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便利か脅威か…AI進化どこまで 論文書かせる学生も? 専門家が教える「ChatGPT」便利な使い方とは【バンキシャ!】

2023年4月10日 11:00
便利か脅威か…AI進化どこまで 論文書かせる学生も? 専門家が教える「ChatGPT」便利な使い方とは【バンキシャ!】

便利なのか脅威なのか──。今、世界中で話題の「AI」を取材。話題になったトランプ前大統領が警察官に囲まれた画像も「AI」が生成したフェイクだった。中には、論文や読書感想文を書かせたという人も…。専門家は、「AI」には正しい知識を求めるのではなく、相談ごとをするのがおすすめだという。さっそく桝が相談したのが、後輩への誕生日プレゼント。その結果に桝は思わず「すごい!」と声を上げた。(真相報道バンキシャ!)

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先月、アメリカのトランプ前大統領が、大勢の警察官に囲まれている画像がSNSに投稿され話題になった。両脇から取り押さえられ、表情をゆがめているものもあった。一方、ローマ教皇が高級ブランドのダウンを身にまとっている画像も注目された。日本語で「渋いぜ」と添えられたその投稿は、9日時点で、およそ120万回も見られていた。

しかし、これらはまったくのニセモノだ。しかも作ったのは、キーワードを入力するだけで自動で画像を生成してくれる「AI(人工知能)」だ。そしていま、世界中で新たに話題になっている生成系のAIが「ChatGPT」だ。

例えば、「日本のおすすめの観光地を教えて」と入力すると、瞬時に答えが返ってくる。「ChatGPT」は、インターネット上にある膨大な文章データを学んでユーザーの質問に答えてくれる対話型の生成系AIなのだ。

急速な進化を遂げたAIに、SNS上には驚きの声が散見される。

「ChatGPTが最強すぎて、エントリーシートが作業になってる」

「読書感想文、ChatGPTに書かせたんだけど」

また、「午前中の常識が、午後には非常識になっている」「このスピードはちょっとついていけない」と話す専門家もいる。

いったい今、AIの世界で何が起きているのか。バンキシャ!のキャスター・桝は、AI研究家でプログラマーの清水亮さんを訪ねた。


「ChatGPTというのは、分からないことがあったら、聞いたら正しい知識を出してくれるっていうイメージだったんですけど」

清水さん
「それはまったく間違いです」


「そういう使い方じゃない?」

清水さん
「そういう使い方じゃないですね」


「なるほど。有効な使い方ってなんでしょうか?」

清水さん
「相談事をする」


「相談事?」

清水さん
「相談にのってもらうのが、一番わかりやすい使い方かなと思います」

そこで桝は、最近、頭を悩ませていることを相談してみることにした。

桝さん
「一緒にキャスターを務めている後呂アナウンサーが、誕生日が近くて」

清水さん
「なるほど」

桝さん
「彼女、おせんべいが好きなんですけど、いいプレゼントってどうすればいいのかなと思って」

「ChatGPT」に条件を細かく詰めて質問を入力する。すると、1秒もかからずに──。


「すごい!」

桝は思わず声を上げた。


「なるほど! おせんべい形のクッションとか、おせんべい柄の箸とかあるんだ。まさにヒントですね。ここから…」

清水さん
「ここから自分が考える」


「なるほど。ChatGPTの本質が見えてきた気がします」

せっかくなので、プレゼントに添えるメッセージも相談することに。


「後輩が成長することを心から願っているようなメッセージ。これからの成長に期待するようなメッセージを…」

さっそく、そうChatGPTに入力。するとすぐに返事が返ってきた。その的確な内容に桝は思わず笑ってしまった。

【ChatGPTが生成した文章(原文ママ)】
お誕生日おめでとうございます。今後も、素晴らしい才能や能力を持った後輩として、更なる成長を期待しています。これまでの努力や経験を生かしながら、今後も挑戦し続け、自分自身を成長させていってください。私たちもあなたの成長を心から応援しています。


「いいですね! でも、ちょっとこれは口調がかたいから、これを僕と後呂アナウンサーの関係に…」

そこまで言って桝は、ハッとして言い直した。


「え…、あ、それは自分でやろうと思ってましたけど、まさか…、それもできます?」

清水さん
「もっと親しみを込めて」

清水さんがそうChatGPTに入力する。


「ちょっと待ってください。そこまでできちゃうのか…」

そして作り直されてきた文章を見て、桝は笑った。


「すみません。ちょっと清水さん、距離感近すぎます、これ」

しかし、回答された文章を読み進めていくうちに、桝は表情を変えた。


「でも、近いですね、確かに。同期だったらこれですよね」

【ChatGPTが生成し直した文章(原文ママ)】
ハッピーな誕生日!君のことは本当に大事に思っているし、成長する姿を見るのが楽しみだよ。これまでの頑張りや努力を認めて、自分自身を信じて、更なる高みを目指していってほしい。私たちもいつでも応援しているからね。素晴らしい1年になるよう祈っているよ!


「いや見事です、本当に。こうやって自分だとちょっと思いつかないかもしれないようなところを、ヒントをどんどんくれるように使っていく」

清水さん
「自分の相棒として、『こういうことあるけど、どうしたらいいかな』っていう相談をする壁打ち相手みたいなものとしては、非常に使える」


「なんだか、ChatGPTがとても身近な、便利なツールに思えてきました」

ただ、現時点では弱点もある。たとえば「桝太一って誰?」と聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「桝太一は、日本のお笑いタレント、司会者」

「お笑いコンビ『アンタッチャブル』のメンバー」

清水さんによれば、現在の「ChatGPT」は英語化されていない情報には非常に弱く、情報を誤りがちだという。内容には不正確なものが含まれている可能性を理解して、「検索」ではなくて「相談ごと」をする。“正解を教えてくれるもの”ではなく“ヒントをくれるもの”として使うのが「ChatGPT」の本質なのではないかと、今回を体験してみて、桝は感じたという。

      ◇

一方で、「ChatGPT」の登場で今後大きく変わると不安視されているのが教育の現場だ。「読書感想文を書いてもらった」「就活のエントリーシートを書いてもらった」という声が既にあるのは、前述の通りだ。こうした現状に文部科学省は7日、教育現場でのガイドラインを作成する方針を明らかにした。さらに、東京大学など複数の大学でも対応の検討を始めている。

子どもを「AI」にどう向き合わせるべきか。前出の清水さんは、ある使い方を提案していた。

たとえば、子どもが「月はなぜ落ちてこないの?」という疑問を持ったとする。子どもは、いろんなことに興味をもって大人を質問責めにすることがあるが、大人も忙しく、しばしばおざなりな対応をしてしまうことがある。しかし、そうすると子どもの“問いを立てる力”や“疑問を持つ力”を、そこで止めてしまうことにもなりかねない。そんな時に「ChatGPT」だ。月はなぜ落ちてこないのか、「小学校低学年にもわかりやすく」と相談してみると、瞬時に次のような答えが返ってきた。

「月は地球のまわりをぐるぐる回っているんだ。地球が月を引っ張ろうとしているけど、月も外に向かって力を使っているから、ぴったりバランスしていて、月は落ちてこないんだよ」

専門用語を使わず、やわらかい言葉で説明されている。子どもはこれで概要をつかむと、今度は「地球が月を引っ張る」とはどういうことか、など、次の疑問がわいてきて“疑問を立てる力”がさらに伸びていくかも知れない。清水さんは、こうした使い方ができるのではないかと提案していた。

今回、桝は、「ChatGPT」は、子どもの好奇心にブレーキをかけない「無限に使っていい図書館」のような存在と感じたようだ。

もちろん、社会にさまざまなリスクをもたらす恐れがあるとして、開発の一時停止を求める声もある。「AIが近いうちに人間のコントロールを超えてしまうのでは」と、不安を覚える人もいるかもしれない。しかし、清水さんは、「ChatGPTはあくまでも図書館のような存在であって、答えを出すのは人間。使い方を正しく理解していれば、人を脅かすことはない」と話してくれた。

(4月9日放送より)