広がり見せる伝統工芸の「後継者インターン」 岐阜の伝統工芸“漆塗師” 地元のこだわり捨て全国から後継者を募集 定員1人に50人が応募する想像以上の反響に驚き
高山祭を支える職人 ダメ元で全国に後継者を募集したら…
日本三大美祭の一つに数えられ、400年以上の歴史を誇る高山祭。街を彩る豪華絢爛な屋台は、祭りの目玉となっています。
屋台の修理などを担う“漆塗師”(うるしぬし)は、その伝統の祭りを支える匠。漆塗り歴40年以上の野川俊昭さんも“漆塗師”の一人です。
野川塗師屋 野川俊昭さん(60):
「漆は天然素材なので、その時の気温に左右される。気まぐれなところをコントロールするのが一番難しいです」
そんな野川さんのもとへ今年8月、4人の女性たちが訪ねてきました。指導を仰ぎながら漆を塗る女性たち。“漆塗り体験”で来た観光客にしては眼差しが真剣すぎるように見えますが…それもそのはず、彼女たちは野川さんの後継者候補なのです。
伝統工芸の後継者不足は各地で深刻な問題となっていて、最近ではWEBサイトを通じて全国からインターンシップを募集しています。彼女たちは「漆塗師後継者インターンシップ」に応募した20代から30代の4人。50人ほど応募があり、書類選考やWeb面談を通過した女性たちなのです。
「漆に関係した仕事をしたい」「漆をもっと広めていきたい」「漆が好きだから」と志望理由は様々ですが、全員本気で漆塗り職人を目指しています。
こうした伝統工芸に魅力を感じる若者は多いものの、後継者を探す職人とつながる術は、これまでありませんでした。
一方で野川さんも、地元では後継者が集まらなかったため「やれるところまでやったら閉めよう」と諦めていました。
そんな時にインターン制度があることを知り、ダメ元で募集してみたところ、想像以上の反響が。野川さんは伝統を守っていくことを優先し、“地元”というこだわりを捨て、“全国”から後継者を探すことに舵を切ったのです。
野川塗師屋 野川俊昭さん(60):
「地元志向という昔からの考えを崩していいのかと(迷いもあった)。ただ、地元で集まらなかったので衰退している。全国に発信して、やる気のある人が集まる仕組みは悪いことではない」
工房での体験を終えた参加者たちは、ある女性の話を熱心に聞いていました。去年行われたインターンシップに参加し、東京から高山市へ移住した先輩、賀東さんです。大学を中退し、今年の春から高山市の伝統的工芸品である一位一刀彫(いちいいっとうぼり)の職人を目指し研修を受けています。
東京都出身 賀東楓さん:
「刃物使いとかまだまだなので。一気に上達しないので、コツコツめげずにがんばりたい」
賀東さんの話を聞いた参加者たちは、「やっていきたい気持ちが高まった」「さらに住んでみたいと思えて良かった」と話し、職人になりたいという思いがさらに強くなったようです。
伝統工芸をつないでいくため、広がりを見せる「後継者インターン」。今回のインターンシップを踏まえ、年内には4人のうち1人に内定が出され、来年春から本格的な研修が始まるということです。