食品のネット通販拡大の一方で高額“転売”が問題に 「一番の問題点は保管状態」安全面にも懸念
食品のネット通販が拡大する一方、各地で高額“転売”が問題となっています。転売に苦しむ店は「一番の問題点は商品の保管状態」と懸念を示していました。弁護士によると、場合によっては、食品衛生法違反に問われる可能性もあるということです。
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群馬・太田市にあるギョーザの専門店では、お取り寄せ通販も行っています。コロナ禍で需要が伸びた食品のネット通販ですが、その影で“トラブル”も発生しています。この店には去年、あるクレームが届いたということです。
金星食品 松尾千代子取締役
「『ギョーザがとけて届いたんですけど、これは食べられますか?』とか、『返品は可能でしょうか?』と。弊社では出店していない(通販)サイトだったので、大変驚きました」
何者かがギョーザを無断で転売し、客から“とけて崩れた状態で届いた”とクレームが相次いだというのです。その後、転売はおさまったといいますが、店を訪れていた客は「(転売は)ちょっと腹立たしいですよね」と話していました。
転売に苦しむギョーザ店は、愛知県にもありました。
夏目家 夏目周吾代表取締役
「非常に腹立たしいというか、困惑と怒りですね」
先月、店はSNSで「転売ヤーから絶対に買わないでください!」「ボッタクリ価格です」などと客に注意を呼びかけました。
テレビに取り上げられるなど需要が高まる時期に、“転売ヤー”によって大量に注文が入るといいます。注意を呼びかける投稿に添付されたネット通販の画面によると、店では通常、1パックあたり1350円で販売しているギョーザが、2000円以上上乗せされた3480円で転売されていたということです。
夏目家 夏目周吾代表取締役
「一番の問題点は、商品の保管状態。見ず知らずの(転売ヤーの)人が入るとなると、冷凍状態がどのようにキープされているか分からないですし、温度管理が一番心配ですね」
私たちは掲載された販売業者に電話し、管理状態を確認しようとしましたが、「おかけになった番号は現在、使用されておりません」とアナウンスが流れるだけで、電話はつながりませんでした。
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食品のネット通販が拡大する一方で、“高額転売”が各地で問題となっています。土佐の伝統菓子を販売する、高知市の和菓子の老舗でも今年3月、商品が“高額転売”されたといいます。
西川屋 池田真浩さん
「(通常の)6倍、7倍といったかなりの高額をつけて、転売されていました。非常に驚きましたよね。まずは言葉が出なかった」
焼き菓子の「元祖ケンピ(5個入り)」は通常、540円ですが、“転売された”というサイトを確認すると、なんと約7倍となる3650円で売られていました。また、餅菓子の「梅不し(8個入り)」は、通常の648円の約6倍となる3810円で転売されていたというのです。
西川屋 池田真浩さん
「本来であれば、もっとたくさん買えたような値段で、(高額転売だと)1つ、2つしか買えない。“みなさんに親しんでいただける商品”という形で覚えていただけなくなってしまう」
この和菓子店には正規の通販サイトもありますが、新規のお客さんは大手ネット通販のサイトで検索する人が多く、転売品が高額だと気がつかないまま買ってしまう人が相次いでいるというのです。
西川屋 池田真浩さん
「弁護士の先生から(転売業者に)抗議を入れていただいて、転売業者は撤退した格好です」
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インターネット上の法律に詳しい弁護士に、“食品転売”の問題点について聞きました。
インターネット上の法律に詳しい福井健策弁護士
「ちゃんとした保存行為を行っていない。食品衛生法上も、健康に被害を及ぼすおそれのある食品の販売というのは禁止している」
法律上、転売は規制されていないといいますが、健康に被害を及ぼすおそれのある食品や、届け出が必要なものを無許可で転売すると、食品衛生法違反に問われる可能性もあると指摘しました。