通常医療も“ひっ迫” 新規患者受け入れ停止の動き相次ぐ
歯止めがかからない新型コロナウイルスの感染拡大。東京では2日、新型コロナの新規感染者が、初めて2万人を超えました。病床使用率は緊急事態宣言の要請を検討する基準を上回り、さらに悪化しています。医療機関では、新規患者の受け入れを止める動きも相次いでいます。
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感染拡大はいつまで続くのでしょうか。東京では2日、新たに過去最多となる2万1576人の感染が確認されました。初の2万人超えに街の人は…。
会社員(30代)
「やっぱり徐々に増えてきたイメージ。もう間近にくるんじゃないか」
会社員(60代)
「多くてびっくりだけど、従来とは違うので、もう少し冷静に考える必要があるんじゃないかと。重症化するかどうかですよね。そっちの方が気になりますけど」
また、病床使用率は51.4%となりました。東京都では1日、すでに病床使用率が、緊急事態宣言の国への要請を検討する基準とした50%を超えていましたが、一夜明けた2日、宣言の判断について、岸田首相は「今の時点では、緊急事態宣言については検討していない」と述べました。
重症病床の使用率が37%程度にとどまっていることなどから、宣言の発出は検討していないと述べました。
総理周辺からは「宣言を出すなら、東京がまず休業要請など強い制限措置をとってからだ」という声や、政府高官は「東京への宣言は経済への影響が大きい。病床だけでなく総合的に判断する」などと話していて、総理官邸は一様に宣言の発出には慎重な姿勢です。
日本医師会は──
日本医師会 中川俊男会長
「コロナ医療についての医療提供体制がひっ迫するかどうかだけではなく、コロナ以外の通常医療が守られているかどうか」
コロナ以外の通常医療もひっ迫しているとして、コロナ病床の使用率に加え、通常医療という点も考慮してほしいと述べました。
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病床使用率が8割となっている東京医科歯科大学病院では、中等症の病床は、1月28日から満床の状態が続いていて、退院しても、次から次に新たな陽性患者が入院してくる状態が続いているといいます。
2日朝に開かれた会議では――
病院長補佐 若林健二医師
「看護師の休務の数もだいぶ増えてきていると思いますが、そのあたり、いまどうなっていますか」
副看護師長
「30人ちょっとくらい」
看護師が濃厚接触者になるなどし、出勤できないケースが相次いでいるといいます。このため、中等症はベッドを49床準備していますが、2日現在は、39床までしか受け入れられないということです。
呼吸器内科准教授 柴田翔医師
「実際ベッドは用意しているのですが、看護師の数が当初の予定ほどはそろえることが難しく、やはり少ない看護師で多くの患者を診ることはリスク、危険性があります。ひとつの病棟は少し制限している状況です」
さらに、第5波のときより高齢の患者の割合が多く、食事やトイレなど看護師の負担は大きくなっているといいます。
また中等症の患者には、入院直後に抗体薬を投与しているということですが、問題もあります。
柴田医師
「病床が空いている状況ですと、1日5、6人の患者を受け入れますが、使える抗体薬は3人まで、という制約があります。そうすると、一部の患者は当日投与できるけど、 一部の患者さんは翌日。待っている間に重症化してしまう患者さんは中にはいます」
抗体薬のソトロビマブについては、供給量が限られているため、1医療機関あたり1日3人分までと制約があり、必要なときに足りない場合があるといいます。
医療の最前線では、まだピークは見えず、この状況がしばらく続くとみているということです。
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緊急事態宣言は出されるのでしょうか。
これまで、宣言などが出される度に厳しい規制の対象となってきたのが飲食店です。東京・赤羽にある店で緊急事態宣言の発出について聞きました。
赤バルRETZE 寄木一真営業部長
「はたして本当にどうなるのかな、それがまた今週末すぐ出るのかとか、『どういう状況よ』というふうに、僕らも気になってずっと過ごしてますね」
ただ、これまで通り宣言が出れば、その判断に従うと話します。それでも…。
寄木営業部長
「せめてお酒の提供だけはさせてほしいな、というのが一番の本音ですね」
「お酒の提供ができないのは死活問題だ」と話します。
注目される宣言の発出。都の幹部によると、病床使用率50%に代わる新たな基準を検討していて、重症病床の使用率も選択肢のひとつに入るということです。
感染拡大は他にも。愛知県では──
愛知県 大村秀章知事
「過去最多を今日も更新しております。きのうも過去最多」
新たに6191人の感染を確認。2日連続で過去最多を更新しました。兵庫や福岡、北海道でも過去最多を更新しました。
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感染拡大による影響もでています。東京・練馬区にあるスーパーアキダイ では、1日20人ほどで店を回しているといいますが、現在、3人が出勤できない状態だといいます。
スーパーアキダイ 秋葉弘道社長
「徐々に出てきてますね、いわゆる欠勤者ですね。濃厚接触者とか、濃厚接触の疑いがある子どもを預けられないから出勤できないとか」
「新入社員で入ってきた子が、ちょうどタイミング良くて、研修中で働いていたのでまかなえています。これ以上、さらに人が減れば、さらに厳しい状況になる」
人手不足による人材の確保に頭を悩ませているといいます。
一方で、東京・北区にあるクリニックでは、通常の診療にも大きな支障が出ていました。
いとう王子神谷 内科外科クリニック 伊藤博道院長
「診療の申し込みが非常に多くて、電話が朝から晩まで鳴り止まない」
最近では発熱外来に来る約6割が子どもたちだといいます。ただ感染拡大の影響である問題が起きています。
伊藤院長
「1日20~25人くらいの患者さんをみていたんですけど、とてもそれでは追いつかなくて、50~70人ぐらいのキャンセル待ちが連日計上されるような形で」
受診できず、PCR検査を受けられない“検査難民”が増えているといいます。クリニックでは業務を効率化して、キャンセル待ちを30件ほどまで減らしたといますが、発熱外来の新規患者の受け入れを中止しました。
伊藤院長
「きのうまでのキャンセル待ちをして下さってる患者さんをやるということで、(発熱外来の)新規の患者さんの受け入れを停止すると、やむを得ず、きょうはそういう判断をしました」
また、院長は、このひっ迫した状況では「症状の重い人が優先的に検査を受けられる仕組み作りが必要だ」と話します。
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感染拡大に歯止めがかからないなか、期待されているのがワクチン接種です。
岸田首相は2日、東京の大規模接種会場での接種回数を拡大すると表明しました。2日現在、1日あたりの接種人数は720人。今月7日からは2160人に増やす方針でしたが、予約が短時間で埋まったことや、去年は、1日最大1万人に接種した実績があることから、与野党から接種人数を増やすよう、求める声が相次いでいました。来週には5000人程度まで増やす方針だということです。