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「急に涙が出てくる」“産後うつ”になった男性 仕事と両立で心身に負担……医師「育児する人として両方の支援が大切」

2024年8月3日 10:30
「急に涙が出てくる」“産後うつ”になった男性 仕事と両立で心身に負担……医師「育児する人として両方の支援が大切」

子どもが生まれた後、メンタルの不調によっておこる、産後うつ。女性だけでなく男性も“産後うつ”になると言われています。次女が生まれた5か月後にうつの診断を受けたという方に話を伺いました。(日本テレビアナウンサー・滝菜月)

「何もないところで急に涙が出てくることや、説明のしようが無い感情や胸の痛みが発生し始めていた。このまま自分がつぶれてしまったら、家族がどうなってしまうんだろう、お金の面含めどう生活していくのかと考えると怖かった」

こう話すのは現在4歳と2歳の娘の子育てをしている斉藤圭祐さん(35)。妻が長女を妊娠した時から、助産院へ毎回付き添い、産後も授乳以外はなるべく自分もおこないたいと積極的に育児にとりくんでいました。

しかし、2人の子どもの夜泣きの対応に自営業の仕事の転換期が重なり、徐々に余裕がなくなっていったといいます。

「かなり余裕がない状況でこどもに接するとすごく怒ってしまい、(今までは)こんなに感情的じゃなかったのに…と思いながら子どもにあたってしまった後の罪悪感や嫌悪感が凄くつらかった」

国立成育医療研究センターによると、斉藤さんの様に子どもが生まれた後1年間で、精神的な不調のリスクがあると判定される父親は9人に1人、11%。母親が10.8%なので、ほぼ同じ割合です。

しかし、街で夫婦に男性の産後うつについて聞くと……。

男性「知らなかったです」

女性「(男性も産後うつになることについて)ほんとに? 子育てをしてみて産後うつって(出産による女性の)身体の不調が大きいという実感があったので、男性は出産がないのにどうして産後うつになるのかな…と想像がつかない」

産婦人科医で産後のメンタルヘルスに詳しい平野翔大さんによると、「女性の産後うつは、産後のホルモン減少によって気分が落ち込んだり不安になったりする“マタニティブルー”が要因の一つ。しかし、産後時間が経ってからメンタルヘルス不調になる女性も多く、その場合は社会的要因が大きい」とのこと。

「男性にはマタニティブルーはないものの、女性と同じように、育児に対する不安や仕事と育児の両立のために心身の負担が増える中で産後うつが生じることが多い」と言います。

「今まで男性は育児に携わる割合が現在より低かった為、産後うつという問題はあまり認知されてきませんでした。しかし、男性の育児参加が増えてきた昨今、昼は仕事、帰ったら夜泣きの対応、また次の日は仕事という日々を繰り返す方も増えてきています」

また、パートナーどちらかが産後うつになると、もう一方も産後うつになるリスクが高まるということが多くの研究で言及されているため「パパとママ、分けて考えるのではなく、“育児をする人”として両方が支援されていくことが大切」と言います。

そんな中、横浜市では新たな取り組みとして、男性限定の子育てセミナーが開催されました。

参加したパパ達は、子育てに関する講演を聞いたり、育児の悩みや疑問を話し合ったりしていました。参加された方に話を聞くと……。

「男性のみのイベントはなかなかないので、男性同士の場があるってすごくいいなと思った」

今回の様な男性限定の育児イベントはまだあまり多くなく、育児に関する悩みを話す場が見つからず困っていたという声も。

こちらの参加者は8か月の育休を取得する中で社会からの孤立を感じていたといいます。

「ちょっとしたことでイライラして妻にキツく接してしまったことがあった。振り返ってみると、自分が社会から離れた孤立感からくる不安でイライラしたんじゃないかと思う。うつまではいかないけど精神的に不安定になった時期があった」

「(今回のイベントで)モヤモヤしていることを吐き出せたことで気持ちが楽になったのが一番大きい。他の方も同じ悩みを持っていることがわかった」

平野医師によると「心情や不安を経験者やパートナーに共有することを必ず日々行うことが大切」だといいます。

オンラインカウンセリングを受けることで産後うつから徐々に回復していったという斉藤さんはこう話します。

「自分一人で何とかしなくていい。夫婦だけでやりきる必要はないし、(周りを頼ることは)悪いことじゃない。可能なら親御さんや町の子育てセンターや制度サービスを頼る。自分の状況を共有することが大事だと思う」