妊娠中から育児中まで…孤立を防ぐ「伴走型」支援とは? 産後うつなど防ぐ狙い
妊娠中や育児中の孤立を防ぐため、国が導入しようとしている「伴走型」と呼ばれる子育て支援。独自の「伴走型」の支援を先行して行っている渋谷区の取り組みを取材しました。
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今月、東京・渋谷区で行われていたのは、助産師による生後3週間の新生児訪問です。
助産師
「こんにちは」
生後3週間の子の母親
「こんにちは。おひさしぶりです」
助産師
「どうですか体重?」
生後3週間の子の母親
「2週間健診に行ったときに、退院日から日割りするとマイナス26と言われて。上の子もそうだったんですけど、授乳始めて10分たたないくらいで寝落ちしちゃってたんですね、この子が。多分ちゃんと飲めてない」
赤ちゃんの体重が、平均より少しだけ軽いというお母さんの相談を受け、早速、授乳指導です。
助産師
「ちょっと角度を変えたんですよ。そうするといつもより、なめらかな感じになったと思う。それをやってくれたほうがいいかな、ちょっとかじってるので」
生後3週間の子の母親
「そう、右はかじる。左はかじらないみたいで」
助産師
「上手にできてるね」
母親が孤立しやすいとされるのは、妊娠時から子どもが2歳になるまでの間と言われています。そのため、産後うつなどを防ぐために、助産師が渋谷区内すべての赤ちゃんがいる家庭を訪問して、相談に乗る取り組みをしています。
生後3週間の子の母親
「直接お話ができたり、授乳のちょっとしたポジションとかを直接、見ていただけるというのはすごく心強いので、訪問していただけて、すごくありがたいです」
こうした継続的な子育て支援は、フィンランドで始まり「ネウボラ」と呼ばれ、渋谷区では、妊娠から出産した後の育児まで、母親ごとにずっと同じ保健師が相談に乗り、その後も子どもが18歳になるまで、“伴走しながら”支援します。
政府はこの「伴走型支援」を全国にも広げようと、補正予算で、10万円の給付と組み合わせた新たな仕組みを盛り込みました。
加藤厚労相
「妊産期から出産・子育てまで一貫して、支援につなぐ伴走型相談支援と、その実効性をより高めるための経済的支援を一体として実施する」
新たに始まる「伴走型支援」の仕組みは、まず、妊婦が妊娠届を出した際などに保健師などと面談した上で、クーポンなどで5万円相当を受け取ります。さらに、出産後、改めて面談して追加で5万円相当を受け取ります。経済的支援をきっかけに、相談できる窓口の担当者とつながり、その後も「伴走型支援」を受けやすくする狙いです。今年4月以降に生まれた子どもが対象で、希望する全国の市区町村で順次、始まります。
すでに独自の「伴走型支援」を実践する渋谷区でも、妊婦が面談を受けた後、出産にあわせて肌着や爪切り、オモチャなどの詰め合わせを送るなど、経済的支援を組み合わせています。
渋谷区 保健師・鈴木綾子さん
「ここが相談できる場所であることを覚えていただくことが、一番かなと思っています。会ったことのある人には、何かあったときに『相談しよう』と思い出してもらえるのではないかと思うので、その第一歩としてここがあるということを、まず知っていただけたらいいかなと思う」
すべての子育て世帯の孤立を防ぐため、伴走する保健師などの人材確保も自治体の課題となります。