【解説】南海トラフ地震臨時情報の北日本版―「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは? 死者20万人・津波30mの巨大地震に注意呼びかけ
2月10日から16日までの期間、国内で震度1以上の地震は31回ありました。このうち震度3以上は2回で、東北地方で発生しました。
▼12日23時37分、岩手県宮古市などで震度3を観測する地震がありました。震源は岩手県沖、地震の規模を示すマグニチュードは4.7、深さは65kmでした。
▼13日06時04分、宮城県気仙沼市などで震度3を観測する地震がありました。震源は宮城県沖、マグニチュードは4.9、深さは52kmでした。
北海道沖の「千島海溝」、東北地方から千葉県沖にかけての「日本海溝」沿いは、海のプレートが陸のプレートの下に潜り込み、深い"海溝"を形成しています。1919年以降におきた地震を見ると、M7を超える地震が数多く発生していることが分かります。M8を超える地震は8回ほど。そして2011年、マグニチュード9.0の東日本大震災も日本海溝沿いでおきた地震でした。
■死者約20万人、津波30mの巨大地震も
千島海溝・日本海溝ではM8~9クラスの地震で、最大震度7、高いところで30m級の巨大津波が想定されています。
巨大地震がおきた場合の死者数は、
▼日本海溝の場合 最大およそ19万9000人
▼千島海溝の場合 最大およそ10万人とされ、甚大な被害が想定されています。
この巨大地震が想定される震源域で、M7以上の地震が発生した場合、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されます。これは、さらに巨大地震がおきる可能性が比較的高まっているとして、注意を呼びかける情報です。
対象となるのは北海道から関東地方にかけての182市町村。
この情報は約2年前から運用が始まりました。当初"2年に1回程度発表される”といわれていましたが、これまでのところ1度も発表されたことはありません。東京大学大学院の関谷直也研究室の調査によると、対象の地域ですら認知度はまだ3割程度にとどまっていて、発表時の混乱も懸念されます。
実は、千島海溝・日本海溝では南海トラフと同様、大きな地震のあと、さらに大きな地震が立て続けに起きることがあります。
日本海溝沿いで発生した2011年の東日本大震災ですが、2日前の3月9日にM7.3の地震が発生。そして11日にM9.0の巨大地震が発生しました。また、1963年には千島海溝付近の択捉島南東沖で、M7.0の地震が発生し、そのわずか18時間後に、M8.5の地震が発生しています。
ただ、この情報は"必ず地震がおきる”と予知するものではありません。
巨大地震が発生する確率が、例えばM8以上の地震のあとは十数回に1回程度と、平常時より確率が高まっているため注意を呼びかけているものです。
■「南海トラフ地震臨時情報」と何が違う?
よく似た情報として、2024年8月8日にも発表された、「南海トラフ地震臨時情報」があります。こちら、どのように異なるのか。
「南海トラフ地震臨時情報」では、M8以上の地震が発生した場合に「巨大地震警戒」という臨時情報が出されます。この場合、対象地域に事前の避難を求めることがあります。一方で、M7以上8未満の地震が発生した場合などには「巨大地震注意」が出されます。この情報では日常生活を続けてほしいとしつつも、日頃からの地震への備えを呼びかけます。
「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、臨時情報でいう「巨大地震注意」の北日本版とも言えます。事前避難は求められませんが、地震発生から1週間程度は、巨大地震や津波がきても逃げられるよう備えることが重要です。
具体的には、▽夜寝る時はすぐに逃げられる服装で寝る
▽避難に時間がかかる子どもや高齢者と、同じ部屋で寝る
▽避難グッズを枕元に置いておく
などの対策をしておく必要があります。
また、千島海溝や日本海溝での地震で南海トラフ巨大地震と大きく異なるのは、非常に寒い地域だということ。津波から逃れた後、さらに寒い環境にさらされることで低体温症による死亡リスクが高まるとみられます。寒い時期であれば、防寒具など寒さへの備えをすることも重要です。
内閣府防災は、こうした対策により死者は8割減らせるとしています。
「後発地震注意情報」は必ず地震がおきると予知するものではありませんが、巨大地震がおきてからできることには限りがあります。地震への備えを徹底することが重要です。