利用者のため進化するトイレ「機能」分散し配置も 誰もが“違い”に合わせ選択
私たちの生活に欠かせないトイレが、デザインや利便性など様々な形で進化しています。また、障害や、からだと心、それぞれの違いに合わせ、誰もが選択できる環境作りが進められています。
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東名高速の足柄サービスエリアにあるのは、最先端のトイレです。
中日本高速道路 御殿場保全・サービスセンター 関谷有紗加さん
「こちらのトイレでは、携帯などのお忘れ物をこちらのセンサーでお知らせする機能がございます」
AIを使ったセンサーが個室に何もない状態を記憶し、忘れ物を検知すると、「忘れ物はありませんか?ご確認ください」と、音声とランプで知らせてくれます(一部の個室にのみ設置)。
さらには入り口で個室が空いているかを確認できたり、トイレの使い方を14言語対応のタッチパネルで確認できたりと“ハイテクトイレ”への進化が止まりません。
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公衆トイレでは、イメージを覆す取り組みが進んでいます。
東京・渋谷区の「東三丁目公衆トイレ」は、目を引く真っ赤に塗られた壁に特徴的なフォルムです。2年前までは、女性の利用者がほとんどいなかったといいます。
日本財団・経営企画広報部 佐治香奈さん
「暗い・汚い・怖い・くさいというネガティブなイメージが公共トイレにはあって、『公共』という名前がついていながらも、本当に公に開かれた場所ではなかったんじゃないかと」
公衆トイレを生まれ変わらせるプロジェクトです。取り組みは渋谷区内の17か所で進められていて、一軒家のような「神宮前公衆トイレ」や、誰も使っていない時は透明、施錠すると中が見えなくなる「代々木深町小公園トイレ」など、個性的なデザインばかりです。
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日々、さまざまな進化を遂げるトイレ。
東京オリンピック・パラリンピックで熱戦が繰り広げられた有明アリーナでも…
東京都生活文化スポーツ局施設整備第一課・新井俊祐課長
「有明アリーナのトイレは機能を分散しておりまして、5つの機能に分散しています」
東京オリンピック・パラリンピックに向け整備された有明アリーナでは、トイレは従来の「多機能トイレ」という形ではなく、機能を分散する配置になりました。背景には使う人のある“悩み”がありました。
普段、多機能トイレを利用している須田紗代子さんは、外見からはわかりませんが、大腸を全摘出し、45年以上、人工肛門を使ういわゆるオストメイトです。オストメイト対応トイレは、多機能トイレの機能の一つとして設置されることが多いですが…
須田紗代子さん
「(多機能トイレを)待っていると、『なんであなたがここを使うの?』と言われたりしたことがあるのはよく聞きます」
障害が目に見えないからこその苦労もあるといい、さらに…
須田紗代子さん
「結局、みんなのトイレっていうと、必要な人が必要なときに使えないっていうのが、自分も経験しているから」
便利な反面、必要性のない人が利用することもあり、使用したい時に入れないケースもあるといいます。
計画当初、2つの多機能トイレの設置を予定していたエリアでは、障害者団体などに意見を求め、5つの機能が16か所に分けて設置されることになりました。
東京都生活文化スポーツ局施設整備第一課・新井俊祐課長
「機能分散の動きというのは、東京2020大会を契機にこの施設でも導入しましたし、東京都においても施設を造る基準に反映する動きも出てきている」
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使いやすさの追求は身体的な障害に対してだけではありません。愛知・豊川市にある市立豊小学校では、教室のすぐ近くにはごく一般的なトイレがある一方、校舎1階には男性と女性、両方のマークがついた性別にとらわれないトイレがあります。
性自認と割り当てられた性が異なる人の中には、外出先でトイレに行くこと自体をためらう人もいるため、性別にかかわらず使えるトイレは安心感につながるといいます。豊川市では、36ある小中学校のうち10の学校で一部のトイレを男女共用にしているといいます。
豊川市立豊小学校 長田智之教頭
「男女区別なく相手を思いやってという視点もありますので、小さな年代のうちから意識を持つことは有効であろうと」
皆にとって欠かせないトイレ。からだと心、それぞれの違いに合わせ、誰もが選択できる環境作りが進められています。