被災から40日目 仮設住宅の入居始まる “自主避難”が続く地域では
9日で地震発生から40日目。
自宅が倒壊し、妻・由香利さんと長女・珠蘭さんを亡くした楠健二さん。思い出の品を懸命に捜しては持ち帰る生活を続ける中、7日、新たにスマホと腕時計が楠さんの元に返ってきました。
妻と娘を亡くした楠健二さん(55)
「見つかった。時計と携帯が。これが僕ので、これが妻ので、これが時計です」
時計は去年4月の誕生日に妻・由香利さんから贈られたものです。
妻と娘を亡くした楠健二さん
「全然汚れてなかった。ずっと動いていた。曜日もあっていたし。飲みに行った先で突然、プレゼント渡されて。『プレゼント、ちゃんと時間守ってね』って言われた感じで。(妻に)常々怒られていたから、俺。それが楽しかったのかなって思うんだよね」
ほかの人の助けもあって見つかったと感謝の言葉を口にする楠さん。しかし…
妻と娘を亡くした楠健二さん
「必死になって捜しているけど、見ちゃうとすべて思いだしてしまうから、(時計は)しばらくつけられないですね。携帯も見つかったけど、中身は見てないですね」
楠さんは妻と娘の四十九日法要をした後…
妻と娘を亡くした楠健二さん
「四十九日なので、いったんちょっと戻らないとまずいかな。1回戻って、また月末あたりにこっち来て」
また戻ってきて捜し続けたいと話しています。
今もほぼ全域で断水が続く珠洲市。避難所となっている小学校のグラウンドでは40戸の仮設住宅が完成し、9日から入居が始まりました。
自宅が全壊したという親子も避難所生活に一区切り。
仮設住宅の入居者
「今まで全然水も出ないから、(ここは)お湯が出るからね」
入居したのは2DKの住宅です。
木のぬくもりが感じられる室内には、冷蔵庫や洗濯機などが備え付けられていて、壁や天井には断熱材が使われています。
――部屋の暖かさは
仮設住宅入居者
「暖かいし、もう部屋入っただけで暖かい」
仮設住宅に入居するのは、市が高齢者などを優先して選定した40世帯102人です。
新たな環境で生活を始める人がいる一方、地域で支え合いながら避難生活を続ける人もいます。
志賀町の稗造地区にある集会所では、今も15人が身を寄せています。
自治体の避難所には指定されていませんが…
東小室地区 長根尾修区長
「(志賀町の)各箇所に避難所あるんですけど、それだけでは収容していただく人が入れない。行政へ連絡したところ『わかった』と。『自主避難所を開設してもらってもいいですよ』と」
地域の区長をつとめる長根尾修さんが自治体にかけあいました。
避難しているのはこの地区の住人のみ。食材は地域で持ち寄り、料理当番など役割を分担しながら生活しています。
避難者
「地元を離れたくない思いが強い。知らないところに行ってもなじめないと思うし、それが一番大きい」
――お互いに知っている関係の人だから安心できるというのはありますか
避難者
「それはあります。夜もここ(部屋)で一緒にお布団持ち寄って寝ているんです。すごく安心します」
地域の結びつきが強いからこそ成り立つ暮らし。
地域の区長は「こんなに大きい地震に遭って考えることは、老若男女にかかわらずコミュニケーションをとることが、生活にとって一番大事なこと」と話しました。