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【沸騰化時代の処方箋】環境問題解決への近道は“子どもの教育” 暗闇の街が「世界のお手本」になるまで

2024年5月31日 14:40
【沸騰化時代の処方箋】環境問題解決への近道は“子どもの教育” 暗闇の街が「世界のお手本」になるまで
授業で自然と触れ合う子ども

“地球沸騰化”と言われる時代に生きる知恵。北欧には、気候変動で「暗闇」に包まれた街があります。その街で地球と生きるカギを握っていたのは“子ども”でした。

暗闇の街が世界トップクラスの“環境先進地帯”に

北欧・フィンランドの北に位置するイー市は、漁業を中心に栄える人口約1万人の街です。夏の避暑地として人気が高い自然豊かな街ですが、冬の間は日が出ない地域。もともと雪明りが欠かせませんでしたが、“地球沸騰化”とも言われる気候変動の影響で、雪の降りはじめが遅くなり、暗い期間が延びています。

気候変動の影響を受けているのは人間の暮らしだけではありません。1800年代から代々トナカイ農家を営んでいるユッシラさんによると、トナカイたちにとっても大きな問題となっているようです。

トナカイ農家 ヤリ ハンヌ ユッシラさん:
「冬の間トナカイたちは食べ物を求めて北へ移動するのですが、(今は)移動させないようにしています。食べ物が取れなくなっているから。雪が氷のように固まってしまい、その下の苔を掘ることができなくなっています」

冬の気温が上がって雪が一度溶け、それが再び氷になることでトナカイが食べ物を取れなくなっているというのです。そのため、冬は放牧はせず柵の中で飼育しているそうです。

“地球沸騰化”が暮らしに直撃しているイー市では、約10年前から火力発電をやめるなどの取り組みを進めました。その結果、ヨーロッパ全体(※EU)の目標より30年も早く炭素の排出量を80%削減。今では世界トップクラスの“環境先進地帯”となったのです。

そんなイー市が今、最も力を入れていることは“子どもへの教育”でした。

大切なのは「子どもたちに“もったいない”を教えていくこと」

イー市内の公立小学校を訪ねると、子どもたちが森の中で楽しそうに虫や木を観察していました。フィンランドの小学校では「環境科学」という授業があるだけではなく、算数の授業で森の中に行き、葉っぱや枝を数えて学ぶこともあるといいます。

この小学校では普段から自然の中で授業することが当たり前。自然と共に生きていくことを幼い頃から体験することで、自然や環境について考え、責任を持つようになると、校長のノウシアイネン先生は考えています。

自然と触れ合うこと以外にも、子どもへの教育として取り組んでいることがありました。学校に戻ると、子どもたちが見せてくれたのはビリヤード台。実はイー市では、学校で無駄なエネルギーが使われていないかを子どもたちがチェックし、削減できた分は市からお金がもらえるのです。ビリヤード台は、そのお金で購入したもの。

欲しいものがもらえるとなると、子どもたちも必死です。校内で無駄を見つけると「先生! この部屋はエネルギーを使いすぎてるよ!」「誰もいないのに部屋の電気とプロジェクターがつけっぱなし」「先生がつけっぱなしにしたのが良くなかった」と、子どもたちのほうから率先して報告していました。

この取り組みは約10年前からイー市内全ての幼稚園と小中学校で行われていて、毎年、一番削減できた学校に賞状が贈られています。この小学校では毎年35万円ほど支給されているといいます。

マルヤ ノウシアイネン校長:
「子どもたちが学校で節電や節水を学ぶことによって、それを家でもやります。そうするとお母さんやお父さんにも影響があり、とても良い循環を生んでいるんです」

ノウシアイネン校長が言うように、こうした子どもたちへの教育は、家庭にも良い影響を与えているようです。イー市で暮らす6人家族の母・カイサ ルオスタリネンさんは「必要のない電気を消すことを子どもたちが学校から学んできて、家でもそれが習慣になりました」と話します。子どもへの環境教育が大人へと浸透し、地域全体に良い循環が生まれていました。

今では世界中から手本にされているイー市。そんな街の市長に、環境問題の解決に向けて大事にしていることを教えてもらいました。

イー市 マルユッカ マンニネン市長:
「子どもたちに“もったいない”ということを教えていくことが一番大事な事だと思っています。その教育が二酸化炭素を減らす近道です。子どもたちが学ぶことが未来につながっていくんです」

「自分の幸せは、また誰かが使ってくれること」 “モノを大切に”が根付いたフィンランド

こうした環境への意識は、今ではフィンランド全体に広がっています。首都・ヘルシンキの街で道行く人に話を聞いてみると「洋服を友達同士で交換したりすることもあるよ。この靴も友達からもらったよ」「(着ている服やカバンは)リユースショップで買ったもの。私の周りの人たちはリユースショップで買う人が多いです。逆に新しく買う人はとても少ない」と、暮らしの“常識”自体が私たち日本人とは違うようでした。

去年、国の玄関である空港に世界で初めてリユースショップがオープンするほど、フィンランド人にとって“環境に良い”ことはもちろん“モノを大切に使う”ということが、とても強く根付いているようです。

さらに、ただのリユースショップではなく、棚を1週間、約6600円(39ユーロ)で借り、その棚で自分が使わなくなった物を売れる、いわゆるフリマアプリの店舗版のような店も。

服を整理していた男性に声をかけると「使ってないものをリサイクルできるように持ってきたんです。今日から1週間、ここを借りてるんです。全部5ユーロ(約850円)で売ります。自分の幸せは、また誰かが使ってくれることだから(安くても大丈夫)」と話してくれました。

店内には、洋服だけではなく、家具や高級な食器など様々な中古品が置かれています。店を訪れていた人の中には、子どもへの誕生日やクリスマスのプレゼントをリユースショップで購入したという人もいました。リユース品のプレゼントをもらった子どもに話を聞いても「(嫌だと)考えたことなかった」といい、リユース品やリサイクル品に対してまったく抵抗がない様子です。

オーナー ミッコ パーボラさん:
「みんな1週間でだいたい200ユーロくらい売り上げています。お店は売り上げの7%とレンタル棚代をもらっています。(リサイクルする人は)毎年増えているし、今はトレンドにもなっています。こうやってリサイクルする人たちが増えれば、どんどんその輪が広がっていくんです」

さまざまな形で環境に取り組むフィンランド。そこには私たち日本人が学ぶべき暮らしのヒントがたくさんありました。

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