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密輸手口も“巧妙化” 数ミリのかけらも見逃さない水際最前線 名古屋税関

2024年6月20日 11:25
密輸手口も“巧妙化” 数ミリのかけらも見逃さない水際最前線 名古屋税関
荷物を調べる検査官

日本の水際、税関検査場。違法なものを入り込ませないよう日々行われている検査で見つかるのは、怪しい品物の数々。緊迫の現場を取材した。

税関で目を光らせる検査官 水際の攻防戦!

中部国際空港の税関検査場。次々と飛行機が到着し、1日平均6000人が通るこの場所で、違法なものが持ち込まれないよう、名古屋税関の検査官が目を光らせている。

そこへ現れたのは、2つの大きなスーツケースを持った中国人男性。

検査官「このスーツケースは友達の?」
男性「友達の…持って名古屋」
検査官「友達はどこに?」
男性「中国、上海」
検査官「お父さんのかばんは? これとこれ? これだけ違う?」
男性「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」
検査官「でも見せてください」

大丈夫を連呼するが本当に大丈夫なのだろうか? 検査官が中を調べようとすると、なんと鍵を持っておらず、ダイヤル式の鍵の番号も分からないという。これでは検査ができない。

持ち主に鍵の番号を確認しようとしたとき、検査官が開いていたもう一つの鍵の番号に合わせると、無事に鍵は開いた。「面倒くさいよ」「大丈夫、大丈夫、大丈夫」と言う男性をなだめながら検査官がスーツケースを調べると、中に入っていたのは、ラー油や豆、お茶など。怪しいものは発見されなかった。

男性が「友達のスーツケース」だという荷物を、検査官が念入りに調べたのにはワケが。今回は怪しいものは発見されなかったが、海外で預かってきた荷物に薬物が入っていたこともあったからだ。

去年、中部国際空港で、フランス国籍の男の荷物から末端価格約1億7600万円相当の覚醒剤が見つかった事件。発覚したのは税関検査場だった。フランスから到着した男の荷物を調べた検査官が、荷物の中身を取り出し、内張りをはがすと、中に覚醒剤が隠されていたのだ。男は「覚醒剤が入っていると知らず、キャリーケースは市場でアラブ人から買った」と話していた。

こうした事件を水際で防ぐため、検査官は不審に感じた荷物は隅々まで確認しているのだ。

次にやって来たのは、先程とは別の中国人男性。リュックサックとスーツケースの他に、大きな箱を3つも持っている。なぜこんなに大荷物なのか。中身を確認することになったのだが、腕を組み、納得がいかない様子。

箱から見つかったのは、大量の薬だった。いったい何に使うのだろうか。

検査官「みんなの? あなたの?」
男性「これ、みんなの。俺のじゃなくて」
検査官「一人じゃなくてね」
男性「そうそう」

男性の仕事は船乗り。これから名古屋港へ向かい、船旅に出るのだという。大量の医薬品は、同じ飛行機で到着した仲間全員分のものだった。本来、医薬品は自分の分だけを持ち込むのがルール。次から一人ずつ持ち込むよう指導を受け、男性は空港を後にした。

チョコレートの包み紙やサンダルの底に… 年々巧妙になる密輸の手口

こちらは愛知県常滑市にある中部国際郵便局。世界中から中部6県に宛てられた郵便物を扱うこの場所には、多いときには1日で2000個ほどの郵便物が届く。名古屋税関の検査官は、送り主と宛先の情報やX線の画像などを確認し、検査が必要な荷物を見極めている。

届いた荷物の中には、作りが粗雑な偽物のブランド品も。偽物の疑いがある物品は、詳しい検査で偽物と分かると差し止められ、廃棄される。

気になる荷物は他にもあった。検査官が目を付けたのはベトナムから届いた郵便物だ。

検査官:
「セーフティグローブって品名なのに、中に入っているものが違うなって、X線でそういうふうに思ったので選びました」

中身はいったい何なのだろうか。箱を開けると、グローブで覆い隠されるように詰められた、謎の液体が現れた。見た目で分からないときはにおいを嗅いでみるが、検査官はなんともいえない微妙な表情…。

そこで、付着している微粒子を拭き取り、探知する機械で検査してみることに。結果は反応なし。ゴールキーパー用のグローブと一緒に入っていたので、おそらく革の保護材や汚れを落とすものだろうと、検査官は結論づけた。不審なものではないようだ。

税関がこうした荷物を入念に検査するのは、国際郵便による密輸が年々巧妙になっているからだ。

フランスから届いたチョコレートの包み紙の中には、約1000錠もの合成麻薬「MDMA」が。サンダルの底に麻薬が隠されていたこともあった。さらに、末端価格約3300万円相当の覚醒剤が見つかったのは、なんと絵画の中からだった。

韓国から届いた荷物にも、あるものが隠されていたという。一見、箱の中には韓国のりしか見当たらないが…。

検査官:
「のりだけある中に影があって(のりで覆うように)隠匿されていた。この影なんだろうって思って。そしたらバイアグラが」

隠されていたのはED治療薬。インターネットで安く販売されている偽物とみられ、詳しく調べることになった。偽物のED治療薬の中には、死亡事故が報告されている危険なものもある。絶対に手を出してはいけない。

香港からの郵便物にもX線に写る怪しい影が。中を開けると出てきたのは、なんと拳銃!? 弾丸のようなものも一緒にケースに入っている。それも一つだけではない。検査官が集まり、詳しく調べることに。よく見るとサイズは小さめで、銃口が開いておらず、弾が撃てないおもちゃと確認された。

検査官は国際郵便の水際でも密輸を防ごうと検査を続けている。

手荷物受取所に現れた要注意人物 スーツケースの中から出てきたのは…!?

再び中部国際空港の税関検査場。バンコクから飛行機が到着すると、検査官に緊急連絡が。手荷物受取所に「要注意人物」がいるというのだ。タイから帰国した男性が違法な薬物を持っている可能性があるという。

しばらくして、やって来たのはラフな格好の日本人男性。タイ旅行から帰ってきたところだという。

検査に嫌がる様子もなく淡々と応じるこの男性が、なぜ要注意人物なのか。実は、男性が手荷物受取所にいた際、麻薬探知犬が薬物のにおいを嗅ぎとっていたのだ。検査官が直球で質問する。

検査官「麻薬探知犬が反応したので」
男性「向こうで吸ったからですかね、タイで」
検査官「何を吸ったんですか?」
男性「大麻です」
検査官「荷物の中にはないですね」
男性「もちろん絶対ないです。100パーないっす」

タイでの旅行中に大麻を使用したが、荷物の中にはないと力強く言い切った男性。

しかし、検査官が荷物を調べること数分。スーツケースの奥に何かを見つけた。手袋をはめた検査官が手に取ったのは、わずか数ミリの植物片。現場に緊張が走る。詳しく調べるため、男性は別室へ案内された。

ことの重大さに気づいたのか、男性にあせりの色が見える。見つかった植物片を、大麻の成分に反応して色が変わる試薬で確認すると、紫色に変色。植物片は大麻だった。

男性「持ち込んだってことですか?」
検査官「そうですね」
男性「えー…持ち込んだってなると仕事できなくないですか?」
検査官「そのリスクは、ご自分で考えていただいて」
男性「そうですよね…」
検査官「また同じようなことがあったら、これで済むってことはなくなりましたので」
男性「ありがとうございました。ご迷惑おかけしました。すみませんでした」

うっかりでも持ち込んでしまったら、密輸。全ての荷物を検査したところ、他に大麻は見つからず、男性は厳重注意となった。

日本の水際を守るため、日々、税関の検査官は目を光らせている。

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