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大村湾から世界へ…「人工サンゴ活用」CO2削減へ新たな挑戦

2022年12月18日 15:29
大村湾から世界へ…「人工サンゴ活用」CO2削減へ新たな挑戦

特殊な「人工のサンゴ」を活用した新たな挑戦が大村湾で始まりました。海の中で二酸化炭素を吸収し削減へ。持続可能な地球環境への取り組みです。

長崎空港の近く、大村市松山町の海岸。先月30日、厳しい寒さの中、作業員たちが次々と海に入っていきます。その目的は、自然由来のミネラルで作られた特殊なセラミック=通称「人工サンゴ」を海に入れて、二酸化炭素を削減させるというのです。

サンタミネラル・太西るみ子社長「海洋でCO2を吸収しないと、炭素を減らせと言われている時代に、なかなか減らないと思う。だから海を使ってCO2を吸収する実証実験を行っている」

「人工サンゴ」を開発したのは、東京に本社を置く「サンタミネラル」です。これまでに、ウイルス対策にも効果があるという人体への影響が少ない除菌水や、水質浄化に効果があるセラミックなどを開発。植物から取り出した特殊なミネラルを活用し、様々な製品を生み出してきました。

大村市は「サンタミネラル」と共に実証実験を進めています。2018年には悪臭が問題となっていた大村公園の池に水質浄化のセラミックを投入。改善が見られ、底にあったヘドロが消滅しました。

この実績をもとに、大村湾にもセラミックを…。2020年、去年と2度にわたり、90キロずつ海岸付近へ投入しました。この周辺で問題とされていた「悪臭」がなくなったといいます。

大村市環境保全課・松下昌也係長「大村湾は夏場にアオサが大量発生して、それが腐敗して悪臭の原因になっていたが、これが低減された」

一方、海岸付近では必要な海藻類が増えたことが確認されました。

サンタミネラル・太西るみ子社長「アオサは増殖してはいけないが、魚がすむ海藻は増殖してほしい。それがうまく増殖しているということは、大村湾がきれいになったということ」

特殊な「ミネラル」による製品の効果が次々と実証される中、新たな挑戦が、「人工サンゴ」による二酸化炭素の削減です。自然界では、森林のほか、海中のサンゴや海藻が多くの二酸化炭素を吸収。大気中の3分の1を吸収するとされています。ただ、19世紀の産業革命以降は、石油や石炭の使用で大気中の二酸化炭素が増加。地球温暖化の主な原因とされています。

「サンタミネラル」は培ってきた技術でCO2削減の効果を実感。新たに開発した「人工サンゴ」で温暖化の抑止につなげたいとしています。

サンタミネラル・太西るみ子社長「特殊なセラミック(人工サンゴ )を海に入れて、アルカリになるのでCO2を吸収する。海はもともとCO2を吸収しているが、それを促進する」

「人工サンゴ」は、海の中では特殊な電磁波を放ち、海中にあるカルシウムを「イオン化」します。イオンは二酸化炭素と結合する性質があり、これによって二酸化炭素は「炭酸カルシウム」に変換され、害のない白い堆積物として固定化が可能に。このサイクルが進むとCO2を削減できる仕組みです。

去年9月には、事前の実験も実施。水槽の中に大村湾の海水と人工サンゴを入れ、大気中と水槽の中の二酸化炭素濃度を比較しました。すると…。

記者「今、外気のCO2濃度が527ppm。ボックスの中だと352ppmで、170くらいボックスの中が低い状態」

水槽の中では時間がたつごとに二酸化炭素の濃度が減少したことがわかりました。

先月、大村湾に投入された「人工サンゴ」は28キログラム。同時に、水質浄化のセラミックも72キログラム投入しました。

サンタミネラル・太西るみ子社長「地球の環境をすべて元に戻すことをやらないといけないけど、(水質浄化と人工サンゴ)どちらも元に戻すということに関しては同じ。汚染したものを元に戻す作業を、ミネラルを使ってやっている」

今回の実証実験では100平方メートルで実施するのに410万円がかかりました。これらの費用は大村市が行う「企業版ふるさと納税」によってまかなわれていて、寄付が増えるにつれて実施範囲も広げていくということです。

大村市・園田市長「CO2を排出して事業を営んでいるような企業にとっては、我々がCO2を回収することで寄与できると思うので、ぜひ協力してもらって、たくさん企業版ふるさと納税が集まるようにPRしていきたい」

本格的にスタートした新たな取り組み。実証実験に加え、事業に協力する東京大学の実験室での研究も重ね、客観的なデータを集めていく計画です。

サンタミネラル・太西るみ子社長「時間がないと思う。100年に1回の大雨が毎年降っているわけだから。実証していきながら(データも)取っていく。大村湾が成功してモデルになって、地球環境が少しでもよくなればいい。日本だけにとどまるということは考えていない。世界に行くことを考えてやっている」

大村湾から世界へ。小さなセラミックを使った「脱炭素」の新しい挑戦が長崎の海で始まっています。