【解説】「燃料デブリ」取り出し作業着手 福島第一原発・廃炉へ新段階…実現は
東京電力福島第一原発事故から13年半です。8月末に一度予定したものの、作業上のミスで延期されていた、溶け落ちた核燃料、いわゆる「燃料デブリ」を建屋から取り出す作業が、10日朝、ようやく始まりました。社会部原発担当の村田夢紀子記者が解説します。
◇
森圭介キャスター
「今日ようやく始まった取り出し作業ですが、いま燃料デブリはどういう状況にあるんですか?」
社会部・原発担当 村田夢紀子記者
「燃料デブリはとても放射線量が高くて、近づくことができず、取り出しは“廃炉の本丸”とも言われる作業なんです。そもそも『デブリ』とは、原発の建屋内にある棒状の核燃料が、東日本大震災による津波で電源を失って冷やせなくなり、ものすごく高温になって周りの金属を溶かしながら固まったものです。溶けて固まったあと、岩のようになったもののほか、硬い小石状のものなどがあります」
村田記者
「これが1号機から3号機まで合わせて880トンあると推定されています。今回取り出すのは3グラム以下で、その量を例えると、耳かき一杯分と言われています。」
斎藤佑樹キャスター
「そんなに少ない量しかとれないんですか?」
村田記者
「そうなんです。ただこれまでは、この耳かき一杯ですら取り出すことは難しかったんです。今回、安全に取り出す方法が確立できれば、今後、大量のデブリの取り出しが実現できるかもしれないと期待されています」
森キャスター
「880トンある中で、まずは3グラム以下を取り出すということですが、その取り出す方法はどういうものなんでしょうか?」
村田記者
「大きな釣りざおのようなものを使って取り出します」
村田記者
「デブリがある原子炉格納容器につながる直径60センチほどの点検用の穴があり、そこに釣りざおのような装置を押し込み、遠隔操作でワイヤを垂らします。装置の先端の爪のような部分を遠隔操作し、デブリをつかんで取り出します」
村田記者
「実際の装置で動作確認のために小石をつかんだときの映像を見ると、先端の爪の幅は5ミリほどなんです。線量が高い場所なので、1日に作業できる時間も約2時間ということなので、取り出しには2週間ほどかかるということです」
森キャスター
「今回取り出したデブリのデータをもとに、今後どれぐらい取り出していくのか、量を増やしていくということですが、廃炉まではどれくらいの期間がかかるのでしょうか?」
村田記者
「国が示している廃炉完了までのスケジュール、いわゆるロードマップは、現状第3期まであります。10日のデブリの取り出し開始をもって、新たな第3期に入りました」
森キャスター
「ようやく第3期、ここまで13年半かかっているということですね」
村田記者
「そうなんです。廃炉までは、事故後30年から40年かかるということで、遅くとも2051年を目標としています。つまり、あと17年から27年ですが、本当に実現可能なのか、デブリ取り出しの方法について検討する委員会のトップは、次のように話しています」
燃料デブリ取り出し工法評価小委員会 更田豊志委員長
「(廃炉まで30~40年は)必ずしも工学的・技術的な根拠があって決めた期間ではない。期間に対して改めてきちんと定められるような情報が出てきた時点で、期間の議論をし始めるんだということになると思う」
森キャスター
「つまり遅くとも2051年という目標自体が、さらに伸びてしまう可能性もあるということですね」
村田記者
「そういうことですね。デブリ取り出しを含め、この1、2年で新たな情報が得られるので、廃炉の時期など改めて議論する材料がそろってくるのではないかと話していました。一方で原子力規制庁幹部からは『30~40年での廃炉達成には、相当な技術開発と調査を徹底しなければならず、非常に難しい』という声も聞かれます」
「取り出したデブリについても、どこで保管するのかという議論はまだこれからで、廃炉までには多くの困難を乗り越えていく必要があります」