被災地 心を守るには ストレス和らげる方法は…? 【#みんなのギモン】
極めて困難な状況が続いている方々の「心のケア」が、とても重要になっています。この情報が、現地にいる方にとって、ほんのわずかでも手助けできる材料になればと思います。
7日、石川県穴水町では、愛知県、福井県、新潟県から派遣された精神医療チーム「DPAT」がミーティングを行っていました。「DPAT」とは、災害時に精神科医療の支援を行うほか、被災した方の心のケアを行う医療チームです。
「DPAT」は、高齢者施設など10数か所を巡回した報告をまとめていましたが、あるグループホームの入居者との対話について、次のように話しました。
「(グループホームの入居者が)『わしらみたいに世の中の役に立たない者が生きとったらあかんやろ』と言ったので『そうじゃないんや』という話をして。あとでもう一回顔出して話しようかなと思っています」
愛知県精神医療センター 平澤克己副院長
「安全は確保されていると。ただ当然目の前で悲惨な現場を見ている。今後、精神的なストレスから、いろんな症状・負担が出るのも予想される。そのあたりのフォローが今後大事になる」
いま「心のケア」が大切な局面になっています。そこで、以下のポイントを中心に詳しく解説します。
●不安や不眠 「自然な反応」
●ストレスを和らげるには?
熊本地震でサポートにあたった、玉名病院の矢田部裕介医師に話を聞きました。
被災された方々の中には「強い不安がある」「眠れない」「気持ちが過敏になる」など、いつもと違う状態にある方が多いと思います。
しかし、それは「人として当たり前のこと」で、未曾有の災害という異常な事態に対する自然な反応だといいます。だから「いまは、慌てなくても大丈夫だと思ってほしい」と話していました。
ただ、ショックが大きすぎて、つらさに耐えられないと、感情をマヒさせてしまい、喜怒哀楽を表現できなくなります。それを放っておくと、心の回復が長引いてしまうことがあるそうです。
こうしたケースは自分で気づくのはなかなか難しいため、周囲の方が「普段との違い」に気がついたら、避難所を巡回している医療従事者に相談するなど、専門家につなぐことが大事になってくる、と話していました。
続いて2つめのポイント「ストレスを和らげるには?」です。
被災地では、水が出ないため手も洗えない、知らない人と一緒に寝なければならないなど、あらゆる「不便な生活」がストレスになっている、という声が聞かれています。
環境が改善されるには時間がかかりますが「何か今すぐできるストレスを和らげる方法ありませんか」と矢田部医師に聞いたところ、いくつかあげてくれました。
そのひとつが「自己コントロール感を少しでも取り戻すこと」です。いまは災害に振り回されている状況なので、自分で物事をコントロールできない。その中でも、少しずつ自分のペースでできる何かを見つけるということです。
たとえば、自分の意志で、体を少し動かす。身の回りを整頓する。起きる時間を決めておく。こういったことを積み重ねると、自己コントロール感を取り戻し、自尊心の回復にもなるといいます。
無理に日常に近づける必要はありませんが、たとえば自分で1日の日程を決めて行動するなど、いつもやっていたことをやるのも、心の回復につながるということでした。
他には「人を頼る」という方法です。何かを運んでもらうなどの物理的なことだけでなく、「周りの人とおしゃべりすること」も大切だそうです。話すだけで、気持ちが和らぐこともあるということです。
そして、もうひとつ目を向けたいのが「子どもの心のケア」です。
震災を経験した子どもが「ごっこ」遊びをすることがある、といいます。たとえば、東日本大震災のあとにはブロックで建物を作って「津波が来た」といって壊す「津波ごっこ」、熊本地震の際には、緊急地震速報の音を声でまねる「地震ごっこ」といった遊びがみられたそうです。
周りの方からすれば、不謹慎だからと注意したり、やめさせたくなったりするかもしれません。しかし矢田部医師は「見かけても、止めないでほしい」といいます。
「子どもはそういう『ごっこ遊び』を通して、地震の恐怖体験を消化しようとしていて、心が回復していくためには大切なこと」なのだそうです。
もし可能であれば大人も「ごっこ遊び」に加わって、「避難したから大丈夫だったね」などと「前向きな結末」に誘導してあげることが大切だといいます。
自分自身も被災しているのに、住民を優先して必死にやっています。これから先、一部の「できていないこと」が目にとまって、批判の矛先が行政職員に向いてしまう恐れがあります。
過去の地震の被災地でも、批判の矛先が行政職員に向いたことで、メンタルが不調になったり、休職する人が多かったといいます。
職員の皆さんの力は復旧・復興に欠かせないものです。今後、心のケアの体制ができた時に、その対象は住民だけではなく、地元の行政、公的な組織の職員も当然その対象に含まれるということを、忘れてはいけないと思います。
(2024年1月9日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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