“1個3分”アマゾン配達“過酷”な現場──12時間で200件以上「私はロボットか…」 2024年問題、大手「残業規制」のしわ寄せが
モノが運べなくなることが懸念される「物流の2024年問題」。ドライバーの残業時間が規制される働き方改革が始まりましたが、現場ではどんな変化が表れ、私たちが注文した商品はどうなるのか? アマゾンの商品を配達するドライバーの1日に密着しました。
ネット通販最大手・アマゾンの荷物を配達する矢島さん(仮名)。会社に所属せず、下請けの運送会社と契約する個人ドライバーです。
4月のある日。運ぶ荷物を見せてもらうと、軽貨物車にギチギチに積まれていました。
矢島さん
「(半日分の)午前便で118個。(数としては)多い方です」
これを約6時間で配達しなければなりません。
トラックドライバーの残業時間が規制され、モノが運べなくなることが懸念される「物流の2024年問題」。ドライバーの労働時間は全業種と比較して長いため、今年4月から残業時間を1か月で約80時間まで(年間960時間以内)とする働き方改革が始まりました。
トラックドライバーは大きく、大手運送会社に所属する社員、その下請け会社の社員、そして下請け会社と契約する個人ドライバーに分けられます。
長距離トラックを運転する下請け会社の社員は取材に、「明らかに残業時間が増えていました。3月が100時間くらい、4月になったら残業130~140時間でした」と語りました。大手企業が残業を規制したしわ寄せが、下請け会社に及んでいるといいます。
矢島さんら個人ドライバーも、働き方改革の対象です。矢島さんの給料は日当で約2万円で、どれだけ多く運んでも同じ。そして荷物は、ある決められた方法で運ばなければなりません。
「ピンが打たれています」と、矢島さんがスマホの画面を示します。アマゾンが開発した配達ドライバー専用のアプリです。アマゾンジャパンは、アプリの使用は任意だとしつつも、ドライバーは実質的に指示されて動いているのが実情です。
矢島さん
「(朝にアプリを)立ち上げた時に、初めて個数とコースがわかる。こんなにある、どうしよう…」
──1件何分で配る?
矢島さん
「1個3分くらい」
単純計算で1個3分で配るプレッシャーの中では、危険な瞬間もあるといいます。「でも全部急いで配達しようと思ってなっている事なので。適正な荷物量と労働時間だったら(危険な運転に)ならないだろう」と言います。
午前の118個を配り終えないうちに、手元のアプリには新たな情報が。矢島さんは「もう午後の便がとばされましたよ。見てください、これ。109個あります」。早くも午後の配達分の指示が入りました。この日の配達は合計227件です。
配達先によっては急な坂や階段を駆け上がり、息を切らすような場面もありました。「なかなか難所ですね…」と矢島さん。「こういうふうに追われてやっているのを、アマゾンは知っているのか。安全安全と言っていますけど」
矢島さんによると、現在は多くの人が玄関前などの「置き配」を選択し、配達時間の短縮につながっています。一方で、時間に追われるドライバーを困らせるのが不在による再配達。持ち帰った荷物は再配達になり、配達完了まで1週間かかることもあるといいます。
全てを配り終えたのは午後8時半ごろ。約12時間の、過酷な長時間労働です。
矢島さん
「人として見ていないんだなと。どんな天候でも雨でも風でも荷物の量は減らないですし、機械、ロボットとしか見ていないのかな、という。つぶれるまで使って、『次はいくらでもいるよ』という考えなのか」
残業規制が始まって1か月余りの5月中旬、再び矢島さんを訪ねました。4月以降、荷物は約30個増えたといいます。その背景には、大手業者の残業規制があるとみています。
矢島さん
「(大手社員が)だんだん辞めて人手が少ない話も聞いているんですよ。残業代を稼げないので。その分、同じ量をアマゾンが配達させるのであれば、誰かがどこかでしわ寄せを受けなきゃいけない。それが来ているのかなという感じです」
アマゾンの下請け会社が作成したとみられる、「アマゾン配送現場における個人事業主としての権利」と書かれた書面を入手しました。そこには、「始業・終業時間の指示はない」「時間的拘束を受けない」などとありました。
ただこれは、始業時間や拘束時間を決められている矢島さんたちの実際の働き方とは異なります。
日本テレビ調査報道班は、ドライバーへの負担軽減策や2024年問題への対応について、アマゾンジャパンに対し複数回にわたり返答を求めてきましたが、回答は得られませんでした。
ドライバーの苦しい境遇は、消費者にどんな影響を与えるのでしょうか。
LOGISTICS TODAY・赤澤裕介代表
「配達品質の低下でしょうね。配達せずにそのまま放置してしまうとか、あるいは商品の扱いが雑になって破損が増加してしまうとか。(荷主企業が)配達するドライバーを追い込んでしまう可能性がある」
(5月27日放送『news every.』より)
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