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夫が仕事を休むことまで必要? “人が足りない”中小企業では難しい? 「男性育休」大企業で取得率46.2%に…今後の課題は

2023年8月1日 6:28
夫が仕事を休むことまで必要? “人が足りない”中小企業では難しい? 「男性育休」大企業で取得率46.2%に…今後の課題は
写真:アフロ

昨年度、大企業に勤める男性の育児休業取得率は46.2%と半数に近づいたことが、厚生労働省がまとめた速報値でわかりました。「今後は中小企業などでの取り組みが鍵」と提言するワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長に、なぜ男性が育休をとる必要があるのか、“人が足りず難しい”と思われがちな中小企業での推進にとって重要な点について聞きました。

■大企業の男性育休取得率46.2%…取得率が高い企業は“直属の上司”の周知やや高く

厚生労働省が従業員1000人を超える企業を対象に今年6月から7月にかけてアンケートを行い、回答があった企業のデータを集計したところ、昨年度は、子どもが生まれた男性従業員のうち46.2%が育児休業をとり、その日数は平均46.5日でした。

背景の分析では、男性育休の取得率が高い企業ほど、自分の会社の男性育休事例紹介や社内研修をより多く行っていました。

一方、男性が育休をとりたいと思っても、職場の上司や同僚の理解が得にくいとか、多忙な中、休みたいと言い出せないという声が多いことをうけ、昨年度から男性育休の対象者に対して個別に、育休の権利などについて知らせ、とりたいかどうか意向を確認することが企業に義務付けられています。

今回の調査では、男性育休の取得率が高い企業では、こうした、対象者への周知と意向確認を、人事担当者ではなく直属の上司が行う割合がやや高く、文書を回すよりメールや対面などで行う割合が高かったということです。

■今後は中小企業の取り組みが課題…むしろ戦略に

今年度から、従業員1000人を超える企業には、男性育休の取得率を年一回公表することが義務付けられました。男性育休や働き方改革のコンサルタント業務を行うワーク・ライフバランス社の小室淑恵社長は、男性育休取得率の公表義務化などをうけて大企業が取り組みを進めたことを評価し、今後は中小企業などでの取り組みが鍵になるとして、中小企業にも取得率の公表を義務付けるとともに、そのための業務改善などへの助成や支援策も必要だと提言しています。

今回の調査では、男性育休取得率を公開したことで新卒・中途採用への応募が増えたと回答した企業もあり、人材確保の面で企業のメリットにもなるということです。小室氏は「中小企業に負担を強いるものではなく、中小企業ほど男性育休に取り組み、取得率を公表することが経営戦略として必要ではないか」と強調しました。

■なぜ夫が仕事を休む必要があるのか?

小室氏らによると、産後女性の死因の一位は自殺で、ホルモン量の変化で「産後うつ」になることが背景にあるということです。産後うつのピークは産後2週間から1か月頃で、うつ状態を回避するには、十分睡眠をとる必要があるが、出産後は授乳などで昼も夜も寝ることができず、悩む女性が多い。

「夫が、なぜ仕事を休むことまで必要なのか」という問いに、小室さんは「翌日仕事がある夫に夜中に起きて赤ちゃんの世話などをしてもらうのは難しい。では、夫は別室に寝る、ということになり、そうなると妻が夜中にどれだけ大変なのかますますわからなくなってしまう」と指摘。

さらには、第1子が生まれたあと、男性の家事・育児時間が増えるほど第2子以降が生まれているとのデータがあり、育休をきっかけにした男性の家事・育児時間増加が出生率の向上に寄与すると説明しました。

こうしたことから、政府は、少子化対策の一環として男性の育休取得率を2025年度に50%、2030年度に85%にすることを目指すとの方針を示しています。

■「誰が休んでも回る組織になっているか」全体の長時間労働是正こそ“鍵”

中小企業では、人が足りず、男性育休推進は難しいのでは、と思われがちですが、小室氏は「中小企業の中で(男性育休推進に取り組む企業とそうでない企業で)二極化している」と指摘。経営戦略だとして、これに取り組む中小企業もあり、その際、重要なのは、育児中の人への支援・保護を増やすのではなく、職場全体の働き方を変えること、つまり「誰が休んでも回る組織になっているか」だといいます。

「こうした組織は、コロナや今後の大介護時代でも必要になる。誰かが休んだら、部品ひとつできないというのは大きなリスク」と指摘しました。

そして、長時間労働の現状を変えるためには、労働基準法を改正して、時間外や休日に働く際の賃金の割増率を欧米のように高めることや、終業から次の勤務開始まで一定の時間をあける「勤務間インターバル」などで社会全体の働き方を変え、誰もが働きやすい環境を、と提言しました。

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