「コミュニケーション学ぶ場に」手話などで指導…サッカースクール立ち上げた男性の挑戦
生まれつき重度の感音性難聴でほとんど耳が聞こえないという男性が、聴覚に障害がある人もサッカーを楽しむことができる、ある指導方法に基づくサッカースクールを立ち上げました。「コミュニケーションを学ぶ場所にしてほしい」と話す男性の挑戦を取材しました。
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東京・品川区にあるフットサルコートで、子供たちが練習をしている中、日本テレビの「SDGs応援サポーター」でもあるお天気キャラクター・そらジローがやってきました。
そらジロー
「『SDGs(=持続可能な開発目標)の取り組みをしている』と聞いてやってきたよ」
どこにでもあるサッカースクールのようですが、このスクールを立ち上げた植松隼人さんは「聞こえる子も聞こえない子も関係なく、サッカーだったら一緒に楽しめるよね」と手話を交えて説明します。
植松さんが立ち上げた「サインフットボールしながわ」は、小学生から高校生を対象に、手話などで指導をしているサッカースクールです。そらジローもサッカーの仲間に入れてもらうと…見事、キックが決まりました。
植松さんは、生まれつき重度の感音性難聴で、ほとんど耳が聞こえません。
植松隼人さん
「補聴器しているからって、うまく話せているからって、『聞こえている』っていうイメージでみられがち。補聴器の限界がある」
「聴覚障害」といっても、聞こえ方は人によって様々です。補聴器をつけていても、屋外などでは聞き取れないこともあるといいます。そのため、高校生の時に所属していたサッカー部では、「(プレー中)何を言っているかわからない。仲間はずれみたいな感じをうけちゃう。それはもう大ショックだったな」と振り返ります。
聞こえる人と比べ、重要な情報が届かず、取り残されてしまうことが多いといいます。
保護者
「細かい練習方法・技術・考え方を教わろうと思ったら、ぜんぜん情報格差がすごい」
そのため、植松さんは手話はもちろん、ジェスチャーやアイコンタクトなど様々なコミュニケーション方法で、障害のある・なしにかかわらず、一緒にサッカーができる環境を作りました。例えば、コーチたちは笛の代わりにフラッグを使っています。
保護者
「(コーチが)手話を使って、いろいろ説明してくださるので、本人はやりやすいかな」
そこで、そらジローも手話にチャレンジしました。
まずは挨拶。サッカーが終わった時に使うのは「お疲れさま」は、右手でこぶしを作って、左手首を叩きます。次に「ありがとう」は、手の甲にもう片方の手の親指を上にして沖、指を伸ばして上に上げるのですが――そらジローにはちょっと難しかったみたいです。最後の「拍手」は、そらジローも上手にできました。
植松隼人さん
「手話は、聞こえる人も聞こえない人も、みんな使っていい言語なんです」
植松さんは「コミュニケーションを学ぶ場所にしてほしい」と話します。
植松隼人さん
「(コミュニケーション手段の)中に、ひとつ手話がある、と思っていただければ。聞こえない、聞こえづらい人に対して壁を感じない、きっかけの場所としてやりたいな」
SDGsには17のゴールがあり、その10番目に「人や国の不平等をなくそう」というものがあります。すべての人が取り残されない社会の実現に向け、植松さんの挑戦は続きます。