【解説】性加害問題「知らなかった」 ジャニーズ社長が謝罪 重要情報を知れない状態“恒常化”
「ジャニーズ事務所」の創業者・ジャニー喜多川氏の性加害問題について、事務所の藤島ジュリー景子社長が謝罪する動画と、事務所としての見解を公表しました。
◇1分9秒の“謝罪”動画
◇これまでの経緯
◇事務所の見解
以上の3点について詳しくお伝えします。
14日夜、ジャニーズ事務所のホームページに社長の動画が公開されました。
ジャニーズ事務所 藤島ジュリー景子社長(動画より)
「この度は、創業者ジャニー喜多川の性加害問題について、世の中を大きくお騒がせしておりますこと、心よりおわび申し上げます」
「何よりまず、被害を訴えられている方々に対して深く深くおわび申し上げます」
ジュリー社長は1分9秒の動画の中で、世間を騒がせたこと、それから被害を訴えている人に対して、ファンや関係者に対して謝罪しました。
この動画の最後にジュリー社長は、「各方面より頂いていたご質問に対して、書面にて回答させていただきます」というふうに述べていました。
書面には、「なぜ、すぐに会見を行わなかったのか?」という質問が記載されています。それに対して、「まずは事実を確認し、責任を持って対応すべきだと考えました。カウンセラーや弁護士など専門家の協力を得ながら、声をあげられた方とのご対面、社内調査、具体的対応策についての協議等を慎重に進めておりましたことから、広く皆様にお伝えするまで時間が経ってしまいました」と説明しています。
これまでの経緯がどうだったのか振り返ってみます。
事務所の創業者・ジャニー喜多川さんは2019年に亡くなりましたが、過去(1999年)には「所属する少年らにセクハラ行為をしていた」などと週刊文春が報じました。これに対して事務所側が、「名誉を傷つけられた」として損害賠償などを求める裁判を起こしています。
2002年の一審判決で、東京地裁は少年らの証言について、「高い信用性は認めがたい」などと判断しました。しかし、2003年の東京高裁の二審判決では一転しました。「少年らの証言は信用できる」として、セクハラ行為を指摘した記事の重要な部分について真実性を認めました。そして、この二審判決が2004年に最高裁で確定しています。
そして今年3月、イギリスのBBCが、「ジャニー喜多川氏からの性的虐待を受けた」という男性らを取材したドキュメンタリーを放送しました。日本版サイトでの記事のタイトルは、「日本ポップス界の『捕食者』」です。
男性たちの証言には、アイドルになりたい少年らとジャニー氏の間で『取引関係』のようなものがあったとの証言もあり、「ジャニー氏は、組織的に若い少年に虐待をできるようなシステムを作ったようだ」などと報じました。
そして今年4月、かつてジャニーズJr.として活動した男性が、名前と顔を明かして会見を開きました。カウアン・オカモトさんです。
元ジャニーズJr. 性被害を訴えるカウアン・オカモト氏(4月)
「初めて性行為を受けたのは2012年3月、中学を卒業する直前と記憶しています。その日も仕事が遅くなって、ほかのジュニアたちとジャニーさんのマンションに泊まることになりました。合計で15~20回ほどジャニーさんから性的被害を受けました」
オカモトさんによると、2012年から2016年までの間に15~20回ほど、下半身を触られるなどの性的被害を受けたということです。オカモトさんは、ジャニー氏による性加害があったことを「事務所の人たちに認めてほしい」、そして「芸能界からこうした被害がなくなる方向にいってほしい」などと訴えました。
関係者によると、この会見を受けてジャニーズ事務所は、在籍するタレントらからヒアリングを行ったことや、今後の方針などを記した社長名の文書を取引先の企業に送ったということです。
そして先週、ファンらでつくる有志の団体が、ジャニーズ事務所に対し第三者による実態調査などを求める署名、約1万6000人分を郵送するなど、事務所側の対応を求める声が広がっていました。
そして、14日夜の動画と文面が公表されることになりました。公表された文面には、オカモトさんの“告発”についても、見解が示されていました。
「BBCの報道、またカウアン・オカモトさんの告発は事実なのか?」という問いに対して、「問題がなかったとは一切思っておりません。一方で、当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗(ひぼう)中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならないことから、この点につきましてはどうかご理解いただきたく存じます」としています。
ジャニー氏がすでに亡くなったことに加えて、憶測が広がる懸念もあることから、慎重に対応を進めていると説明しました。
そして、「ジャニー喜多川氏の性加害を事務所、またジュリー社長は知らなかったのか?」という問いには、「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」と回答しています。
ジュリー社長は、当時の事務所の運営体制がそうさせたと説明しています。1999年に週刊文春の記事が出た当時、「会社運営に関わるような重要な情報は、ジャニー喜多川氏とメリー喜多川氏の2人以外には知ることのできない状態が恒常化していた」といいます。ただ、その異常性に当時、気づけなかったことは、「深く後悔している」としました。
ファンの有志団体も求めていましたが、「何故、第三者委員会を設置して徹底調査をしないのか?」という問いに対して、第三者委員会の設置も「検討した」と答えた一方、「ヒアリングを望まない人たちにも調査が及び、心理的な負担になる可能性も考えた上で、今回は『別の方法を選択』し、外部の協力も得ながらコンプライアンス委員会を設置し、取り組みを強化・徹底する」としています。そして、社内の価値観や常識だけで物事を判断しないように、社外取締役も迎え入れる予定だとしています。
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今回の件に関しては、被害を訴える人への直接の面会なども行われているわけですが、今後はまずこうした声にいかに向き合っていくか。ジャニーズ事務所は、外部の専門家の指導を受けた相談窓口を今月中に設置するとしています。
(2023年5月15日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)