在感を高め、国際的にも孤立していないとアピールする効果があったと考えているだろう』と、廣瀬教授は分析しています」
藤井キャスター
「今後もプーチン大統領は、訪れる国によってはその国がICCに加盟していても、逮捕されない可能性もあるということですね?」
小栗委員長
「国際法が専門の同志社大学の浅田正彦教授によると、ICCとしては今後も加盟国の協力なしに逮捕は難しいということです」
「ICCには逮捕状は出せても、逮捕するための警察組織がないので、逮捕するかどうかは加盟国に委ねられているからです。仮に今回のように逮捕しなくても、加盟国が罰せられることはありません」
「浅田教授は『今回の件でICCの権威に疑問符が付いたことは間違いない。今後このようなことが続かないためにも、ICCはモンゴルに説明責任を果たさせること、また加盟国全体に対して義務を果たすよう強いメッセージを発信することが求められる』と話します」
加藤清史郎さん(俳優・『news zero』水曜パートナー)
「ロシアからの圧力もあったのかもしれないですし、モンゴル側の事情も理解できますし、本当に難しい話だなと思います」
「ただ、ロシアとウクライナで起きている今の惨状を終わらせることがとにかく一番です。プーチン大統領を逮捕できなかったという前例ができてしまったことで、今回のようなことが続くと『ICCは何のためにあるの?』と思われてしまいます」
「これをきっかけにICCがどう動くのか、どんな発表があるのか、きちんと見ていきたいです」
(9月4日『news zero』より)